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理由のない婚活

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:綾崎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「わたし、結婚することになった」
食べ終わった中華麺のどんぶりを見つめながら、少し強張った顔で彼女が言った。
彼女とは学生時代からの友人で、月に1回は会う仲だ。「話がある」と呼び出されて小綺麗な中華料理屋へ行くと、彼女の口から結婚報告が飛び出した。
「えっ」
私は面食らった。動揺し、すぐに次の言葉が出なかった。
随分前から婚活していたのは知っていたし、そのうち結婚するだろうとは思っていた。思っていたけれど、交際報告をすっ飛ばしての結婚報告だったので、びっくりしたのだ。
……いや、正直に言おう。私は結婚報告を聞くことを恐れていた。その恐れていた一言が、なんの心の準備もない状態で投げ込まれたものだから、動揺したのだ。
と、独り身のアラサーがこう書くと勘違いされそうだが、私は結婚に対しての焦りはない。
「特別に結婚したいわけじゃないけど、絶対にしたくないってわけでもない」
結婚願望があるかと聞かれると、いつもだいたいこう答える。これが本心のつもりだった。でも同時に、本心だという自信もなかった。
自分と近い立場である長く独身を続けた友人から、結婚報告があったとき、私は嫉妬してしまうんじゃないかーーすなわち、本当は結婚がしたいと思っているのに「結婚なんて興味ありません」みたいな顔をしている、ということが暴かれてしまうんじゃないか。私はそのことを恐れていた。
「そうなんだ、決まったんだ」
黙っているわけにもいかないので、曖昧に返しながら自分の心の動きを確かめる。動揺の後に、じわっと寂しさがやってきた。
嫉妬心はーーない。
杞憂だった。私の恐れはただの自意識過剰だったことがハッキリとわかり、ホッとした。
「おめでとう。婚活、お疲れさま。
相手はどんな人なの?」
強張っていた彼女の表情は明るくなり、夫になる男性についての人となりや今までの経緯を話してくれた。話が合って一緒にいても苦にならないし、優しい人だそうだ。そして優柔不断で頼りなく、全然気が利かなくて結婚式の準備も協力してくれないらしい。惚気かと思ったら愚痴だった。
「この前テレビで、最近結婚した女優さんが、結婚して一番良かったことは自分のことを理解してくれてる人が側にいることだって言ってたんだけど」
彼女の表情がまた暗くなった。そのまま続ける。
「それ聞いて、わたし、なんのために結婚するんだろうって」
「いや、あんなに婚活頑張ってたじゃん」
「だってわたし、婚活でもしないと結婚できないし」
「そもそも、なんで結婚したかったのよ」
「わかんない。そういうものだと思ってたから」
間髪入れずに返ってきた答えに私の方が戸惑ってしまった。
彼女がいつから婚活を始めたのかは正確には知らないが、5年以上の時間と安くはない額のお金が費やされたことは知っている。相談所のアドバイザーさんに夜な夜なLINEで泣きながら相談し、励まされてなんとか続けた婚活。わからないのに、あんな苦しそうなこと続けてたの??
 
てっきり「結婚したら幸せになれる」なんて考えているのかと思っていた。でも、どうやら違うらしい。「結婚しないと幸せになれない」の方がニュアンスは近いのかもしれない。しかし、結婚したからといって幸せになれるわけではないことも無意識的に感じているのではないだろうか。
彼女の「わからない」の裏を想像すると、私自身の結婚観も浮き彫りになる。
私は「結婚」を厄介なマナーみたいなものだと思っている節がある。守らないと周りから白い目で見られたり、親切な人から忠告を受けたりすることもある。プレッシャーや罪悪感も出てくる。マナーは守るべきもので、それが「普通」だ。あるいは、私はマナーを守られねばならないフィールドから逃げたのかもしれない。彼女は逃げなかったのだろう。もし、マナーがなかったとしたら。それでもやはり、彼女は泣きながら婚活をしただろうか。
 
人は一人一人違う。普通はない。幸せな人の真似をしても、幸せにはなるとは限らない。幸せを掴むには、自分と向き合うほかはない。
そこまで考えて、だから私は嫉妬しなかったんだなと、腑に落ちた。
 
ところで、私は彼女の結婚に嫉妬心は湧かなかったが、「幸せになった」という報告だったら結果は違ってきたかもしれない、と思う。
「好きなように生きているし、素晴らしい人パートナーも見つかった。
毎日楽しくて仕方ない!」
ああ、そんなことを報告されたら、これはもう絶対に嫉妬する。
彼女は過酷な婚活の末に結婚を勝ち取った。せっかくだから、その延長線上で真の目的である「幸せ」にもたどりついていただきたい。
嫉妬はもちろんしたくない。私は私で、自分の幸せをきっちりと掴んでおきたいところだ。私にとっての「幸せ」がどんなものなのか、それはすでにわかっている。答えはずっと自分の中にあった。
 
結婚するカオリ、真の目的が達成できたらまた報告してください。
その時は必ず、心から祝福しますね。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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