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オレの焼肉を笑うな


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 哲朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ひとりカフェ、ひとりカラオケ、ひとり映画。
 
ネットの記事でよく見かける。
ひとりになりたい人は増えているのだろうか。
 
「ぼっち飯」という言葉に代表されるように、「ひとりで出かけて何かを楽しむ」
ことは確実に広まりつつある。
 
最近は若い女性がひとりで、ラーメン店や牛丼店に来店する風景は珍しくなくなってきた。
2018年に行った株式会社ぐるなびの調査によると、ひとりでランチに行くことに以前より抵抗がなくなった女性の割合は30%以上になるという。
 
好きなことを、好きなタイミングで、好きなだけ楽しめばいい。
 
ひとりは楽しい。
ひとりの時間は尊い。
ひとりでいる自分はカッコいい。
 
そんな価値観の広まりを、ぼっち飯を追求する筆者はこの上なく嬉しく思うのである。
 
筆者のぼっち飯の歴史は、高校卒業後の浪人生時代から始まった。
 
予備校に友達はいなかった。
まったくもって暗い暗い受験生活。
大学合格という、夜明けだけを見据えて生きていた19歳のことである。
仲のいい友人は現役で大学に行ったものもいれば、予備校にきても勉強よりも、女の子に声をかけることに熱心な連中で、私には楽しい青春を謳歌しようとしているように見えた。
 
いまとなれば、そんな彼らとつるんでいてもそれなりに楽しかったのかもしれないが
距離を置くことを選択した。
すでに学費のために、夜勤のアルバイトも始めて、予備校の講義の予習・復習で精一杯。
眠くて仕方なかった。隣のクラスメイトに声をかける気すら起こらない。
当然お金もそんなになかった。
いつも朝飯なのか、昼食なのかわからないタイミングだった。
行きつけの立ち食いそばで当時290円のたぬきそばを口にかけこむのが
お決まりのストイックな生活だった。
たまにバイト代が入った直後に80円のいなり寿司をつけるのが唯一の贅沢だった。
 
そんなひたすらぼっち飯の日々。
自分で選んだとはいえ、つまらない生活と浪人生といういわば社会から断絶された不安定な社会的位置にいることがより不安を増幅させる日々だった。
 
ランチメイト症候群という言葉をご存知だろうか。
学校や職場で一緒に食事をする相手(ランチメイト)がいないことに一種の恐怖を覚えるというものらしい。
人はひとりになりたいという気持ちがある一方で、誰かと一緒に何かをしなければならないという同調圧力にもかられることがあるということだろうか。
 
ひとりでいることはつらくない。
むしろ楽しいことすらある。
でも不安。なぜだろう。
 
そんな日々が続く英語の講義の時間のことだ。
 
「Only is not lonely」
 
今も業界内ではカリスマと呼ばれているその講師は、当時では珍しかった
ネット講義中継用教室のでかい黒板に、いつもより少しだけ乱暴に書きなぐった。
 
ひとりは孤独じゃない。
この矛盾しているようにも読み取れるこのレトリックに私はしびれた。
 
ひとりで自分の好きな時間を過ごす。
ひとりで没頭する。
そこから生まれたものが結果的に誰かとつながることだってある。
 
そのときの黒板の字はありありと頭の中に浮かべることができる。
受験勉強に没頭して、結果を出せば、大学という新しい舞台でいろんな人と
関わることができる。
今はその準備期間である、そう思えたのである。
講師が黒板消しでその文字を消して、次の話題に入ろうとしたときには不安が
消えていた。
それから自分ひとりで、好きな時間を過ごすことを心から肯定して時間を過ごしている。
もちろんランチメイト症候群とは無縁である。
 
ぼっち飯の話題に戻ろう。
私の一番好きな、ぼっち飯とは。
焼き肉である。
 
近所の焼肉屋に定食と飲み放題がチョイスできてリーズナブルなお店がある。
この店のいいところはいつもファミリー層も賑わっているのだが、きちんと
お一人様用にも席が配慮されている。
 
「焼肉はみんなでワイワイガヤガヤしながら、食べるのも楽しいけど、ひとりでの焼肉もこんなふうに楽しめるんだよ」
 
そんなふうに語れる大人になりたい。
そんな大人はきっと魅力的。
若い女性にモテなくていいから、「粋だね」と言われたい。
そこに私のぼっち飯の楽しみを追求する理由と魅力がある。
 
それをひとりが怖いあなた、みんなと群れていないと心配で不安で仕方ないあなた。
あなただけに特別に伝えよう。
 
ポイントは、ぼっち飯に没頭すること。
何を飲むのか、なんのお肉から焼くのか、おつまみは何からいただくのか。
だれの目線も気にすることはない。
決定権はすべて自分にある。
思うがままに、ありのままに焼肉を楽しむのだ。
 
隣のテーブルが家族連れで楽しんでいる。
そんな家族の物語のエキストラとして、幸せに彩りを添える役割を
私は担っている。
 
店員にドリンクをオーダーするときはさり気なく。
注文のためだけに呼ぶのではなく、他のテーブルの行き帰りのときを
狙って声をかけて、店員の負担を軽くする。
どうしてもお店の単価の貢献はひとりだと乏しいので、こんなところで
フォローしたい。おひとり様客を受け入れるお店へのリスペクトをアピール
するのだ。
それが筆者なりのぼっちの流儀なのだ。
 
「えっ、その感覚よくわからない」
そんな声が聞こえてきそうだ。
 
これでいいのだ。
他人の目線を気にする必要はない。
迷惑をかけているのではないのなら、無目的な自己満足と楽しみを自分の物差しで
とことん貫くこと。これがぼっち飯に限らず、ひとりの時間を楽しむ最大の醍醐味である。
 
そしてひとりで没頭することを見つけることは、間違いなく自分なりの幸福を呼ぶ。
たとえ誰かに笑われたとしても。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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