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名プレイヤーはなぜ名指導者にはなれないのか


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 哲朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
現役東大生の家庭教師を選んだが、なかなか成績が伸びなかった。
 
営業成績ナンバーワンの人材が、営業マネジメント専任マネージャーに
なってからは、ぱっとしない。
 
プロ野球で大活躍した一流選手が、コーチ・監督という指導者になってからは
結果がまったく出せなかった。
 
以上3つの事例で、共通しているのは、一個人のプレイヤーとしては結果を出すこと
ができても、指導する立場になってからは芳しい結果を出すことができなかった点である。
プレイヤーとして結果を出しているすべての人がこうなっているということを言いたいのではないので、ご容赦いただきたい。
 
私は15年以上、個人、法人問わずあらゆる商材の営業組織に所属してきた。
そこでは上記のような事例を何度も見てきた。その度にうまく行かなかった張本人のパフォーマンスに輝きが見られなくなったのを残念に思うと同時に、この現象が起こる背景の周囲と世間の理解が深まることを願わずにはいられない。
 
では、なぜこのような現象が起こるのか。
 
「プレイヤー」と「指導者」のスキルの再現性
家庭教師と受験生、部下と営業マネージャー、野球選手と監督といったそれぞれの
状況を浮かべて考えてみる。かつての受験生が家庭教師になった場合、指導要領が変わっていて自分たちが勉強していない単元をキャッチアップしなければならないかもしれない。
トップセールスが営業マネージャーになったら、顧客だけでなく事業開発やマーケティングといった他部署との調整スキルが求められるかもしれない。
かつての外野手として活躍していた野球選手が監督になったら、投手の起用やマネジメントについてはわからず、他のコーチとセッションして解決策を模索しなければならないかもしれない。
それぞれ、「受験勉強」「営業」「野球」といった上位の概念では卓越したスキルを持っていると見なされていてもそれを指導者という立ち位置に落とし込んで求められるスキルやタスクを見るとギャップがあることが多い。だが周囲はそう見ないケースが多い。このギャップに十分順応して、活躍していくタイプもあるが多くはないと思われる。
 
プレイヤーとして活躍してきた経験や知見が、指導する立場になったとたん、再現性をもたせることができずに、指導ができない、プレイヤーの能力を伸ばすことができないということが起こりうる。
 
指導をしていくうえで、自分のスキルや経験を再現性を持って伝えることができるかどうか。それが良い指導者、つまり名指導者になれるかどうかの大きな分岐点になるかもしれない。
 
名指導者に絶対必用なスキル
では再現性を持たせるには必要なスキルとは何だろうか。結論から伝えるとそれは、相手に合わせて「言語化できるかどうか」つまり言葉にできるかどうかではなかろうか。
 
高校野球の指導で、頭ごなしに感情にまかせて叱る監督の場面を見ることがあるが、あそこまでエキサイティングする必要があるのかといつも思う。高校野球の例を使ったのは、自分が昔、高校球児として指導を受けた経験を思い出したからだ。自分はいわゆるサウスポーで、確か2番手が3番手のピッチャーだった。公式戦にはまったく縁がなく、たまに練習試合で投げさせてもらえるぐらいだった。それでも当時は必死だったから結果をだすために練習試合の短いイニングでも自分にとっては真剣勝負だった。
 
試合では2球続けてストライクが入らないだけで、相手ベンチにも聞こえる声で監督の野次が飛んできた。いま思い出しても聞くに耐えないネガティブな内容で、戦意を喪失しかかったのを覚えている。いまではかなり認知されてきているイップスと呼ばれる、精神的な原因などによりプレーや動きに大きな支障を来たすような状態にまでなっていた。ボールが全く思うように投げられなくなった。
 
この当時の高校野球の監督が名プレイヤーであったかどうかはさておき、野次るのではなく、きちんと言語化できていたらどうだったか。味方なのかどうかわからないぐらいひどいレベルで野次を飛ばすのではなく、「どうして正しいフォームで投げられないのか」「いいコンディションで試合に臨むためにすべきことはなにか」きちんと普段から言語化して相手に理解させて指導する必要があったのではないか。感情的な言葉ばかり投げつけられた指導しか受けてこなかった自分は感じるのだ。
 
名指導者に必要なスキルに話を戻そう。言語化して再現性を持たせている指導者の例を一人だけ挙げたい。今年の2月に惜しまれつつ世を去った、プロ野球でプレイヤー、監督としても大活躍された野村克也氏である。野球の技術に限らず、人生論に至るまで幅広く自身の知見と経験を言語化して指導した方ではないかと思う。
 
「小事が大事を生む」「固定観念は悪、先入観は罪」「人間の最大の罪とは何か。それは鈍感である」(2016年 講談社α文庫 野村克也 「野村克也人生語録」より)といった言葉は野球論に限らず、組織で働くビジネスマンにも日頃の仕事のこころがけや行動において再現性を持たせられるものばかりである。
 
ここまで名プレイヤーが名指導者になれるかどうかは、再現性を持って、それを言語化できるかどうかがポイントになるということを伝えてきた。指導する立場になったら、もしくは新任の指導いただくことになったら、このポイントをチェックしてみてほしい。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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