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そのドアに鍵はかかっているか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石川玲子(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
ドアノブを回してみるまで、鍵がかかっているか開いているか分からないドアがある。
トイレのドアを開けようとしたら、誰かが入っていたらしく、鍵がかかっていた。そんな経験を持つ人は少なくないだろう。逆に外出先から帰ってきて、鍵を開けるつもりで鍵を閉めてしまった。つまり、鍵が開いていることに気づいていなかった。そんな経験もないだろうか。要するに、ぱっと見では鍵がかかっているか開いているか分からない、世の中にはそんなドアがけっこうある。
 
自由はドアのようなものだ。行動してみなければ、その先に行けるかどうか分からないものも多いからだ。
ドアノブを回してみたら、予想に反して鍵がかかっていなかったように、できないと思っていたことが実は自由で、その先に行けた。そんな個人的な体験を話してみたい。
 
私は子どものころからダンスが好きだった。とりわけバレエや新体操が好きで、しょっちゅうリビングで一人で踊っていた。とはいえ何かを習っていたわけではない。今ほどにはダンス教室もなかった時代、いろいろな都合により、両親は私にダンスやバレエを習わせることはなかった。だから何も知らない子どものでたらめな踊りだった。当たり前だが、見る人もいない。それでも私は楽しく踊っていた。
いつからかそんな遊びはしなくなったが、中学、高校、大学と進んでも、ダンスへのあこがれは消えなかった。あいにくと私は学校では常に地味なグループにいる生徒で、校内でアイドルのダンスを真似て踊るようなグループには入っていなかった。楽し気に踊る彼女たちを羨ましく思いつつ、さりとて自分には踊る場も機会もない。そうしてダンスは「自分には無理なもの」に変わった。冷えた炭のようなあこがれを心の隅っこに追いやって、当時の私は学業やダンス以外の興味を追いかけていた。
 
状況が変わったきっかけは、就職にともない実家を離れたときだった。ある日私は、一人暮らしのアパートからさほど離れていない場所にダンススタジオがあるのを見つけた。その時、頭のすみにパチっと明かりがともった。隅に追いやり、見えないふりをしていたダンスへのあこがれだった。
やってみようか、いや無理に決まってる。会社員で日々帰りの遅い自分なんかに習えるわけもない。でも覗いてみるだけなら許されるんじゃないか? レッスンで誰かが踊っているのを眺められるだけでも楽しいかもしれない。そんな軟弱な気持ちから、私はスタジオのドアをおそるおそる押し開いた。
受付の女性は優しくて、何が目的で訪れたのかもハッキリせず、しどろもどろな私に実に丁寧に接してくれた。残念ながらダンスのレッスンは行われていない時間帯だったが、スタジオの中を少し見せてくれた。広いフロアと大きな鏡。ずっとあこがれていたダンススタジオの光景がそこにあった。
いいな、私も踊ってみたいな。でも無理だろうな。
そう思いながら渡されたタイムテーブルを見てみたら、会社で残業が非推奨になっている日に開かれている、夜のレッスンがある。やろうと思えばできる。でも、もしも私がダンスを始めたと聞いたら親が何と言うか……。
そこまで考えてみて、私は自分の思考に「あれ?」となった。就職で実家を離れた身。自分で働いて手にしたお金で暮らす日々。自分で稼いだお金で自分の好きなことをして、一体何が問題だというのだろう。別に反社会的な活動をはじめようとしている訳でもない。ただ「教室に通う」それだけのことに、なぜ親の許可が要るのか。なぜ誰かに遠慮することがあるのか。
 
ドアがするりと開いた瞬間だった。そこには想像していたような抵抗はなかった。鍵がかかっているように見えたドアは、いつの間にか鍵が開いていたのだ。
 
そうして私はダンスの世界に足を踏み入れた。転職をしたり結婚をしたり、子供を産んだり。色々な関係で年単位の中断を挟むこともありつつ、結局今も仕事や育児の傍ら、ダンスの教室に通う生活は続いている。
もしあの時、見つけたダンス教室を「ちょっと見てみるだけでも」と訪れなければ、あの時「もう親の意見を気にする必要もないんだ」と気づかなければ、私はドアの鍵が開いていることにも気づかなかった。いつでも好きなときに自分でそのドアを開けて、向こう側に行けることに気づかないまま過ごしていたのだろう。
 
興味があることは何でもやってみたらいい。そんな風に言う人もいるが、現実はなかなか難しい。使用中だと赤いマークが出るトイレのドアや、シャッターが下りた店先のドアように、触れるまでもなく、鍵がかかっていると分かるドアもたくさんある。けれども「鍵がかかっている」と勝手に思い込んで、ドアノブを回してみることすらしていないドアも、きっとたくさんある。私のケースのように、昔は鍵がかかっていたけれど、いつの間にか鍵が開いているドアもたくさんあるだろう。
ふとした瞬間に気になったドアを、あるいは長年手を触れていなかったドアを、たまにはガチャガチャとゆすってみたらどうだろう? もしかしたら意外にも、新しい世界が目の前に開けるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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