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拝啓 私の出産に立ち会ってくれた研修生さま。

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石井りえ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
出産予定日に近い深夜、黒人シンガーにお尻をバシンっとたたかれる夢を見た。その瞬間、私の中で(本当に)何かがバシャーっと弾けた。おお、これはきっと破水だ。こんなに突然やって来るの?!
 
すぐに病院へ駆けつけるも、そのままあっさりと出産とはいかず、出産まで2晩ほどを過ごすことになった。産婦人科の先生、助産師さん、看護婦さん。いろんなスタッフさんが、あれやこれやと色々対処してくれた。
そんな中に、研修に来ているという学生さんがいた。育成というものに心が広いつもりの私。ベテランスタッフさんからの紹介に対し、どうぞどうぞ、よきに勉強していってくれたまえという気持ちで、その挨拶を受けた。
 
ところが。陣痛の痛みはすごい。収まって、また来て、を繰り返すのだが、なんだか色々つけられたコードの先のモニターを見ていると、「来る」タイミングがわかる。急に来られても泣けるのだろうが、もうすぐ来る、もうすぐ来る、もう来る……きたーー! というのもかなりの恐怖、予告があるだけになんだか痛みも増しているようにすら思える。そんな痛み、恐ろしさの中で、研修生の決して手際がよいとは言えない対応を受けていると、心の中の前言撤回。「お願いだからベテランさん来て!」というのが正直かつ切実な気持ちだった。
 
そんな中でも、研修生に徐々に信頼が芽生えていったのは、手を握ってもらったことから。この、他に例えようのない、じんわり、でも猛烈な痛みの陣痛の中、誰かと手を握ったり、誰かが体に触れていてくれると、その痛みが和らぐということは、本当に神秘的な発見だった。物に触れていても決して抜けない痛みが、何かゆっくり抜けていくような感じ。つないだ手のぬくもりに、研修生との距離が縮んできた。
 
その後も何だかんだ色々ありつつも、ようやく分娩室へ行く時が来た。よくわからないけど、いよいよなのね……という暖かなプレ母の気持ちと、辛すぎる、とにかく早く終わってくれ、という野生丸出しな気持ち。そんなもう半分混乱している私が分娩室のベッドまで運ばれると、私一人が取り残されて誰もいなくなってしまったという驚きの展開。
何か準備とかあるのでしょうね。それにきっとまだ、そんなにポコっとは出ないということですよね。でも、でも、なに、今出てきそうになったらどうすればいいわけ? え? とパニックになっていると、隣の部屋の扉が開き、部屋の明るさの違いから、まさに後光を浴びるスタイルで、研修生が登場した。私はもう、それが神に見えるくらいありがたく、ありがとう。ありがとう。私すっごく不安だったのよ、もうどこにも行かないで、と完全にハートがロックオンされた。
その後もスタッフの皆様に助けられながら、出産のその瞬間に向かって頑張っている最中。研修生も呼吸のリズムを教えてくれたり、口元に水を運んでくれたりと、本当に私の力になってくれた。ありがとう。
 
何人もの方が周りにいて色々と私の出産をサポートしてくれている感謝も感じつつ、痛みもすごいし混濁する意識。そんな中、ベテラン助産師さんが、研修生に「この状態を何と言うか」という問いを出しながら指導をしていた。そうだよね、ここ研修だよね。「earlyの反対は?」というヒントを出していたが、もはや私の心の共になっていた研修生は全く答えられず。朦朧としつつもなぜかこの会話がクリアに聞こえていた私は、思わず「lateです」と回答してしまった。研修生くんよ、私はあなたの助けになっただろうか? 真剣な出産現場が一気に笑いの場に。「看護婦さんですか?」とまで尋ねられるが、いや、ただ英単語を答えただけなのです。
 
なんて笑いもありながら、最後は赤ちゃんが自力でぐぐっと出てくる感じがあり、おぎゃーと元気に生まれました。この温まった場にようこそ、赤ちゃん。
 
あれから、6年。
 
出産直前という、理性と野生がクルクルと勝手に出たり入った入りする不思議な時間。痛みと不安と感謝と感動と、色んな気持ちが出入りする時間。人に対して傲慢なスタンスの私と、一方で涙が出るほど人に感謝できる私。
 
この経験を機に、常に人に感謝して過ごす自分になったというわけで決してない。
 
でも、やっぱり人は人に助けられていると思うし、そうやって心から思うことは増えた。人との関係を傲慢に決めつけることの浅はかさもわかる。
 
あの研修生はもう研修生ではないだろう。命が芽吹くたくさんの瞬間を技術で支えつつ、それだけでない心と心のつながりに気づかせてくれる医療の現場での活躍を、お祈りしています。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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