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何があっても、生きてろよ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 哲朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「信じられない、あの人が自殺するなんて……」
 
「そんな素振りはまったく見せていなかったので、驚きです」
 
こんなコメントを含んだ映像をテレビのニュースで見る機会が増えた。
順風満帆な人生を送っているように見えた著名人が、自ら命を絶つという痛ましい
ニュースがここ最近相次いでいる。
 
年間自殺者数がここ最近10年で1万人以上減少した日本でも、諸外国との比較では自殺率の高い国と言われている。自殺は健康問題、経済問題、家庭問題などあらゆる要因が重なって起こるものであり、遺書などが発見されたとしても、その詳細はなかなか明らかにならないことが多い。
 
また厚生労働省の自殺に関する令和元年の統計によると、その原因や動機が不特定な方は26%におよぶ。何が彼ら、彼女を追い込み「死にたい」という気持ちを人生最後の行動に移させてしまったのか、不明なものも少なくないのだ。
 
これは「自殺衝動」と呼ばれる「今すぐ死にたい」という強烈な衝動が影響していると思われる。ただ何となく「生きるのがつらいなー」と思っている程度では衝動にかられ行動に起こすことはない。
 
私は健康経営コンサルティングに従事している。企業の従業員が健康で元気よく、生き生き働けるように、会社の人事や総務にいる方とタッグを組んで仕事をしている。その中で、数千人以上の従業員を抱える大手企業の契約を数多く担当し、メンタルヘルスに不調をきたした就業が難しい方のサポートや、また残念ながら従業員のご家族でご不幸に合われた方や、その同僚、上司のケアといった場面にも携わってきた。そして何より私自身が強烈な自殺衝動にかられた経験があり、その苦しみは人一倍経験しているつもりだ。
 
長い間、生きていれば人生いろいろある。いい事も悪いこともある。
いまはダメでも、いつか良くなるかもしれない。
いまは良くても、いつかダメになるかもしれない。
いい事も悪いこともずっと続くとは限らない。
 
このストレス社会において、そんな人生全般について、潜在的に感情の浮き沈みを持っている人は少なくないだろう。
そんなあなたにはっきり伝えたい。
 
「何があっても生きてろよ。そして生きていてほしい」
 
◎地獄から天国に変わった踏切音
 
何があっても、生きていくと決めたきっかけがある。
 
浪人生として迎えた、19歳の冬である。予備校を特待生で迎えられるなどいいスタートを切り、受験勉強生活は順調だった。模擬試験でも国公立の志望校の合格ラインをクリアしており、すでに1年遅れでスタートする大学生活に青写真を描いていた。そんな気持ちで迎えた2回目の受験だったが、地獄が待っていた。結果はなんと大惨敗。
なんと現役時に合格していた、滑り止めの私立大学まで落ちるという言い訳の
通らない始末。
不合格通知のハガキの冷たい感触は今も忘れることはできない。
そのまま何も言わずに家を飛び出した。
 
今となっては、「1,2年の遅れなんてどうってことないよ。また来年頑張れよ」って言ってくれる大人が周りにたくさんいたことに気づく。自分自身もそう思う。
大げさでしょうと思われるだろう。それにもっと悲惨な困難な試練にあっている人は世の中にいっぱいいたはずだ。
でも当時の自分は気づけなかった。
またその頃は自営をやっていた父親の事業もうまくいかなくなり始めており、学費をアルバイトで稼がなければならないことも決まっていたことも影響したかもしれない。
 
気がつくと、私は踏切の前に立っていた。
不合格通知を受け取ってから15分も経っていなかったと思う。
当時住んでいたJR中央線沿線は、まだ高架化が進んでいなかった。
あと数歩前にでれば、数分後に快速電車が通過する線路に立つことができる。
 
「逃げたい、逃げたい、逃げたい」
 
あと一歩で遮断器を超えられる位置まで来たときだった。
「カーン、カーン、カーン」
踏切の音は徐々にボリュームが上がった気がした。
来たるべきときのカウントダウンの音だと思い込んだ。
 
そのときに後ろで小さな甲高い子どもの声が聞こえた。
「もうすぐ、あの電車でママが迎えにくるよ」
はっと我に返った。振り返ると、私の後ろに祖父母と思われる二人に両手を繋がれた幼い男の子が立っていた。
私は涙が止まらなくなった。自分の幼いころの光景と重なったからだ。
愛情で存在を精一杯肯定された日々、自営業の共働きで両親との幼い記憶がほとんどない中の自分。それでも両親の代わりに存分の愛情を注いでくれた祖父母のもとで幸福に満たされた日々。
 
仲良く手を繋いで、電車に乗って迎えにくるのであろう母親を待つ子どもと
その祖父母の姿を見て、その幸福の記憶が蘇ったのが分かった。
その瞬間、まだ生きていてもいい気がした。いや違う。生きたいって思った。
あんな満ち足りた日々をもう一度味わいたいって思えたから。思い出したんだ。」
生きるということを選ぶことができた。
 
「カーン、カーン、カーン」
あの瞬間から、踏切の音は、一瞬で最悪へのカウントダウンから私にとって幸せを思い出すシグナルの音に変わったのだ。
あの瞬間がなかったら、いまの私はない。絶対にない。
偶発的な導きに救われたのだ。
 
◎その衝動は誰にでも突然やってくるかもしれない
 
いま思えば些細なことかもしれないと思う出来事であったとしても、一人一人のメンタルや周囲の状況によって「最悪の衝動」にかられる可能性はあるのではないか。
どんなに満ち足りた人生であるように見えたとしても、本人にしか見えてない景色で闇はある。理由が若気の至りという言葉で今となっては済まされるものであったとしても。
 
自分がコントロールできるものであれ、そうじゃなくても必ず手に負えないような困難はやってくる。真剣に自分と向き合って生きている人なら、なおさらそうだろう。
 
いかなる理由の出来事であれ、それがマイナスであろうとプラスであろうと、生きてさえいれば、そのさきの困難を乗り越える推進力としてエネルギーを変えることができるきっかけに必ず変えることができる。人にはそんな力がある。そう信じたい。
 
だから、もう一度言おう。
 
「何があっても、生きてろよ」
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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