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「世のため、人のため」に生きるのはこんなに面白い

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:深田 千晴(リーディング倶楽部)
 
 
「瀧本哲史」という名前には見覚えがあった。十年前、通っていた大学の生協に、「武器としての決断思考」が平積みされていたのだ。
当時の私は、「武器」という強そうな単語を見ただけで引いてしまった。ただ生活しているだけでも、自信を喪失することばかりで、何かと戦うとか、自分を試すとか、そういう気持ちになれなかった。ただ、持っているものを失わないように、身を守っていた。
そして現在、私は大学をなんとか卒業し、就職し、結婚し、出産して、専業主婦になった。そして天狼院書店の読書会で、この本に出合った。
「2020年6月30日にまたここで会おう」
 
これは瀧本氏の講演録である。2012年6月、「若者限定」と銘打ち、大学の准教授だった氏が、東大のホールで革命のための檄を飛ばす、というコンセプトで行われた。
本の中の瀧本氏の言葉は、ときに毒があり、漫談のようでもあり、読んでいるうちに不思議と私を講演会場にいるような気持ちにさせた。
 
瀧本氏は冒頭で、≪日本への危機感≫について語る。エンジェル投資家、大学教授として、限定的な人だけを相手に支援や関係づくりを行うことに加え、2011年から本の出版やメディアへの出演を行うようになったのは、≪日本をよくしていく≫ためだという。
≪いったい誰が日本を変えていくことができるのか? ということですが、僕はやはり、みなさんたち若者しかいないんだと思ってます。
思い切った大きな変革というのは、若い人にしかできないんですね。≫
 
恥ずかしながら、私は当時社会人1年目。おそらくその檄がもっとも刺さる年齢だっただろうと思われたが、この講演には申し込まないタイプの人間でもあった。毎日、自分のことで精いっぱい。ニュースもほとんど見ていなかった。
世の中になんてコミットしなくても、生活のためのお金さえあれば生きていける。
そんな風に近視眼的になっていたのは、前年に起こった東日本大震災の影響もあった。原子力発電所がだめになって、空気や水が汚染されて、もうどうしようもない。ただ身の回りの必要な情報を集め、気休めの言葉をかけあってなんとか生きていくしかない。当時はやり始めたツイッターでもたくさんの悲観的な意見が流れていた。
 
瀧本氏は優秀な方であったから、若者のそういう悲観もきっとお見通しだっただろう。
そのうえで、瀧本氏は若者に、未来に「期待」をしてみせる。
衝撃だった。
大きな力で一気に「世直し」をすることなんてできないと氏は言う。そして、学生会館の使用問題など、身近な例をとりあげながら、私たちにたたみかける。自分の問題意識を大切にして、できることを見つけて、何度でもチャレンジするのだと。
≪人生は3勝97敗≫なのだと。
文章なのに熱がこもっている。
瀧本氏はきっと、その10倍は勝負して、失敗したのだろうと、伝わってきた。
 
最後の章に、瀧本氏が聴衆の若者たちからの質問に答える部分がある。若者たちが競って、最後はじゃんけんまでして、自らの「生きるための疑問」をぶつけていく。瀧本氏は誰の質問も否定しない。そこには私たちへの信頼がある。どうして、この人は、そんなに希望を語れるのだろう。瀧本氏のように優秀とは限らない、ただの若者たちを励ませるのだろう。
そう考えながら読み進めていくと、質問の中に、やはり「瀧本さんはなぜ日本を良くしたいのか、世の中を良くしたいと考えられるのか」というものがあった。
 
≪「自分の時間」という資源はけっこう有限なので、なるべくその資源を活用するようにしたいわけですよ。自分自身を幸せにすることに関しては、じつは達成度150%(中略)なので、もうちょっと自分のリソースを最大限活用するのにどこがいいかな? と。なるべくインパクトがあって、すごく困っているところが大逆転していちばん良くなるとか、とってもいいじゃないですか。≫
 
文中では、よく、明治維新のことが例えにあげられる。ひるがえって現代の日本は、世界一治安のよい、医療の発達した先進国である。社会制度も成熟し、よっぽどのことがなければ餓死はしない。仕事さえ失わなければいい。休みの日は、人間関係やエンタメなど、楽しいこともたくさんある。
「日本を良くしよう」「世の中を良くしよう」なんて、思わなくても生きていける。メディアから目を背けて、見たいものだけ見て一生を終えることは簡単だ。
けれども、瀧本氏はそれで満足するような人間ではなかった。それだけのことだったのだろう。
自分の人生を、どのように活用していくのか?
それを考えた先にきっと、生きる喜びがある。瀧本氏の充実感に満ちたことばたちが、それを体現してくれる。
遺憾ながら、瀧本氏は2020年6月30日を迎えることなく急逝した。本当なら、講演会に集まった若者たちと瀧本氏が再結集するはずの日。だが、一方でこの本が出版され、
私のように時を超えて自ら考え始めた「元・若者」は多くいるだろう。
自分の人生、またこの日本を、世界を、どう生きていくか。あなたにも、この本を手に取り、ぜひ考え始めてほしい。
 
 
 
 
瀧本哲史「2020年6月30日にまたここで会おう」
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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