式神を使ったみやびな生活
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式神を使ったみやびな生活
記事：小坂めぐみ（ライティング・ゼミ日曜コース）
憂鬱な家事のトップ２は洗濯と食器洗いだ。
とにかく量が多いし、片付けても片付けても次の汚れものが出てくる。
我が家は8人家族。なかなかの人数である。
平日の洗濯物の数は約８０枚。
金曜日はそこに学校の体操着セットや給食当番の白衣、
保育園のシーツなどが追加されるので
もうちょっと増える。
8枚のバスタオルだけで洗濯機がいっぱいになるため
毎日３回は洗濯機を回す必要がある。
洗って干して取り込むだけで精一杯。
たたんで片付けるところまでは手が回らず
部屋の隅でうずたかく積まれていく洗濯物。
雨の日がどれほど憂鬱か、きっと想像していただけると思う。
量の多さは食器洗いにおいても同じだ。
お茶碗、お椀、小皿、丸皿、大皿、コップ、箸。
それぞれ８人分。
洗って拭いて片付けているうちに
次の食事作りの時間が迫る。
当然家事はこれだけじゃない。
あちこち掃除もしなければならないし、
８人分の食事作りも、そこそこ大変だ。
そして家事以外にも、仕事や子どもの世話、ＰＴＡ、学校行事などなど
やらなければならないことはたくさんある。
分身でもしなければ
家事は溜まっていく一方だ。
子どもが沢山いるのだからお手伝いをさせればいい、とよく言われるが
子どもも高学年以上になると案外忙しいもので
学校や部活、塾から帰ってきて、
ほっと一息ついているところに、お手伝いをさせるのもなんだか罪悪感があるし
そもそも子どもに気軽にやってもらえる量であればたいして苦ではない。
だから私は式神を使っている。
彼らは私が2回目の洗濯物を洗っている間に
1回目の洗濯物をふんわり乾かしてくれるし
寝ている間に8人分の食器を一気に洗って乾かしてくれる。
文句ひとつ言わずに深夜だろうが早朝だろうが働いてくれて
仕上がりも申し分ない。
そう。お察しの通り、我が家の式神とは家電。
ガス乾燥機と食器洗浄乾燥機のことだ。
特にガス乾燥機は凄い。
今まで使用していた洗濯機の乾燥機能とは雲泥の差だ。
まず、乾燥力が違う。
電気の乾燥機に丸一日かけても湿り気が残った分厚いバスタオルも
40分で完璧に乾いてフワフワにしてくれる。
グルグルねじれて絡まったりもしないから、
シワにもなりにくい。
洗濯機の乾燥機能や、除湿器を使って部屋干しした洗濯物を乾燥させていたときの悩みだった、ホコリの発生や室内温度の上昇も、ガス乾燥機なら全く気にならない。
ホコリはフィルターが完璧に受け止めてくれるし、
そのフィルター掃除も非常に簡単で手間いらずである。
熱を外に出してくれるので、部屋の温度もほとんど上昇しない。
洗濯機から出したものをそのままドサッと乾燥機に入れて
ボタンを押しておけば１時間もしないで自動的に乾くので、
１枚１枚干すのに比べて、物凄く時短になる。
食器洗浄乾燥機は2台使いだ。
ちゃちゃっと下洗いをしたら次々に食洗器に入れて洗う。
もともと1台だったのがキッチンリフォームでビルドインの食洗器を追加したことにより２台になったのだが、これがまたとても良い。
８人分の食器も全て一度に洗えるし
昼間のちょこちょこした少量の洗い物も
食洗器が２台ある事で気軽に洗浄できるようになった。
今こうやって、文章を書いたり、講座を受けたり
子どもと遊んだりする時間が取れているのは
式神という名の最新家電たちのお陰といっても過言ではないだろう。
実は「家電は式神だ」という視点をくださったのは陰陽道の先生だ。
そういう目で見てみると、
エアコンは大きな団扇で私を仰いでくれているようだし、
お風呂の給湯は風呂に薪をくべてフーフー吹きながら
湯加減を調節してくれているように思えてくる。
ガスコンロも、沸騰したら火を止めてくれたり
適温をキープしてタイマーで自動消火してくれるので
まるで誰かが火の番をしてくれているよう。
あちこちで世話を焼いてくれているなんて
なんだか高貴な身分になったような、
みやびやかな気持ちになるではないか。
科学技術の発達により、いろいろな仕事が自動化されつつある。
買い物カゴごと一気にスキャンして会計してくれる自動レジ、
アクセルを踏まなくても指定した速度以内で前の車に追従してくれるオートクルーズ機能、
レストランの注文はタッチパネルだし、
分からないことは用語だろうが道だろうが、大抵スマホが教えてくれる。
すべて式神だ。
式神たちが、わたしたち人間に雅な時間を与えるために、
せっせと働いてくれているのだ。
ＡＩに仕事を奪われる？良いじゃないか。
ＡＩに出来ることはＡＩにさせて
わたしたちは人間にしかできないことをするのだ。
雅な妄想にふけり、文章を書いたりするのだ。
＊＊＊
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