メディアグランプリ

全ての職業の根源は「愛」である


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 亜希子(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
朝食を終えた小学校2年生の息子は、お腹いっぱいの幸せそのままのうっとりとした顔で、宿舎の廊下に面した台所の窓から外を眺めていた。
そして、突然瞳を輝かせて叫んだ。
 
「お母さん。ここでお弁当屋さんをやろう! きっと皆のお父さんが喜ぶよ!」
 
いやいや。ここは公務員宿舎だから、商売は出来ないのよね……
 
そう話すと、息子は心底残念そうに
 
「ああ~っ、何で? ここは2階の廊下の始まりだから、全部の家のお父さんが通るのに? おいしい匂いがしたら、皆がお昼を楽しみにうちのお弁当を買っていくよ?」
 
とたたみかけた。
息子は、自分たちが作ったおいしい唐揚げや、サツマイモと紅玉で作ったおやつ入りのお弁当を皆が喜んで買っていく姿を想像してわくわくしていた。
 
僕の力で、人が楽しんだり喜んだりしている姿を見たいんだ!
 
そういう想いにあふれていた。
その天真爛漫な姿を目にしたとき、昔持っていた懐かしい感覚を思い出したような気がした。
 
そういえば『将来何になりたいか』を自由に想像していた時期って、幸せだったなあ。
 
思い出しただけでも、胸のあたりがほんわかと暖かくなる。
何の制約もなく。自ら『出来ない』と決めつけることもなく。
子供のすごいところは、この『心の制約』を設けないことにあると言ってもいい。
無邪気に『やってみるんだ』と心に決めるからこそ、初めてのことも恐れずこなしてしまうのかもしれない。
 
だとすれば……
 
私たち大人はいつから様々な制約を自らに科すようになってしまったのだろう?
 
そう考えたとき、人の社会的行動の全ては本来、誰かを喜ばせたいが為に生じているのではないか、と思えてくる。
そう。例えばこんな感じだ。
 
全ての職業の根源は「愛」なのではないか?
 
実際、そう感じる出来事に遭遇したことがある。
それは地方で立ち寄った、どこにでもありそうな某ファミリーレストランだった。
両親とドライブしていて「お腹がすいた」と立ち寄ったチェーン店。
せっかくだからご当地ならではのお店を探したかったけれど見つからず。手っ取り早く駆け込んだお店だった。
 
ところが侮るなかれ。
チェーン店とはいえ、何か空気が違う。
何が違うのだろう?
ひとり一人の店員の接客から何かがにじみ出ている。
お店全体から気品のような……何か澄んだ清涼な空気感があるのだ。
穏やかな空気の中、何がそんなに私たちを心地よくするのか不思議に思っていた。
 
そんなとき、ひとりの男性の姿が目に飛び込んできた。
 
凜とした姿勢。それにもかかわらず、お客様のなかでも目立たずにゆっくりと店内を歩いている。
彼の穏やかな表情の中で生き生きと輝いた瞳は、彼の理想とする世界が実現できている喜びに満ちていた。
 
彼はきっと、ここの店長に違いない!
 
同じチェーン店でも店長の心構えによって、こうも違いが出せるのだろうか。
この彼の姿を見たとき
 
「このお店の特別な空気の答えは、彼だ!」
 
と確信した。
 
彼の目には、談笑する人々が沢山映っていたに違いない。
はにかみながら、ささやかなデート中のお食事を楽しむカップル。
3世代で仲良く楽しい時を過ごす家族連れ。
その誰もが、安心して清潔な空間の中で「今」を楽しんでいる。
その店内の様子を満足そうに頷きながら笑みを浮かべて歩いている彼の姿は優しさにあふれていた。
きっと、彼の中には理想とするお店の姿があり、その実現のために日々リーダーシップを取りいろいろな出来事と戦い尽力されているのだろう。
彼の佇まいからは、人に対する「愛」がにじみ出ていた。
人々の何気ない日常における幸せ。その瞬間に携われることを、きっと心から喜んでいるに違いない。
 
そのときにあらためて気がついたのだ。
 
『大人になっても、子供の時のように純真な喜びの中で仕事をすることは出来る』
 
ということを。
 
今私は学生の就職支援をしている。
そうした中、履歴書の自己PR欄の作成を支援するのだが、時々切なくなる場面に出くわすことがある。
それは、どちらかといえば人とあまり話をしてこなかったタイプの学生に見ることが多い。
というのも、彼らは人とのコミュニケーションにおいて少し自信を無くしている様に見えるのだ。
 
「子供の頃はもっと、自由に分け隔てなく人と会話を楽しんでいた」
 
と。
一体いつからコミュニケーションに制約が出来てしまったのか?
 
「気がつけば僕は、周りの人から叱られたり悪く言われたりするようになっていた」
「しかし、かつての自分はオープンな正確で、誰とでも仲良くなれた。それこそ自閉症のお友達とも一番の友達となって一緒に遊んでいたんだ」
 
そんな話を伺って、思う。
彼だって、幼少期は当たり前に自由に誰かと喜びを共有して過ごしていたのだ。
だってそもそも、人は本来、誰かを喜ばせたい生き物ではなかったか?
「お店屋さんごっこ」や「ままごと」って、そういう『喜びの疑似体験』ではなかったか?
 
彼はきっと、周りと比べてどちらかと言えば不器用な部分が周囲の人間に受け入れられず、自信喪失に至ってしまったのだろう。
 
だから、思うのだ。
 
消費にまみれたこの世の中で、不器用などを否定することなく人の感情をもっと大切に出来れば、もっと社会は多様性と優しさに満ちて面白くなるのではないか?
利便性だけでなく、そこで働く人のことも思いやれる世の中であれば、縮小経済の中でもうまくやって行けるのではないか?
それができれば、人が互いを思いやれる=尊重出来る世の中になり、どんな特性の人も生きやすくなるはずだ。
「働く」ということが皆の喜びになる社会がきっと叶うはずだ。
 
そんな希望を今の「コロナ禍」の世で考えている。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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