メディアグランプリ

膵臓研究者だった私が、「君の膵臓を食べたい」という青春小説を読んで、青春を取り戻した件について


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:タマひろし(リーディング・ライティング講座)
 
 
私たちは、いつか死ぬ。
 
これは、現在・過去・未来……遠い未来はわからないが、それでも私たち人間は、いつか死ぬ。それがこの世のルールだ。
 
人生というのは、与えられた制限時間は示されないまま、与えられた環境や条件の中で、どのように過ごしても構わないゲームのようなもの。
様々な技術や知識、経験を獲得し、自身を成長させて、建設的な人生を生きるのも、なるべく楽に楽しく生きるのも、それぞれの自由。
 
若い頃の私は、そのように考えていた。
 
青春というのを、ある青少年期の輝かしい時代に限って指していうのであれば、私はまさに青春時代を無駄に費やしていたと思う。湘南の光り輝く海原に沿って走る江ノ島電鉄沿いに、私の母校はあった。部活に、恋に、学校行事に。エネルギーをほとばしらせていた。何かにつれて、一生懸命に情熱を燃やしていた(ように見えた)。
 
一方、私はどこか冷めていた。彼らが学校行事にエネルギーと時間とを費やすのを尻目に、私は、毎日のようにゲームセンターに通い、惰性でなんとなく毎日を過ごしていた。
ちょっとスカしたところのある、嫌なやつだったと思う。
 
あれから30年近く経った今、いわゆる「黒歴史」である高校時代の記憶はほとんどない。自堕落で、享楽的な日々がなんとなく思い出せるだけで、ほとんど何も思い出せない。大学での6年間、大学院での4年間が、鮮やかに思い出せるのは、記憶が新しいからだけではないのだろうと思う。脳が拒否していて思い出せないのではなく、本当に何もなかった3年間だったのだろう。
 
45歳の私には、3人の子供がいる。長女は中学3年生。今年度、高校受験を控えている。来年の春からは、あの高校生になるのだ。
 
昨年の夏、彼女から、私が高校生ってどんな感じだったかと訊ねられたことがあった。
 
私は「あまり思い出せない。それだけ空虚で、自堕落で、何もなかった3年間だった」と答えてしまった。
娘の隣にいた妻が、私をキッと睨んだ。
これだけなら、私の答えは、親として落第点だったのではないかと思う。
 
私は続けて言った。
「だから、あの本を勧めたんだよ」
娘は大きく頷いた。
 
あの本というのは、「君の膵臓をたべたい」だ。
この小説は、書店で平積みされていた。
当時、実写映画化されていたほどに話題になっていたそうだが、私はそのことを知らなかった。
私がこの小説を購入したのを決めたのは、その題名を見た時だった。
大学院で「膵臓」の研究をしてきた私は、膵臓という臓器をひいきにしている。
ホルモンを分泌する内分泌器官であり、消化酵素を出す外分泌器官でもあるという唯一無二の臓器。そんな膵臓というマイナーな臓器を題名にしている小説を読まないわけにはいかない、そう思ったのだった。
 
「君の膵臓を食べたい」は、青春小説だった。
友人や恋人などの関わり合いを必要とせず、人間関係を自己完結する主人公と、よく笑い、元気で表情豊かな余命1年の少女との出会いから始まって、物語は進んでいく。
 
余命1年と知らされた少女と、それを知らされた主人公とが、残された日々を命をほとばしらせて、彼らが青春時代を過ごしているのを見ていると、胸が熱くなってくる。
 
私たちは、いつか死ぬ。
高校を卒業してからこれまで、自分よりも若い知人や友人の通夜・告別式に、幾度も出席してきた。
だから、自分自身が亡くなるというのが、決して遠い先ではないかもしれないということを、今の自分は昔の自分よりも理解している。
 
タイムマシンがあるのであれば、この小説をあの頃の自分に届けたい。
小説の主人公や少女ほどでなくても、もう少し毎日を大切に生きられたかもしれない。命を燃やして、「生きる」ことができたのかもしれない。
 
高校時代の自分には戻ることができないが、私の娘はこれから高校生になる。
高校生になる前に、彼女にこの本を勧めることができて、本当に良かったと思う。
この本を読んだ感想については教えてくれなかったが、その後、少し経って、彼女は自分の将来の夢について、私たちに語ってくれた。前よりも毎日を大切に生きるようになっているように思う。
 
毎日を大切に生きるようになったのは、娘だけではない。
 
私もそうだ。
残りの余命について宣言を受けたわけではないが、私も以前よりも毎日を大切に生きるようになったように思う。
小説の影響かもしれないし、娘が毎日を以前よりもしっかり生きるようになってきたためかもしれない。
 
これまでしていなかったことにもチャレンジするようになっている。
今年の8月には天狼院書店のライティング・ゼミを受け、11月からはリーディング&ライティング講座を受講している。
娘の通う中学校のPTA役員になり、読書会に参加するようになり、地域の活動にも加わり、全国的な研究会では大会長も務めるにまでなった。
 
詩人サミュエル・ウルマンによる「青春」という詩に、
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ」
という一節が出てくる。
 
私は、今ようやく、私は青春を感じ、青春を生きているのかもしれないと思う。
 
これから青春時代を過ごす若い方から、青春時代を懐かしむ方。
そして、私のように「いわゆる青春時代」に青春を送れなかったと思う方に、ぜひ読んでほしい。
 
「君の膵臓を食べたい」は、青春小説だ。
きっと、あなたの人生に青春をもたらすだろう。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の「リーディング&ライティング講座」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミ、もしくはリーディング&ライティング講座にご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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