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哲学対話をすることで自分になれる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長谷川順子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
初対面からパンチをくらったようだった。
京都でお世話になっていた哲学の先生に、京大の先輩だと紹介された。
「京大って自由な感じでいいですね」と言った瞬間、
「京大が自由だなんて今まで微塵も思ったことはない」ときっぱりと言われた。
 
「僕は高校生の前で、先生の言うことは聞いてはいけませんって言う。学校の先生の言うこと聞いても、先生は生徒の人生の責任とってくれないよ。」とも仰った。
 
おもしろい先生だと思い、一緒に仕事をしたくて、お願いしに行った。その人は、東大の哲学の先生なので、哲学をわかりやすく解説してもらう講座をしてもらおうと思い、駒場キャンパスの研究室に会いに行った。
ふつうの哲学の授業をイメージしていて、それを伝えた。
「できるけど、そんなのつまらないからそんなのする気になれない。哲学対話ならいいよ」
「哲学対話って何ですか?」
私は哲学対話を知らなかった。
「説明するよりも体験したほうがいいから、今度あるから来てみたら」
 
哲学対話を体験した。
哲学対話とは、10人から20人程度が一つの場所に集まって輪になって膝を寄せ合って座り、一つの問いについて一緒に考えることである。その先生は8つのルールを設けている。
① 何を言ってもいい
② 人の言うことに対して否定的な態度をとらない
③ 発言せず、ただ聞いているだけでもいい
④ お互いに問いかけるようにする
⑤ 知識ではなく、自分の経験にそくして話す
⑥ 話がまとまらなくてもいい
⑦ 意見が変わってもいい
⑧ わからなくなってもいい
 
このルールが、とっても気を楽にさせてくれた。
人の批判や感情を気にする私としては、何も言わずただ聞いているだけでもいい、というのは、何かいいこと言わなくちゃというプレッシャーがなくなった。
 
私は知識人に弱い。何にも知らない自分は話すことがないと思ってしまう。でも、知識ではなく、自分の経験にそくして話す、というルールは、コンプレックスを感じずに自由に話せる。こどもも大人も一緒に話せる。この自分の経験をシェアするということが、お互いにとても大切な気がする。
 
そして、話がまとまらなくてもいいだなんて、私にもってこいだ。私は話しているうちに何が言いたいのか自分でもわからなくなってきて、話がまとまらない。それでもいいというのだからすごい。
 
しかも、意見が変わってもいい。筋道を通すというか、コロコロ自分の意見変えるなよと怒られる感じがするが、変わってもいいという。変わっていいなら、いま思ったことなんでも言っちゃえ、という気になる。
 
とどめに、わからなくなってもいいのだ。話しているうちにわからなくなってもいいのだ。
まるで、私のダメな話し方に全部OKもらった気分だ。
 
このルールで、話す気になれない要因は全部取っ払ってくれている気がする。それに、話さなくたっていいのだから。聞いてるだけでもいいのだから。なんて気が楽なんだろう。
 
この哲学対話で、私はいつも自分が思っていることではなくて、皆からよいと思われる模範解答を探そうとしていたことに気がついた。
模範解答。それは、自分の感じたことや思ったことではなくて、この場所で求められているであろうベストの発言。
今わたしは何を言う「べき」か。
いま私は何を言わないと「いけない」のか。
そんなふうに考えてしまう思考の癖に気がついた。
 
それって、その発言に自分はいない。
その場に必要とされることを探して言おうとしているから。
 
でも、このルールは、ただ単に、自分が思っていること素直に言っていい。誰も否定しない。ただ聞いてくれる。あれ、言ったけどそれ違うなと思ったら、変えてもいい。
 
ああ!!! なんて気が楽なんだろうか!!!
 
そして、一緒に話すのがとっても楽しい。
みんなの話を聞くのも楽しい。ひとはそんなふうに思ったりするんだと刺激になったり、新しい考えが浮かんできたり、自分では思わなかったけど共感するなあって気づかなかった自分の感情がわかったり、一人で考えているだけでは決して出てこないものが、自分のなかから立ち現れてくる。
 
わたしが話したことを聞いてもらい、否定せずに受け止めてもらい、ひとが話したことを
そんな考えをするんだなと、ただ受け止める。
 
それがとても心地がよくて、羽根を広げて自由になった気持ちがする。
自分の発言によって、相手の感情にこわがらなくてもいい。
怒られるかもしれないと心配しなくていい。
バカにされるかもしれないと不安にならなくてもいい。
 
何度も哲学対話をしたけれど、その場その場みんな真剣に聞いてくれるし、真剣に話す。
なんでこんなに真剣になれるんだろう?
自分をそのまま出すからだ。
 
よく思われようと取り繕ったりせず、ごまかしたりせず、自分の思ったことをありのまま話す。素の自分をこわがらずに出す。自分になれる時間なんだ。
 
ひとと一緒に話すことで、自分になれる。
いつも逆をしていたな。
ひとに合わせようとして、自分を封じ込めていた。そして、そのことに気づいていなかった。
 
哲学対話をすることで、自分になれる。
なんてすばらしい時間だろうか。
 
その先生は、東京大学大学院総合文化研究科の梶谷真司先生。
また、先生に哲学対話をしてもらおう。
何をテーマにしようかと考えるだけで楽しい。
 
先生はいつも仰る。
「僕はいてもいなくてもいいぐらいで、いないほうがおもしろいかも」
僕はいい加減だから、ちゃんとしてないからね、と言いながら、誰よりも深く考え、ちゃんと事前に時間をかけて準備し、哲学対話に臨んでくださっているのを私は知っている。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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