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週末ジェットコースターGO


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木かおる(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ああ、最悪だ……。
いや、でもある意味良かったのか……?
いや、でもでもやっぱりちょっとこれは最悪……。
 
土曜夜の風呂あがり、私はテンパっていた。
 
遡ることその日の朝。
 
某幼児講座、トラやウサギキャラが歌って踊るコンサートの前から3列目に当選し、
1か月以上前からずっとずっと楽しみにしていた長男5歳、次男2歳。
 
みんなでスマホのGoogleマップをのぞき込み、会場の場所を見て、
なんだ、思ってたより近くない?この道ほぼ1本じゃない?
駅までの距離とか乗り換え考えると、
電車で行くのと自転車で行くのあんまり変わんないんじゃない?
 
ノリで3人乗り電動自転車往復30km。
 
コンサートは期待を裏切らず、お話も演出も歌もダンスもとっても素晴らしくて、
5歳はもちろん2歳もかぶりつき、終始ノリノリのまま終演。
 
帰路、足ががくがくになって、それでも皆楽しくて、
今日はもうファミレスだ~乾杯だ~と一杯。
さあ帰ってきたお風呂直行だ、おれ先にひとりで入る~と、超速で入り終えた長男、
ちょっとはやすぎね?ちゃんと洗ったか?と笑って身体を拭きながら、ふと、気づいた。
 
なんか、湿疹、出てね?
 
楽しかった気持ちは一転、一気に血の気が引いた。
 
そういえば半月くらい前から長男が通う保育園で水ぼうそうの子が何人も出ていた。
仲の良い友達もかかっていて、お子さんをよく観察していてくださいね、
と担任からも言われていたのだ。
 
え、私今気づいたけど、ぶつぶつ前からあったっけ?ときくと、
ちょっと前からあって、あれ、これみずぼうそうか?って思ってたけど、
言っちゃったらコンサート行けなくなるんじゃないか思って言えなかった、
と言われてしまった。
 
マジかー言ってくれよ~
でもそんなに楽しみにしてたんだね……。
その気持ちを思うと責められないな……。
あーなんで気づかなかったんだ私。
毎日お風呂一緒に入っていたはずなのに。
一体こどものどこを見ていたんだろう。
自責の念にかられた。
 
コンサートはニューノーマル形式で間隔を空けた席配置だったし、
終始マスクで、人に触れていないから、
誰かにうつしたということはないと思うけれど、万が一、を考え身の毛がよだった。
 
そして次に、明日のことを思い出していた。
明日は、超人気某鬼退治映画を、友人と観に行く約束をしていたのだ。
もうチケットも買っている。
友人の夫さんが、子どもをみていてくれると言ってくれていたのに。
 
一瞬の思考停止。
 
そしていわゆる天使と悪魔のささやきあいが繰り広げられた。
 
これ、さっきの長男パターンで、
行ったあと気づいたってことにしてもわかんないんじゃなかろうか。
幸いぱっと見わかるような顔や腕に湿疹はない。さあどうする、どうする。
 
ってオイ。
 
自分さん、1秒でNGジャッジ。
 
さすがに、友人らにうつすわけにはいかない。
家で長時間一緒に遊んだら確実にうつるだろう。
そもそもまだ病院に行っていないから診断ついてないけど、これは限りなくクロだ。
 
本当に申し訳ないと断りの連絡を入れた。
友人は、気にしなくていいよと言ってくれたけれど、心苦しかった。
何より私が観に行きたかったから、すごく悲しかった。
こどもも、彼女の家に行くことを喜んでいたので、
一気に、コンサートで楽しかった気持ちが削がれてしまった。
 
そして考えは、週明けからの仕事に及んだ。
きけば、園の友達は1か月近く休んだという。
 
もしそうなったら厳しいな……。
近くの病児保育は、水ぼうそうは受け入れてくれない。夫と交代して休んだり、
半休や看護休暇を駆使してなんとかやりくりするしかないか。
 
いや、でも、うーん……。来週は……。
コロナ禍を理由にすべての行事がなくなった保育園で、
ずっと提案と懇願をし続けてやっとのことで実現した参観日なんだよ。
しかも夫が観に行けることになって長男も楽しみにしていた日だよ。
あーこれはまだ長男には言えない。
 
いや、でもいまわからないことを考えすぎてもしょうがない。
診断ついて回復までにどれくらいの日数が必要かわかったら考えよう。
 
そうだ、まずは今できることをしよう。
 
風呂あがりから逡巡30分。
気を取り直して子どもらを寝かしつけ、
上司に、週明けの在宅勤務with幼児の許可をもらった。
 
月曜。テレビやすごろくや雑誌や工作なんやかやを駆使して、
1日をなんとか終えてやっと病院へ。
 
病院へ行く道すがら、あー今日はなんとかなったけど、
これを1か月近く続けるには、
近くにいるのに一緒に遊べないお互いの精神がきついな。
コロナ禍緊急事態宣言下の再来だな。
やはりちょいちょい休みを挟んでいこう、私にとっては仕事より心が大事だなと、
それなりに心を決めて診察に臨んだ。
 
「発疹が体幹や足に出ていて、園でも流行っているので、
おそらく水ぼうそうだと思うんです」と私。
 
かかりつけの医師は長男のシャツをめくってひとこと。
 
「おお、きれいなかさぶたになっていますね!水ぼうそうですが、治ってますね」
 
えっ!
 
「これはしょうがないですよ。お母さん、気づかなくても誰も悪くないですよ。
最近は予防接種のおかげで、ごく軽くかかって、知らないうちに治っていることも多くて、私たちも判断に困ることがあるんです」
 
ああ、ありがとうございます先生、私の不安を見透かしてくれていた。
 
気づかぬうちに誰かにうつしてしまったんじゃないか。
発症に気づかなかった、親としての私の自責。
それを、「誰も悪くない」と言ってくれて、救われた気がした。
 
神様からの手紙みたいな治癒証明書を、帰り際に園に提出した。
 
一番に思ったのは、ああ、これで参観日行ける!ということ。
二番に思ったのは、日曜映画行けたかもな……。ということ。
三番に思ったのは、仕事の調整まわりで皆の心が荒れなさそうでよかった、ということ。
 
これがまるごと今の私の優先順位なのかもしれないなぁ、
自分の傾向を知る機会みたいになったなぁ、と、実感していた。
 
こうして、週末ジェットコースター並みの緩急と速度で私を揺さぶった騒動は、
考えられる最良の形で一件落着したのだった。
 
水ぼうそうの潜伏期間は約2週間といわれている。
 
これでもし次男にうつっていたとしても、
自分の傾向を認識できた私は、ジェットコースターじゃなく、
園内をめぐるSLアトラクションくらいは、どっしり構えて判断できるかもしれないな。
 
急転直下の出来事にも、地に足着けて、未確定なことにふりまわされすぎずに、
大事にしたいことを大事にしていこう、
ひとまずほっとした気持ちで、そんなことをぼんやり考えていた。
 
***
 
 
 
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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