メディアグランプリ

ブチ切れられた手紙から見えた母の姿


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記事:エリイ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「なんであんなこと書いたの!!」
 
すごい剣幕でそして今にも泣きそうな顔をして母が私を問い詰めてきた。
中学校の卒業式の日に、
無事に卒業できた報告と今まで育ててくれた感謝の気持ちを手紙にして渡した、その内容についてだった。
 
両親は、私が小学生の時に離婚。
母親は仕事をしながら私たち姉妹2人を育ててくれた。
私たちは、ひもじい思いもせず、グレたりもせず、楽しく学生時代を過ごした。
「悲しい、寂しい、辛い」というネガティブな思い出は、ほとんどない。
 
母親は、旅行に連れて行ってくれたり、休みの日は部活動の応援に来てくれたり、
お弁当を作ってくれたり、と十分に私たちをサポートしてくれていた。
今思えばきっと毎日忙しく大変だったと思う。
また、私たちだけの事ばかりでなく、大学時代の友人と飲みに行くなど、母本人も友達付き合いが活発で、習い事などにも行っていた記憶もある。
 
だから、子供の頃私から見る母親は「明るく元気で、何かといろいろ楽しんでいる人」だった。
 
ちなみに妹から見た母親は、「完璧を目指している」人で、
私とは少し違うが理想の母としては、近しいニュアンスを持っていた。
 
そんな母に、間も無く高校生になる私からの送った手紙はというと
「あの時は、こう言ってもらった方ががんばれた。次から、そう対応してほしい。よろしく」
という上から目線甚だしい内容だった。
実に、素直じゃない私。
 
手紙は、そもそも自主的に書いたのではなく、ホームルームの時間に担任の先生に指示され一斉にみんなで書いたものだった。
 
思春期ど真ん中の男子学生か!?
と思うほどとても気恥ずかしく、その手紙の内容は、もちろん本心100%ではなかったと記憶する。
多分、その配合は感謝の気持ち2割。残りの8割は文句を送った。
 
想像通り、いや想像以上に、殴らんばかりの勢いで母が迫ってきた。
おそらく本人も痛いところを突かれた! という内容だったのではないかと推測するが、
何よりこのハナムケの日にふさわしい感動メッセージを期待したのに、
開封したら”これ”だったというガッカリもあっただろう。
周りにいた私の友人のお母様方の前で恥をかいたとも言っていた。
 
ここだけの話、本人には口が裂けても言えないが、
この事件から20年近く経過する今の今まで、謝罪の気持ちが湧いたことは一度もない。
 
母親は、母である前に人だ。しかし同じよう私も人だ。
日々頼らせてもらい感謝しているが、合わないときは、どうしても合わない。
だから、自分なりの意見を的確に、建設的に、ここぞというタイミングで伝えただけだと思っている。
 
子供の時の母は、かっこいい大人に見えていた。
しかし、社会人になった私たちから見た母親は、子育てから解放されたのもあるだろう。
休日は、家から一歩も外出しない廃人に様変わりし、手料理も作らず出来合いの惣菜を買うなど、なんだか普通の人になっていた。
いや多分それが本当の姿だったのだ。
だからといって軽蔑する事は一切ない。
 
私たち姉妹から見えていた当時のかっこいいの母親は、本当はそうでもなくて、
ちょっと、いや、めちゃくちゃ必死に頑張っていたのかもしれない。
 
人にはいろんな側面がある。
そして1人の人間の中でも、
年齢や経験、その時の立場や心の余裕具合によって、視野の広さや考えの深浅がぐるぐる変わる。
振り幅があって当然だ。
中学生の私だって、明るく素敵でいつもで完璧な母親とちょっと適当なところがある母親と、二面性があることを知っていた。
 
さらに、私が成長し親子という主従関係のない、フラットな関係になって改めて見えた母の別の姿。
この気づきにより、当時を気丈に乗り越えてきた彼女を一人の人間として、やっと今素直に尊敬できる。
 
未成年の頃は特に、身近な大人は自分の両親に限定されがちだ。
そしてその人たちの言うことや考えることが、この世の大正解だと思ってしまう。
当時の私のようにちょっと生意気でない限り、
親だって欠点はあると距離を保って言動を捉えたり、子供が自分の力だけで視野を広げるチャンスは得る事はきっと難しい。
 
少しだけ踏ん張ってみて、時が経つのを待ってみよう。すると自分の人間関係が広がったり、社会で生きていく力が身に付いてくる。
そうなった時に
きっと「それはそれ。これはこれ。」という要領で、物事を捉えることがぐっと簡単になる。
 
目の前に相対していることについて、ふさぎ込んでしまいたい、そんな時もあるだろう。
そうしたら、思いっきりその嫌な事を脇にやって、視界から外してしまったらいい。
 
今見えているそれは、あなたの世界の全てじゃない。
あなたを取り巻く環境は目の前の視界の中だけじゃない。
斜め後ろも、右斜め上も、頭の上も、足元も、全部あなたの世界だ。
リラックスする具合に、ぐるりと首を回して見える世界を変えてみよう。
そうしたら、今までどうしても嫌だったことも、
なんだそんなことか! と受け止めて新たな関係性が築ける時が来るはずだ。
 
私も大人になったのか。
そんなふうに思い返し考えている間に、母に手紙のことを謝りたい気持ちに少しずつなってきた。
まだ”少し”だけれど。
 
***
 
 
 
 
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2020-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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