メディアグランプリ

奇跡を起こすデトックス


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記事:霜丘麻依(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
年を取ると身体にいろいろなものをためがちになってしまい、いろいろなデトックス方法、つまり毒出しを試している。
脂肪はもとより、重金属とか、化学物質とか。現代人の身体は気をつけていてもすぐに毒にまみれる。
 
若いうちは代謝がよく、少しくらいいらないものが入ってきても自分の力で外に出すことができる。
しかし運動不足の中年はそうはいかない。
 
今までいろいろな毒出しをためしてきている。家族には言えない高価なものからお手軽なもの、手間暇のかかる女子力の高めのもの。オイルマッサージ、ハーブやスパイス、酵素、温泉。漢方やアロマ。アーシングサンダル。
最近はオンライン会議などの合間にできる足裏マッサージが気に入っている。
 
しかしデトックスおたくのわたしが一番にお勧めしたいのは実は、身体の毒出し以上にスッキリする心の毒出し方法だ。
スッキリするだけでなく、ときどき奇跡が起きたりする。
それは、人に話を聴いてもらうことだ。
 
ある時運営しているトークデトックスグループにきた女性が、職場のモヤモヤを語ってくれた。
 
「Aさんっていう人が、本人は意地悪のつもりはないんでしょうけど、
チクチクチクチク、言わなくていいことをずっと言ってくるんです……」
最初は言いよどみながら、彼女は言葉を選んでゆっくりと話していた。
Aさんが、ご本人はじめ職場のいろいろな人にしてくる言動。
それによって職場の雰囲気は沈み、余計なフォローが発生して業務にも支障が出ること。
若いバイトの子が、涙目で上司に「Aさんと席を離してほしい」と訴えていたこと。
 
話してくれる彼女は、なるたけ客観的に、落ち着いて話そうとしているようだった。
きっと、周囲には公平にありたいと思っているのだ。悪口なんて言いたくないし、言いなれてもいないのだろう。
 
トークデトックスグループにはグランドルールがある。
アドバイスや自分の意見は、本人が明確に求めてこない限りはしない。
最後まで話を聴く。
この部屋のこの時間の中で聴いたことは、それ以外の場所では話さない。
みんなが了解済みのこのルールで守られた空間で、彼女の話すスピードは徐々に速くなり、表情は豊かになっていった。
 
一通り話の区切りが来た時に、おそらく本人を除いたその場の全員が思っていたことを、わたしは言うことにした。
「Aさんのことが嫌いっていう気持ちが、よく伝わりました」
話していた彼女はびっくりしたように目を見開いた。
「ほんとうだ。わたし、Aさんのこと、とても嫌いです……」
 
彼女がたっぷり語っていたのはAさんと周囲の状況や出来事で、自分の気持ちではなかった。
ここはかなり重要なポイントだ。
心にたまっていく毒は、なかなか輪郭が見えない。
彼女は自分の気持ちを理解した後、何度か確かめるようにつぶやいた。
「そうか、Aさんのこと嫌いだったんだ……」
その表情は少し放心したようでもあった。
しかしグループは次の人の話題に移り、彼女も再び落ち着いて人の話にじっくり耳を傾けていた。
 
グループでも、個別のカウンセリングでもこのくらいのことは日常的に起こる。
頭で考えるよりも、感じていることをはっきりさせるほうが毒出しになる。
訓練された聴き手は、話し手が感じていることが言葉にできるよう働きかけることもあるし、今回のように代わりに言葉にすることもある。
足裏のツボを押すときもそうだが、毒がたまっている場所をしっかり特定して刺激するとより気持ちいい。
あまりにも放置されて、毒がたまりすぎていると、その刺激は痛みをともなう。
大人でも取り乱して、涙涙になることもある。
でも、不思議とそのあとはすっきりとして、心も身体も軽くなるのだ。
痛みを我慢するほどいいというものでもないので注意してほしい。むしろ気持ちよさを優先するほうがお勧めだ。
彼女はとても晴れ晴れした顔つきで帰っていった。
 
人に話して心を軽くしようという場合、残念ながら相手は誰でもいいわけではない。
少なくとも、最後まで話させてくれる安心で安全な相手である必要がある。
お互いに、アドバイスなし・意見なしで話を聴きあえる相手が見つかったあなたは幸運だ。
ずっと続けて、心を軽くしておくと、さらにいいことが起こるのだ。
 
後日彼女はまたきてくれて、興奮したように教えてくれた。
「なんと、Aさんが異動でいなくなったんです! 心がスッキリするとほんとに奇跡って起こるんですね!!」
これを理屈で説明するのはむずかしい。
しかし小さな奇跡は、誰かに自分の気持ちを話して、スッキリした後で起こる確率が格段に高まる。
小さな奇跡を重ねていくと、そのうち大きな奇跡も起こせる。
この習慣を続けている人は誰もが知っていることでもある。
身体の毒も、心の毒も、たまっている自覚のある方はぜひ、スッキリと出すことにトライしてほしい。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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