7年越しの勝負をして分かった秘めていた思い
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:福田大輔(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
高校生の時に僕は一度も負けなかった。
同級生のM君とバスケットボールの一対一の勝負でだ。
そして高校を卒業してから7年後にM君と一対一の勝負を再びすることになった。
僕は栃木県の片田舎で高校生まで過ごした。小学校から高校まで一緒、下手したら幼稚園から高校まで同じなんて同級生もたくさんいた。
そんな中でM君とは小4の時に初めて同じクラスになって、小5と小6も同じクラスだった。中学では同じクラスになることはなかったが、同じ高校へと進学して高3のときにも同じクラスになった。
僕が通っていた小学校では小5から部活動へ入部することが出来る。
僕はサッカー部だったが部活の体裁をなしていない、烏合の集まりだった。そして中学で周りは経験者だらけの中で初心者としてバスケ部に入部して高校もバスケ部に所属していた。
M君は野球部で中学でもそのまま野球部に所属していたが、高校では部活はやっていなかった。
小学校以来、高3で同じクラスになった僕とM君。それと中学でバスケ部だったクラスメイト2人の4人で毎日のように昼休みにバスケをしていた。昼休みはバスケの時間で昼食の時間ではない僕らは必ず早弁をして時間を確保していた。たまにとかじゃなくて本当に毎日やっていた。
昼休みにバスケをやろうと言い始めたのはM君だったと思う。気付けば僕も毎日その時間を楽しみにしていたし、クラスの中でもあいつらよく毎日やってるなと見られていた。
ふとM君に聞いたことがあった。
「こんなに好きなのに何でバスケ部入らなかったんだ?」
「中学でも高校でもタイミングあったじゃん」
「ん~~、何となくだな」
「そんなに理由はない」
何かはぐらかされたような返事だった。
さらにM君とは昼休みだけじゃなく、週一で夜もバスケをやっていた。M君のお母さんがママさんバレーをやっている体育館の空いているコートを使わせてもらってひたすら一対一での勝負。
当たり前だけど昼休みのバスケも週一の夜のバスケも高校までバスケをやっていた僕は無双していた。
M君と一対一の勝負をしても僕の全勝で負けたことがなかった。
ただM君は動きはぎこちないけど素人にしては何か上手かった。そして、いくら負けても何度でも勝負を挑んで来た。決して諦めようとしなかった。
結局、僕は高校生の時にM君に一度も負けることがなかった。
それからM君とは高校を卒業してからしばらく疎遠になっていたが、同級生が企画してくれた同窓会がきっかけで7年振りに再会をした。
聞くと今でも定期的にバスケをやっているらしい。予定が合いそうだったので高校生のときみたく夜にママさんバレーをやっている体育館の空いているコートでバスケをしようとなった。
久しぶりにM君との一対一。というかバスケをやること自体がものすごく久しぶりだ。
M君とバスケをするのも7年振りだ。
高校を卒業してからもずっと定期的にバスケをやっているというM君。
片や高校を卒業してからずっとバスケをしていなかった自分。だけど相手は一度も負けたことがなかったM君だ。多少はいい勝負になるんじゃないかと思っていた。
ところがだった。
え?!
M君はびっくりするぐらいシュートが入るようになっていた、本当に外さない。
スピードも上がっているし体も強くなっている。僕にブランクがあるにしても本当に止められない。
その日、僕は一度もM君に勝つことが出来なかった。
完敗だった。
そして、M君は全勝できたことにめちゃくちゃ喜んでいた。
感情が爆発しそうなぐらい嬉しそうだった。
僕は一対一の最中に思っていたことを聞いてみた。
「なんかさ、昔のオレにプレースタイル似てない?」
「当たり前だろ。お前のやってたプレーが出来るようにずっと練習してたんだから」
「本当に全然止められなくてオレも出来るようになりたかったんだよ」
「上手くなっただろ?」
僕はM君のこの言葉を聞いて本当にびっくりした。僕のバスケがM君にそこまで影響を与えていたことに。それこそプレーを参考にするほどに刺激を受けてくれていたのだ。
もしかしたらM君にとっては7年越しの超えるべき壁だったのかもしれない。
「本当にめちゃくちゃ上手くなった、すごいわ」
これだけ上手くなるにはどれほど時間を費やしてきたのだろうか。そう感じ取れるほどに圧倒的にレベルが上がっていた。
ふと聞いてみたくなった。
「てかさ、そんなにバスケ好きだったなら何で中学高校ってバスケ部入らなかったん?」
そういえば前にも同じことを聞いたことがあったな。
「いやさあ、初心者から部活入るの怖いでしょ」
「なんか勇気が出なかったんだよね、本当はすごく入りたかったんだけど」
やっぱりだ。やっぱりそうだったんじゃないか!
あの時、あのタイミング。いくらでもあったのに。無理やりでも引き込んでやればよかったと少しだけ後悔にも似た思いを感じずにはいられなかった。
それと同時にM君がバスケに対して今も抱えている圧倒的な熱量を感じずにはいられなかった。
それに部活入る勇気がなかったって…。
いやいやいや。今のチームに入ろうとするほうが勇気いるでしょ。
部活経験もないM君だがエンジョイサークルじゃなく市で唯一の競技志向の社会人チームに所属していた。
球技を部活でやらない人は感覚が分かりにくいかもしれないが、社会人までバスケをやっている人はみんな相当好きでずっとやっていて上手い人が多いのだ。そんな中に部活経験なしで飛び込む方が僕からしたら圧倒的に勇気がいるし、継続するのだって大変なはずだ。
それなのにそのチームでやっているということは高いレベルに揉まれて上手くなりたいという本物の熱意があるからだろう。
さらに大学を卒業して福祉系の仕事に就いていたのに働きながら体も鍛えられるなんで最高だろという理由で消防士に転職していた。体を鍛える理由もバスケに必要なフィジカルを身に付けたいからだそうだ。
M君は部活に入らなかったけど、後悔を後悔のままにさせなかった。自らの強い意志と熱意でバスケをやるという道を切り開いて今も頑張り続けていた。
何を始めるにも遅すぎることはない。
こんな言葉を聞くと、その背景にある勇気も苦しさも楽しさも交えて僕はM君を思い浮かべてしまう。
M君とのバスケの後、東京に戻った僕はバスケの社会人チームに体験参加させてもらっていた。今度は僕がM君から刺激をもらった……いや、悔しいのだ。負けたままではいられないという感情が甦ってしまったみたいだ。
それ以来、僕も社会人チームに所属して気付けば再開して10年以上続けている。
M君とは僕が帰省して勝負をしては勝った負けたを繰り返している。
そして改めてこう思う。
やっぱりバスケは楽しい。
またそうやって思わせてくれるきっかけをくれたM君には本当に感謝をしている。
面と向かってはまだ照れくさくて言えないから、お互いバスケが出来ない年齢になったら伝えてみようかと考えている。
***
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