あまのじゃく先生についてきなさい
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記事:神本崇聖(ライティング・ゼミ特講)
「欲しい、だけどいらない」
小さい頃、よく母親に『これいる?』と聞かれてこう答えていた。
まったく面倒な子どもである。
本当は欲しい。
誰よりもそれが欲しいとは思っている。
ただ、決まり文句のようにその事が済んだあとにこのように言うのだ。
「本当は欲しかったのになぁ」
僕らはこれをあまのじゃくと呼ぶ。
本当は欲しいけど、一度は遠慮して欲しくないと言い、結局あとになって、欲しいと。
その一言は、母親の堪忍袋の緒を何度も切っていた。
悪いとは思いながらも、ついポロっと心の声のようなものが漏れてしまう。
しかし、それは一応子どもながらに遠慮していたからこその反応である。
自分のおもちゃやシューズにお金をかけてもらうなんてもったいない。
親にお金はなるべく使わせてはいけない。
お金をかけさせることは人に迷惑をかけることだ。
そんな思い込みがあり、僕は一旦自分の身を潜めるのであった。
親からすると、買ってあげようかと聞いている時点で、買うことは決めているのだ。
それにも関わらず、いらぬ遠慮をしている。
しかし、やっぱり子供である。
どうしても抑えきれない欲が漏れてくる。
「本当は欲しいけどなぁ……」
どうして、こんなに自分はあまのじゃくなのだろうか。
そういえば、小さい頃、よく祖母の家に行くと、祖母が何かとお金をくれようとした。そのとき必ず母親はこう言っていた。
「ええんよ、そんなに毎回あげんでも」
僕にはこの言葉ずっと心に残っていた。
その後も母親の前で、何度もくれようとしたことがあった。
母親に隠れて、僕にくれようとしたこともあった。
しかし、僕は答えた。
「ばぁちゃん、ええんよ、そんなに毎回くれんでも、誕生日とかそういうときだけでええけ、ありがとう」
そして、僕は祖母からお小遣いを受け取らなくなった。
ただ本当は、素直に受け取りたかった。
祖母の気持ちもあるだろうし、僕としてもお小遣いをもらえるのは正直嬉しかったからだ。
それからというものの、僕には『控える』という習慣がついた。
それは大人になってからも続いた。
仕事で何か意見があるか聞かれたときも、『特に意見はありません』と答えていた。
本当は考えていることもあり、もっとこうすればいいのではないかという改善案だって持っていた。
ただ、口から出る言葉はいつも同じだった。
「特に意見はありません」
僕は子供の頃と同じように、まだ『あまのじゃく』をだった。
いや、正確には演じていたのだ。
本当の意見を言わない、偽りの自分で人と言葉を交わしながら。
ただ、僕は幸いなことに、自分が『あまのじゃく』であることを知っていた。
それは大人になるにつれ少しずつ気づいたものだった。
『あまのじゃく』
それは裏を返せば本当のことを言っているようなもの。
いいえと言えば、はい。
欲しくないと言えば、欲しい。
嫌いだと言えば、好き。
どうやら『あまのじゃく』でいると、自分の本当の気持ちを教えてくれているようだ。
まるで先生のように、手取り足取り懇切丁寧に。
僕らは、毎日一所懸命生きていると、目の前のことに精一杯になる。
本当は自分が何をしたいのか、何が好きなのか、何が欲しいのかが分からなくなる。
自分がどこに向かって今を生きているのかさえ、分からなくなる。
しかし、そんな僕らも自分が嫌なことは明確である
そして、自分を押し殺すことは大の得意である。
『いいえ、欲しくない、嫌い』そういう言葉は、口に出しやすい。
一方で、『はい、欲しい、好き』という言葉は、口に出すのは簡単なように見えて案外難しい。
そんなとき、自分の発する言葉をより深く聞いてみるのだ。
表向きに出てくる言葉は、自分の本当の気持ちを映した言葉だろうか。
いや、そうではない。
それは頭の中で、何回転も考えて捻り出した苦し紛れの言葉だ。
見栄や遠慮、自己犠牲。
普段から僕らは他人と比較して、自分が嫌なやつだと思われないように、逃げて、避けるために偽りの言葉を発しているのだ。
僕らは、欲しいものを欲しいと言えない『あまのじゃく』である。
しかし、あまのじゃくは僕らに教えてくれる。
本当の自分が何を求めているのか、何が好きなのかを。
僕らは自分自身に正直になることが必要なのは、もう十二分に理解している。
けれども、本当に必要な『自分を信じる』ことを難しく感じている。
だからこそ、目の前に起きている出来事に対して、まずは自分の『あまのじゃく』に声をかけてみたい。
「いや、本当に欲しくないし。 本当は欲しいけど……」
「全然大丈夫、そんなの気にしないよ。 めっちゃ気にするし……」
その二言目に出てくるのが、僕らの本当の声だ。
どうやら僕らは思っているよりも、本当の自分の声を聞けていないようだ。
だから、あまのじゃく先生、僕らに教えてください。
本当の自分の声の聞き方を。
「しょうがねぇな、じゃあ俺の声を最初に聞け。 その逆がお前の本当の声だ、よく覚えとけよ。 今日の授業はこれで十分だ、じゃあまたな」
***
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