「僕は死にましぇん」で気づいた、今この瞬間を生きる大切さ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：松本 梨江子（ライティング・ゼミ平日コース）
「ひゃっ……！危ない！」
白いワゴン車はキキィー！っと大きな音をたて、私の体の50cmほど手前で急停車した。
今後の事をボーッと考えながら、横断歩道を歩いていた時だった。
見通しの良い交差点、青信号で横断歩道を渡っている途中、猛スピードで右折してきた車に白昼堂々と私は轢かれかけたのだ。
車が目の前まで迫ってきているのに、両足が硬直してしまい、私はその場から一歩も動けなかった。
今思えば走ってその場からすぐに逃げるべきだとわかるのだが、あの時の私はその場で仁王立ちし、両手をグッと前に伸ばして、白いワゴン車の運転手に向かって「止まってー！」と言わんばかりに立ちはだかったのだ。
まるであの有名ドラマの名シーン、「僕は死にましぇーん！」のようだった。
幸いなことに白いワゴン車の運転手も私の存在に気づき、私の目の前スレスレで止まった。
まさに間一髪。
まっすぐ伸ばした私の指先はワゴン車のボンネットに少し触れたが、事故に至らずに済んだ。
この時はじめて、人間は予想だにしない出来事が目の前で起こると、体が硬直し咄嗟の正しい判断ができないのだとわかった。
しばらく心臓のバクバクが止まらなかったし、頭が真っ白になるとはこういうことなんだ、と身を以て体験した。
そして「もしも、あの時あの車に轢かれでもしていたら、入院するほどのひどい事故に遭っていたか、最悪死んでいたかもしれない……」という恐怖心に襲われたのだ。
かすり傷ひとつなく済んだ奇跡に感謝したのと同時に、今この瞬間を生きることができている命のありがたさを心の底から実感した。
当たり前だが、生きていればいつ死んでもおかしくない。
それが自然の摂理。
日々生きているということは、日々死に向かっているとも言える。
これを書いている瞬間だって、隕石が落ちてきて一瞬で灰になってしまう可能性だってゼロではない。
明日が来るなんて、神様も仏様も保証してない。
それなのに、私たち人間は当然のように「また明日はある」と思っている。
明日なんてないかもしれないのに。
私はあの出来事をきっかけに、今をきちんと生きている人ってどのくらいいるのだろうと、ふとした時に考えることが多くなった。
肉体ではなく『心』のことだ。
心が今をしっかり生きていなければ、もし突然死を迎えることになった時、今を生きてこなかった自分の生き方に後悔するのではないか、と。
生きていれば誰しも、「あの時、ああしてればよかった……」と過去に執着する。
またある時には、「この先一体どうなるんだろう……」と不安や恐怖心に苛まれ未来を憂うこともある。
このとき、その人の心は『今この瞬間』を生きている、と言えないのではないだろうか。
過去に執着している瞬間、その人の心は過去にある。
未来を憂いている瞬間、その人の心はまだ起こりもしていない未来に囚われている。
この現実世界は楽しいこともたくさんあるけど、辛く苦しく残酷なことも多い。
自分もそうだし、周りの人間を見ていても思うが、今を生きているように見えても、実際は今を生きていない人の方が多いのではないか？と感じる。
現実から目を背けたり、ネガティブ思考の反芻が止まらなかったり。
意識が今この瞬間に向いておらずフワフワと浮遊し、心ここに在らずという状態の人は多いのではないだろうか、と。
私自身も辛く苦しい現実に「もういっそのこと死んでしまいたい」と思ったことは過去に何度もあったし、自暴自棄になっていた時期もある。
しかし、冒頭で書いたように自動車に轢かれかけたことで、今までぼんやりとしか考えていなかった「死」に対する恐怖に初めて直面し、全身でそれを体感した。
この世に絶望し、生きることに嫌気が差すことも度々あるが、死ぬのは怖いということを身にしみて感じた。
そして、今この瞬間をしっかり生きることの大切さに気づいた。
あの時の私は、まだ起こりえぬ未来に心が囚われていた。
ボーッとしながら体だけが前を向いて歩ていおり、体から心が半分ほど抜け出してフワフワした状態だったように思う。
もちろん車の運転手も悪いと思うけど、自分自身の意識がしっかりと「今」にフォーカスしていたら、仁王立ちして両手を前に伸ばす以外にもっと適切な判断ができたのではないだろうか。
生きている限り、いつかは死ぬ。
そのいつかは、もしかしたら数十年後かもしれないし、数年後かもしれないし、数分後かもしれない。
だからこそ、今あるこの瞬間に、体と心を一体化して目の前の現実をしっかり感じ取り、今ある命を最大限に活かし生きなければいけないと考えるようになった。
今この瞬間、自分の目の前に広がっている現実世界をしっかり直視しつつ、今をしっかり生きる。
「いつ死んでも悔いなし」と言える人生を歩めるよう、しっかり今にフォーカスして生きていこうと思う。
＊＊＊
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