かけがえのない命からもらったもの
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:イマムラカナコ(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
「ただいま」
玄関の門をくぐると、私は笑顔になる。
そこには、うちの永遠の2歳児が、私の帰りを待っているのだ。
どんなに疲れて帰ってきても、私を笑顔にできる彼女は最強だ。
私が彼女と出会ったのは、今から10年ほど前。
私が以前勤めていた職場に、彼女は保護されていた。
初めは、会いに行くのを躊躇した。
見てしまったら、連れて帰りたくなるかもしれないから。
また昔のように先立たれたら、辛い思いをすることになってしまうから。
娘もまだ幼いし、その子まで、ちゃんと世話をすることに自信がなかったから。
でも何故か、何かが心に引っかかった。
吸い寄せられるように、私の足は彼女が保護されている場所に向かっていた。
どう説明してよいかわからない。
ただ、きっとこれは運命だったと思う。
彼女と私が出逢ったのは。
車庫の片隅に、子犬だった彼女はいた。
白い小さなケージに入れられて。
まだ、とても小さく、丸くて大きな目には涙が溜まっていた。
そして、薄茶色の体は、怖いのかずっと震えていた。
聞いた話では、どうやら捨てられていたらしい。
捨てられていたのなら、きっと元の飼い主が現れることはないだろう。
このままでは、保健所に引き取られることになってしまう。
保健所のその先がどうなるかを知っていた私は、じっと見つめる彼女の目に抗えなかった。
「この子、連れて帰ってもいいですか?」
彼女の瞳から目が離せなくなり、私は保護した先輩にそう告げていた。
すぐに夫へ携帯で彼女の写真を送り、我が家に迎える承諾をとった。
私は保護犬に縁がある。
子供の頃、初めて飼ったのは、小学校の校庭に迷い込んできた犬だった。
次に飼うことになったのは、事故に遭ったのを妹が放っておけずに連れてきた犬だった。
そして、今回も迷い犬だ。
この子たちに共通していたのは、とても怖がりだったこと。
人に慣れるまで時間がかかり、心を許した相手以外には激しい警戒心を持つ。
きっと捨てられ、彷徨っている間に怖い目に何度も遭ってきたのだと思う。
そして、再び飼われることがない場合、彼らを待ち受けている運命は過酷だ。
以前私は、保健所のその先である、動物愛護センターに行く機会があった。
センターの掲示板には、譲渡される犬や猫の情報でびっしりと埋め尽くされていた。
その他にも、譲渡会の日程や、飼い主としての心得など、動物を愛護する目的の掲示が目に付いた。
だが、案内の最後に見せてもらったのは、やむを得ず殺処分することになった犬猫のたどり着く場所だった。
ガラス越しに施設を見たが、その瞬間を想像すると心が重く沈んでいった。
ここで、一体どれくらいの犬や猫が息を引き取ったのだろう。
「死にたくない」
そう叫びながら息絶えていく彼らを思うと、とても辛かった。
「大きくなって可愛くなくなったから、病気になったから、歳を取ったからという理由で、処分を依頼する飼い主も中にはいます」
見学の後、説明してくれた方が、悲しそうにそう言ったことにショックを受けた。
そんな飼い主の勝手で、生死を左右されることがあるなんて。
かけがえのない命を、まるで飽きたおもちゃのように捨てることができるなんて。
センターからの帰り道、不幸な彼らがこれ以上増えることがないよう切に願った。
うちに来たワンコは、私たち家族の赤ちゃんになった。
病気があってもいけないし、必要なワクチンも接種しておかなければと、飼い始めて4日目に動物病院に連れて行った。
先生によれば、生後2ヵ月くらいだろうとのこと。
今から2か月前に生まれたのなら、ちょうどクリスマスの日だね。
そう家族で話して、うちのワンコの誕生日は12月25日(推定)ということにした。
犬を飼うのが初めてだった夫は、甘やかすと手の付けられない犬になるからと、甘々の私よりも厳しめにワンコに接していた。
ところが、数年前に、ある動物病院の先生が新聞に連載していたコラムの愛読者になってしまった夫は、やっぱり愛情たっぷりに育てるべきだと方向転換をした。
以来、親バカならぬ犬バカっぷりを発揮し、私と一緒にワンコファーストの生活となり、ワンコに甘えられて嬉しそうにしている。
私たち夫婦の間では、ワンコがこう言っているに違いない、こう思っているに違いないと妄想をするのが楽しみになっている。
私たちが勝手にワンコの表情などからそう思い込んでいるだけだが、ワンコも尻尾を振って応えるので、あながち間違いではないと思いたい。
うちのワンコの位置づけは、一人っ子の娘の妹、我が家の次女である。
犬の知能は、2、3歳児くらいらしいので、私たちは愛しさを込めて彼女を「永遠の2歳児」と呼ぶ。
本当なら、うちのワンコは私よりもずっと年上らしい。
今年の春からは、白内障で片目が見えなくなった。
犬は、1年で7歳年を取るらしいので、うちのワンコはすでに70歳を超えている。
本当は内心、私たちに赤ちゃん扱いされて面白くないかも知れない。
しかし、散歩が終わり、ご飯を食べた後、安心してお腹を見せてくれるワンコを撫でながら思う。
あなたからもらった幸せは、たくさんあるよ。
不思議な縁でうちに来てくれたあなたが、ここに来て良かったと思ってくれていたらいいな。
そして、どうか1日でも長く、あなたと一緒に居られる日が続きますように。
***
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