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働きやすいさは仕事の見せ方で決まる

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:わきやま(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「Yさんってタダなんですよね。まさかお金かかってないですよね」
 
顧客のMさんの発した一言で、その場は一瞬で凍りついた。
Mさんが自社のプロジェクト・リーダーにYくんについての不満を漏らしているところだった。
 
顧客からするとYくんは全く役に立っているように見えない。
お金がかかっているのなら、直ちにメンバーから外してほしい。
そういった内容の事をリーダーに伝えていた。
 
「はい。タダです」
 
リーダーも苦笑いしながら、そう答えていた。
 
このあまりに残酷なやりとりを聞いて、私は思わず周囲を見回してしまった。
幸いなことにYくんはいなかった。
 
Yくんは2018年の10月に入社してきた新人である。
我々の会社はI Tコンサルティングの会社である。
I Tのコンサルティング業務からシステム構築、そして保守・運用まで全てをやる。
そのためにシステム構築に関する深い技術的な知識が必要となる。
 
その知識を習得するために3ヶ月間の研修がある。
その期間でプログラミングやシステム構築の基礎を学習する。
 
プログラミングやシステム構築の基礎の学習には、数学的な考え方や知識が必要になる。
Yくんは高校3年生以降、数式がある書籍を開いたことがない。
6年以上、数学的な思考から離れていた。
そのために研修での知識の習得にも時間がかかり、研修を卒業するのに5ヶ月もかかってしまった。
 
システム構築のプロジェクトに配属された後も業務の理解にかなり苦労していた。
研修で学習した知識に関しても未習得な部分もあったために、自分のタスク内容の理解が不完全なことが多かった。
そのために、業務指示者が求める要望になかなか答えることができなかった。
 
そんな状況が続いたために、だんだん周囲のYくんへの接し方がきつくなっていった。
イライラしている様子で話す。
業務の質問されても面倒くさそうに強い口調で答える。
Yくんに対してそんな態度を周囲のメンバーがするようになった。
 
「お前、マジでいいかげんにしろよ」
「お前如きがなんで上のレビューなしで顧客に成果物見せてんだ」
「文学部出身のやつってみんなこんな感じなの」
 
聞いてるこちらも不愉快になる暴言を言う者もいた。
 
すっかり「できない奴」扱いである。
 
我々は客先に常駐してシステム構築をしている。
だから、社内メンバーのYくんに接する様子を顧客はみんな見ていた。
 
その結果、だんだん顧客もYくんを「できない奴」扱いするようになっていった。
ある案件でYくんが担当になると、あからさまに不快感を示した。
Yくんが提案などしてもまともに取り合ってくれない。
質問に対してもイライラしながら答える感じだ。
社内メンバーのYくんの扱い方を真似しているようだった。
 
そんな中、顧客から言われたのが、冒頭の言葉だった。
 
「Yさんってタダなんですよね。まさかお金かかってないですよね」
 
その場にはYくんはいなかった。
しかし、Yくんの耳に入るのも時間の問題だった。
Yくんの同期からYくんの耳に入り、Yくんのモチベーションは急降下して墜落してしまった。
 
Mさんのタダ発言から1ヶ月後、Yくんからプロジェクト転属願いが申請された。
そして、その1ヶ月後、彼は別のプロジェクトに移っていった。
 
Yくんは決して役に立っていないわけではなかった。
Yくんはプロジェクトのメンバーが作成したプログラムをユーザが使うシステムに反映する仕事をしっかりとこなしていた。
この仕事は反映されたプログラムが不具合を起こさないかの監視もしなければならない。
深夜に不具合が発生した場合は、休日に関係なく、不具合原因を作ったプログラマーを連れて自分も客先に駆けつけなければならない。
誰もやりたがらない仕事である。
Yくんは嫌がる様子も見せずに着実にこなしてくれていた。
 
他にも客先で使っているP Cの管理やメンバーのコロナ手当申請などの雑務も文句も言わずこなしてくれていた。
 
顧客に見えにくい部分でちゃんと活躍しれくれていたのである。
 
社内メンバーの顧客へのYくんの見せ方がひどかったのである。
 
Yくんの業務関係者がYくんを「できない奴」扱いをする。
それを見た周囲のメンバーもYくんを「できない奴」扱いする。
そして、その様子を見た顧客もYくんを「できない奴」扱いする。
 
その結果、Yくんにとって非常に働きにくい環境になっていった。
顧客からの信頼がゼロからではなく、かなりのマイナスからスタートするのである。
働きやすいわけがない。
 
自社メンバーだけでなく、顧客からも「できない奴」扱いされるので、自尊心もどんどんなくなっていく。
その結果、行動や発言に自信やモチベーションがなくなり、周囲が期待する「できない奴」の振る舞いをするようになってしまう。
悪循環である。
 
我々の会社は人材流出に悩んでいる。
毎年150人近い人材が新卒社員として採用される。
しかし、3年後残るのは50人ほどである。
 
多様性を確保するために様々なバックグラウンドを持った人材を採用している。
しかし、最終的に生き残るほとんどがI Tのバックグラウンドを持った人材や理系分野を専門にした人材ばかりである。
文系出身の多くは脱落してしまう。
仲が良かった文系出身の同期もほとんど辞めてしまった。
 
我々の会社は多様な人々が働きやすい環境づくりに取り組んではいるが、外に見えやすい政策ばかりである。
育児休暇を取りやすい環境、フレックスタイム、在宅ワークなど外にはよく見える政策は積極的に導入されていった。
確かに、働きやすい環境になっていると思う。
 
しかし、こういった政策は多様性の確保という点であまり効果を発揮していないように感じる。
 
事実、この政策が採用された後も人材の流出は減ったとは言えない。
しかも、残っているのは、I Tや理系のバックグラウンドを持った人材ばかりである。
 
現場にもメスを入れなければならない。
少なくとも新しい人材と顧客との信頼関係を損なわないように関係を維持させることが大切である。
そのために、顧客に自社の社員がどう見えているのか、を常に監視する必要がある。
可能ならば顧客だけでなく、その社員が他の社員にどう見えるのかも監視してほしい。
 
その社員の見え方で周囲の評価は大きく変わる。
周囲の評価でその社員の働きやすさも大きく異なる。
 
働きやすさの根本は、顧客や自社社員など周囲との信頼関係の維持にあると思う。
新しい人材の言動で壊れてしまったのなら、まだしも見せ方で壊してしまうような事をしてはならない。
 
その後のYくんであるが、幸いなことに移転先のプロジェクトではうまくやっているらしい。
移転先のプロジェクトはファンション業界である。
Yくんは服が大好きである。
毎週、原宿に行って、給料のほとんどを服に費やしてしまうらしい。
服への強い関心をプロジェクトでの仕事のモチベーションに生かして、仕事に粘り強く取り組んでいるらしい。
もともと打たれ強く、真面目な人材なので、着実に成長して活躍できる人材になると信じている。
 
このYくん転属事件は、社内メンバーにも大きなショックを与えた。
これをきっかけにしてチームメンバーの意識が変わる事を強く望む。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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