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いつまで「ダメな私」というつもりだ!


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記事:大橋知穂(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「学ぶことは大切」
と、この20年言っている。
 
学校に行けない子どもや、小さい時に行きそびれた若者や大人の「学び直し」をサポートする仕事を生業にしているので。
だから、「いくつになっても、どこででも、学びたいと思ったら学べる環境を作ろう」なんぞと言い続けている。
 
しかし、いろいろなご縁が重なって「教育」の仕事をしているが、私は自分の人生で「教育のすばらしさ」を信じてきたかというと、そうでもない。むしろ逆だ。
 
自分が子どもの頃学校にいい思い出があるかというと、うーん。
自分が学校の先生になりたかったかというと、まったくそういうことはない。
じゃあ、勉強が好きだったかというと、それもまあまあ。
時に面白いと思える時もあったけど、偏差値的には、成績は小学校をピークに右肩下がりに下がって、高校の頃には後ろから数えたほうが早かった。
 
先生の思い出と言えば、いい先生もいたのだけど、思い出すのはどちらかというとマイナスのストーリーばかり。
 
青春の楽しい思い出もあるけど、でも手放しで学校がいいところだったなんて言えない。むしろ、いろいろな可能性を制限する装置も持ち合わせる場所でもある。
学校って、学ぶというより、教えられるところだったし。
学校って、正解か不正解かで決められて、いろいろと多様な答えとか、答えがないとか、なかったし。
でも、社会に出たら、教えられるより自分で学んでいかなくちゃいけないし、答えがないことのほうが多いんだよね。だから、むしろ、社会にでてからの「学び」のほうが、本当の学びだったし、楽しい。
 
仕事は楽しいのだが、「途上国で学校に行けない子どもたちを救っているなんて、立派な仕事をされてますね」と言われる。これ、正直心苦しい。
 
大した志もなく、この仕事についてしまったからだ。
大学で国際協力を勉強したわけでもなく、もちろんボランティアをしたわけでもない。
若いころ海外協力隊とかNGOとかで現場で汗をかいて‥‥‥もいなかった。
 
だから、この仕事を始めたころは、志の低い自分や、現場を知らない負い目や、教育協力のイロハも知らない無知に、「あーあ。ダメな私」と思い続けてきた。
周りの目も「何を考えているかわからない、ニヤニヤしているけど、言いたいことを言わない日本人」として、映っていたはずだ。
それでも20年近くこの仕事に関わってきたのは、出会った人たちから「人間が学びたい、変わりたいと思う時の力のすごさ」をビンビン感じて自分が突き動かされたのと、困難をどう変えていくかを一緒に楽しみながら考える仲間がいたからだ。
 
一方で、日本の人には、
世界に7億8千万人、非識字者はいるんですよ、とか。
パキスタンは、世界で2番目に学校に行っていない子どもが多くて、学齢期の2800万人が学校に行ってません。東京都民の約2倍の数ですよ、とか。
「読み書き・計算」ができない非識字者の人たちが騙されたり、間違えて大変な目を被る話とか。お金がないから、子どもを嫁にやっちゃうとか、働きに行かせる話とか。
 
別の世界の現実やそこに生きる人の想いを伝えたくて、一生懸命伝えようとするんだけど。
正直、ピンとこないんじゃないかなぁ、日本とは状況が違いすぎて、とどこか冷めてしまう自分もいる。
要は自分で伝えきる自信がないのだ。
そのもどかしさにさらに「あーあ。ダメな私」と思い続けている。
 
しかし、だ。
今更もう、「ダメな私」と言い続けるのもいい加減にしないといかん、と思い出した。コロナ禍に。
 
実際に貧しかったり、虐げられたりで学校行けなかった人たちと「出会い」、「環境を見て」「話して」「感じて」きた。彼ら、彼女らの現実や、その想いを100%は伝えられないかもしれない、間違っているかもしれない、でも、少なくともそこに出会った自分はもう「知らない」とは言ってはいけないのだと。
 
教育を受けてこなかった人たちは「あーあ。ダメな私」と思っている。
そこは、おんなじなんだ、私と。「あーあ。ダメな私」と。
 
でも彼らが違うとことは、それまでの閉じられていた世界を開けていこうと学びはじめることだ。勉強だから覚えなくちゃいけないこともあるし、大人になってだから、恥ずかしさもある。それは大変なプロセスだけど、「考える」ことはとても楽しくてワクワクする。そして、新しい世界を獲得できた喜びは至極のものだ。
 
例えば、お姑さんとの葛藤を話してくれた若い女性。
「自分は文字が読めなかったけど、嫁いだ家はお姑さんも、旦那も、姉妹も学校に行ったことがあるので、それはそれはみじめな思いだった。だけど、今は識字の教室で勉強したから、もっと論理的にお姑さんとも話ができるようになった。家計費の管理も、私に任せてもらえるようになったし」
と力のこもった目で、語ってくれた。
 
日雇いの水道工の男性。
「文字が読めるようになったうれしさ? そうだなぁ、なんだか都会のコーヒーショップで、泡の立ったコーヒー飲むみたいな感じ」
学んだことで、今まで分からなかったことをわかるようになる面白さ、ドキドキの気分とそれができた自分のすごさを、いつも飲んでいるミルクティ(南アジアでは、チャイと言われる甘いお茶が主流)と違って最近都会で流行っているカフェに行けて、ドキドキしながらイケてる俺感を感じている自分と比べて伝えてくれた。
 
彼ら、彼女から私は多くのことを学んだ。
 
今、コロナ禍で外に行けないけど、その分日本にいる、そして年齢の若い人たちとオンラインで話す機会が増えた。
 
「自分は、経験がないんで」
「自分は、わからないけど」
そう言われるたびに、「大丈夫、私もそうだったから」と答えている。
「あーあ。ダメな私」と思う若い人たちに、今更私が「ダメな私」でいてどうする、と開き直り始めた。
 
自分がずっと学ぶことで得てきた、新しい世界の味方を、若い人たちも面白いと思ってくれるといいな、と思いつつ。
今いる世界以外を見たい、あるいは見るかもしれない人たちに。コロナ禍だからこそ、伝えたい。学ぶことの大切さ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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