メディアグランプリ

自分の物語の編集者になるということ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三浦加織(ライティングゼミ日曜コース)
 
 
もうすぐ年の瀬がやって来る。私にとっては1年で一番嫌な季節だ。
というのも、毎年テレビ番組や周りの人との会話で、「今年はどんな年だったか?」と、振り返りのコメントが飛び交うからだ。私はそういう会話には乗り気にはなれなかった。
なぜなら、もうそんな年の瀬を51回も繰り返しているにもかかわらず、毎年毎年「果たして今年は、何かを成し遂げたり、充実して出来たことなどあったのだろうか。いや、ない…」と、気分が落ち込んでしまうからだった。
 
そんなある日、「自分の物語を変えることで人生は変わる」というTEDの動画を観た。
他の人がシェアしていた記事でたまたま観たのだが、最初は何を言っているのだろうと、意味がわからなかった。
しかし、内容に引き込まれて最後まで観てしまった後には、「これは私が直視しなければならない話だ」と思ったのだった。
 
講演していたのは、心理セラピストでコラムニストのロリ・ゴットリーブという人だ。
「人生を変えるには、自分に言い聞かせている物語から自由になることだ。そのためには、自分が自分の物語の良き編集者になり、別の視点から語れるようになることだ。」
そして、
「人は自分の見たいと思ったことはよく見るのに、自分自身の見たくないものからは目をそらしてしまう。それを直視し、変わろうとすることで初めて、ブレイクスルーが起こり、自分の人生を幸せなものにできるようになる」と彼女は言っていた
 
このような自己啓発系の話は今までも何回か聴いてきた。
だから今回も最初こそは、「はいはい、自分が変わろうと思わなければ何も始まらない、だよね? 頭ではよくわかっていますよ。でもなかなか出来ないから困っているんだよね…」と半ば冷ややかに聴いていた。
しかしながら途中から、「そんな風に思うこともまた、自分が見たくないことから目をそらしてしまうことなのかもしれない。だったら少しだけ目をそらさずに聴いてみようか…」と、半身の姿勢でしばらく聴いていた。
 
彼女は言っていた。
「私は変わりたい、と誰もが言うが、本音では他の人物に、変わって欲しい、と願っているのではないか。それはなぜなのかというと、人は変化が怖いから。
今までが不快でみじめな過去であっても、それがこれからどう進むか分かっていると、人は安心する。だが、新しい章を書くためは、真っ白なページを見つめることになる、それが怖いのだ。
しかし、自分を知るためには、自分にずっと言い聞かせてきた物語を捨て、改訂していくことが必要だ。自分自身が自分の物語の良い編集者になることが必要だ」と。
 
これはどういうことなのか。
まだよくわからなかったので、自分に置き換えてみて、「自分に言い聞かせてきたけれど、良い結果になっていない物語」を振り返ってみることにした。
 
例えば、ここ最近のコロナ禍でのリモートワークでのことだ。
これは良い結果になっていない物語として、自分自身を振り返ることができる。それはこのようなことだ。
家にいると仕事が思うように捗らず、今日はイマイチ進まなかったなあ、ということがままある。
それを、家の回線状態が良くないからだ、子どもが早く帰宅したせいで集中できなかったからだ、などと忌々しく思い、「あ~あ、今日もイマイチパッとしなかったなあ」とモヤモヤしたまま寝床に着くことが多かった。
確かにそれは、「家にいるとイマイチ仕事の進みが良くないもの」と自分に言い聞かせ、「やっぱりパッとしなかった」といういつもの結果を導き出し、ネガティブな気分で床に就くルーティーンになっていたかもしれない。
なるほど。この物語を捨て、改訂してみる必要がありそうだ。
 
それでは、彼女が言うとおり、この物語を他人の目「良き編集者の視点」から改訂すると、このようにすれば良いのだろうか?
「リモートが捗らないのは家だからなのかな、それならば回線環境を整えたらどう? Wi-Fiのルーターを新しいものにしてみようか。それと、子どもの帰宅時間までに仕事を終わらせられるよう、午前中に集中してみたら? そうしたらきっと上手くいくよね」と。
ふむふむ、単純なことだが、他人の視点を織り込むようにして、自分に変化するようアドバイスしていくことかもしれない。
 
そしてもう一つ、彼女はこうも言っていた。
「人は落ち込むと、自分の視野を狭めてしまう。すごく狭いレンズを通して、歪められた物語を作ってしまい、つい悪い方に考えてしまう。
そして、こんな私は可哀そう、と自分の不幸な状態に酔って、悲劇のヒロインになってしまっていることさえある」と。
 
確かに思い当たる節はある。
家にいると仕事が捗らないことに対して、せっかく同僚がくれたアドバイスさえも、こんな風に拒んでしまっていた。
「そんなこと言ったってサクサク進められないよ。だって集中したいのにネットが遅くてイライラするんだもの」「うーん、無理だよ。だって子どもに、仕事が捗らないから早く帰って来るな、なんて言えないじゃない?」などと、提案をはなから受け入れず、可哀そうな自分を変えようとしていなかったかもしれない。
 
改めて他人の視点から見ると、「どうせ出来ない」と最初から歪めた物語を作り、「この物語を変えよう」、ということ自体を拒否してしまっているのだった。
それは、「変わるのが面倒くさくて、いつも通りブツブツ文句を言っている方がラクだったから」、なのだ。
変化することはやはり、彼女が言うとおり、怖いことなのだ。
みじめな自分の物語を改訂することよりも、いつも自分を犠牲者に仕立て、悲劇のヒロインとして書き上げる方が、予定調和でラクなのだった。
 
最後に彼女はこう締めくくっていた。
「もし、今度、何かで悩んだら、みな、いつか死ぬんだということを思い出してください。そして、編集するための道具を取り出して、自分の物語がどんなふうになって欲しいのかを考えてみてください。
そして、不幸な物語を書くかわりに、生きているあいだに、幸せな物語を形づくってはどうでしょうか」と。
 
最初は斜に構えて彼女の講演を聴いていたが、聴き終わる頃には、私の物語は始めから、自分はしがらみの中にいる悲劇のヒロインだ、と自ら書き綴って来たのだなあ、とわかった気がした。
そんなわかりきった惨めな物語に気づいたら、良き編集者になり素敵なヒロインに改訂して、これからの幸せな現実を形作っていくことなのだろうと。
 
では手始めに。
今から自分の物語を、「今年は色んなことをやったなあ、充実した良い1年だった」と年末には振り返れるよう、素敵なヒロインのストーリーに編集し直して行こうと思う。
思い起こせば良いこともあったじゃないか。充実して取り組んだこともあったじゃないか。
それに残り1か月半もあるのだ。まだまだ自分のストーリーは書き換えられるに違いない。
 
こんな風に、私はこれから自分の物語の良き編集者であろうと思う。
そしてゆくゆくは、自分の人生の物語は傑作だった、と死ぬ時に思えるようなストーリーを書けるようになろうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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