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すべては返事と挨拶からはじまる


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記事:根本 理沙(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「さてどうしたものか……」
 
初めての新人教育が始まって1週間、私は完全に袋小路に追い込まれていた。
 
上長に呼び出され、頼まれたのは、新人教育だった。別に初めてのことではない。すでに新人教育は何度か担当しており、また新人さんが入るのか程度の、穏やかな気持ちだった。
 
ところが、そのときの新人さんは今までにないタイプの人だった。とにかく返事ができない。返事そのものはしてくれるのだが、声に覇気がなく、どう聞いても「はい」が「ふぁい」にしか聞こえない。
抑揚も感じられず、人の話を聞いているのか聞いていないのか、よくわからなかった。
 
こう書くと、多くの人が若い女性を想像するかもしれないが、その新人さんは、私より1つ年下の男性だった。内向的な雰囲気があったので、緊張しているのかとも思い、少し様子を見ることにした。
ところが、3日経っても5日経っても、返事は一向に覇気がないままだった。それどころか、数日経って、挨拶も覇気がないことに気がついてしまった。
 
言葉で表現するのが難しいのだが、基本、あくびをしているような、たくさん空気が混じったような話し方をする人だった。おまけにぼそぼそ話すので、何を言っているのか本当に聞き取りづらい。
 
1週間も経つと、新人さんに対してイライラと不安が募るようになってきた。やる気がないのか? それとも、私の教え方に問題があるのか? もしや本当に具合が悪いのか?
周囲も、新人さん声に元気ないよね? 研修うまくいってるの? と私に聞いてくるようになってしまった。
 
これはまずいと思い、新人研修10日目に、一度面談をした。私が正直に疑問を伝えると、新人さんも正直に回答してくれた。わざとやっているわけではないので、申し訳ないが指摘してほしい、という言葉を信じ、それからは事細かに指摘をするようになった。
最初の頃はあまりにも改善の兆しが見えず、何度か厳しく叱ったこともあったが、みっちり3ヶ月ほど言い続けたことで、その新人さんはようやくまともに返事や挨拶ができるようになった。
 
返事ができる。挨拶ができる。これは人として基本中の基本のはずだ。すべてはそこからはじまる。初めて会った人間とは何をするだろうか。まずは挨拶だ。つまり、第一印象は見た目や雰囲気だけでなく、挨拶の仕方でも判断される。
 
ビジネスにおいても、返事や挨拶は大切だ。初めて会った仕事相手に、小さな声で「ふぁじめましてえ」なんて言われたらどう思うだろうか。不安や不信感、不快感といった、なにかしらマイナスのものを最初に感じるはずだ。
返事だってそうだ。真面目な仕事の話をしているときに「ふぁい」などと返されたら、疑問に思うだろう。やる気がないように見える相手と、一緒に仕事をしたいと思うだろうか。答えは明白だ。
 
職場やクライント先は、学校や家ではない。家族や友達と一緒に仕事をしているわけではない。組織やチームとして行動するが、ある意味「他人である」ことが強調される場がビジネスなのだ。それがわかっている人は返事も挨拶も気を抜かずにきちんとする。
 
返事や挨拶ができなくても仕事ができていればいいのでは? と思う人もいるかもしれない。しかし、私の勝手な経験則だが、仕事ができる人は、みな返事や挨拶は当たり前のようにできる人しかいないように思う。今まで出会ってきた仕事ができる人は、みなそうだった。
結局、他人との関わりなくしてはビジネスは成り立たない。であれば、自然と返事や挨拶といったコミュニケーションの根幹に関わる部分ができなくては、ビジネスを円滑に進めることはできないのだ。
 
返事や挨拶をしっかりやることは、自分の自信にもつながる。これは、先ほど話した新人さんが体現してくれた。3ヶ月、返事と挨拶を叩き込んだことで、声は大きくなり、トーンも格段に明るくなった。朝はすれ違う人全員に挨拶をし、姿が見えないのに彼の元気な返事が聞こえるようになったのだ。そんな彼を見て影響されたのか、彼に話しかけたりご飯へ連れていったり、コミュニケーションをとろうとする人が増えた。
 
私がその職場を退職することになり、最終出社日に、彼は大号泣しながら私に感謝してくれた。返事と挨拶をきちんとやるだけで、こんなに人生が変わると思わなかった! と涙と鼻水をだらだらと流しながら、何度も大きな声でありがとうございます、と言ってくれた。周囲はお前も泣けよという目で見ていたが、あんなに感謝されたことがなかったので、気恥ずかしくて泣けなかった。
 
指導した側の感想としては、彼の場合、本人が素直に指摘を受け入れ、一生懸命改善に向かって行動したことが大きかったように思う。結局、本人が自主的に行動しなくては自分を変えることはできない。
 
あの新人さんに出会わなければ、返事と挨拶について真剣に向き合うことはなかったかもしれない。たかが返事と挨拶、されど返事と挨拶、なのだ。
年齢的にも立場的にも、指導側に回ることが増えた今、改めて、誰かの見本となれるような人間であるよう努めたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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