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陰で悪いか!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐々木保奈美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「そんな感じには見えないんだけどねぇ」
よく言われる。それが褒め言葉でもなんでもないことは分かっているが、言われて嫌な気はしない。
「最初に猫をかぶるみたいで。ひとりでいるのが好きなんですよ」
 
子どもの頃から、はきはきと受け答えをする子どもだった。
学級委員や生徒会などをひと通りこなし、どの学校でも先生からの絶大な信頼があった。
部活をやっていなかったわりに、どのタイプのクラスメイトともそこそこ話せた。
 
大学生のときのファミレスのバイトで、スマイル対応は一層磨かれた。
 
だから、猫をかぶっているというより、何もがんばらなくても常に第一印象は品質保証されていた。
 
ただし、心から仲良くなれる友達は多くはなかった。
これは、大学生くらいではっきりと自覚することになる。場面に合った世間話や気の利いた面白い話が全くできない。言い方が良くないが興味が沸かないと話す内容がなく、話したいと思うこともないのだった。
 
圧倒的なコミュニケーション能力の低さ。
それは第一印象の品質とは相関しないし、文章が書けるとかテストの点が良いなどとも関係しないものだった。いわゆるコンプレックスだ。
 
周りはなんなく会話を楽しんでいるように見えた。
充実とは、できるだけたくさんの人と仲良くなって楽しい思い出を作ることだと思っていた。
 
しかし実際は、人間関係にマメではないし、大人数での集まりはできるだけ避ける。
盛り上がる話のひとつも言えやしない。興味がないと話さないのだから、然るべき成長段階で積むべき場数を踏んでいない。家でひとり、アイドルの動画を見ている時間の方が圧倒的に長いのである。
 
人当たりの良い外側のスペックと、本当はひとりで過ごしたいという内側の仕様は噛み合わせが悪かった。
 
そんな私でも、会社員をなんとか5年間続けることができた。
相変わらず業務時間外の付き合いは悪かったが、仕事があると無理なくその場にいられるし、なにより人と話す中身がある。共通の話す中身があれば困らない。これは素晴らしい発見だった。
 
会社を辞めてフリーランスになってから関わる人が変わるようになり、占いや引き寄せ、気質診断等の話をよく聞くようになった。
 
これが私にとっては羽だった。
 
人の性格を分類していく類の話に妙に惹かれ、自分の性格はどういう分類になるのか、どういう特性を持っているのかを調べるようになった。
様々な種類の診断方法があるので、多く試した方がよく分かるだろうと、いくつかやってみた。
 
どの診断をしても、私は「引きこもってひとりで何かに打ち込むのが得意」という結果になった。不思議なことに、性格に関する質問に答えていくタイプのものでも、生年月日のみで診断するものでも、結果は同じだった。
 
このまま胸を張って生きていけるという自由を手にした瞬間だった。
 
陰と陽、外向型と内向型は優劣ではない。ただのタイプだ。
私はそのように生まれ持っているから、現状で正常で、真っ当なのだ。
陰で悪いか!
 
無意識に、パーティーで空気が読んで盛り上げられないのは短所、うまく聞き役になれないのも短所、友達がたくさんいないのも短所で、できるかどうかは分からないけれど、直そうと努力するべきものだと思っていた。
そう簡単に直るものでもないから、これからもコンプレックスに感じて生きていくのかもしれないともぼんやり思っていた。
 
新しく発見した「自分の気質・特性である」という考え方は、私を自由にしてくれた。
 
本当に大切なことは、周りからどう思われるかではなくて、自分が納得することだ。
納得することは羽を手に入れるようなもので、私はうんと軽く行動できるようになった。
 
例えば、私はピアノ弾き語りをする。
学生のころから続けてきたもので、頻度はだいぶ落ちたが今でも時々SNSに投稿をする。
せっかく投稿するのに、あえて目立たないように、夜中にほとんど文章がない状態でアップする。
 
見たい人だけが見てくれたらいい。
好きな人だけが聴いてくれたらいい。
 
特に音楽人でもない私が言うには殿様すぎるが、しかし本来そうなのだ、とも思う。
 
特にそれで食べているわけでもないので、たくさんの人に聴いてもらう必要はない。
私がそうありたいのだ。
 
人間関係にも同じことが言える。
 
今私は事務サポートの仕事をしているので、多くの人に知ってもらうよりも、何人かにずっと継続して事務サポートのサービスを受けてもらうことの方が大切である。
たまたまそういう仕事のやり方だったのだが、今思うと自分にとても合っていると思う。
 
人生において、たくさんの人に注目されて、フォローされる必要はない。
その分の余白を、思考をめぐらせたり、納得するように歌えたり、新しいことを知ることに使いたい。ずっと学んでいたいし、美しいと感じるものを愛でていたい。
考えたことや感じたことを、心から渡したい人に、それいいよねって言ってくれる人に、丁寧に渡していきたい。
人との関わりも、社会のなかでの在り方も、自分サイズでいいのだ。私は羽を手に入れた。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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