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勝手に王貞治論。世界のホームラン王は人生の道しるべです。

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:安藤英裕(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
止まらない。
ああ、止まらない。本当に止まらない。
 
あれからもう何十年と経つのに、消えるどころか、ここ数年はますます強くなり、
2021年の元日を迎えても止まることを知らないのだ。
 
何が止まらないのか。私の「王貞治愛が止まらない」がだ。
 
王貞治と言えば、ご存知、あの世界のホームラン王である。
昭和の時代、「ナボナはお菓子のホームラン王です」と言う名文句と共に、
柔らかいスポンジケーキにクリームを挟んだ和洋折衷的なお菓子や
「おせちもいいけどカレーもね」と、
お正月には決まってレトルトカレーの定番・ボンカレーのCMに出ていたあの人である。
そして、80歳を迎え、ソフトバンクホークスの会長を務めるプロ野球界の重鎮である。
 
私の少年時代のスターだった。
 
選手生活は今から40年前に幕を閉じているのだが、
王さんの現役時代は、今も私の脳内で鮮明な輝きを放ち続ける。
20代や30代の人はおそらくほとんど知らないであろう。
それでも会社の宴会で「いいか、現役時代の王さんはなあ……」と
王貞治論を勝手に繰り広げては、若手スタッフから失笑を買うくらいに好きなのだ。
 
「すごいやん! すごいやん! ええのこれもらって?」
「お前、王のファンやったやろ。知り合いからもらったでやるわ」
 
私が王貞治ファンだと自覚したのは、小学4年生の時だった。
その年、王さんは756本目のホームランを放ち、大リーグのハンク・アーロンの世界記録を塗り替えた。巷には記念メダルが出回り、知人から父親へと渡り、私のもとにも届いた。金ピカでずっしりと重く、うやうやしくも木箱に収められていた。
その輝きと重みが王さんの記録の偉大さそのものに思え、勉強机の奥に閉まい、時折出してはじっと見詰めていた。
以来、それまでは「見るだけは退屈だから」と敬遠していた野球中継を王さんの打席だけは見るようになり、所属する少年野球では彼と同じファーストに志願した。
残念ながら隣のセカンドしか守らせてもらえなかったが……。
 
王さんの一本足打法は、実に美しかった。
左足一本だけで立つのに、どっしりと安定している。その安定さを維持するために、王さんの太ももは若い女性の腰ほどの太さもあると聞いたことがあったが、それを信じてしまうほど、片足を上げてピタリと止まった。当時、「フラミンゴ打法」とも呼ばれ、大人気アイドルだったピンク・レディーの歌「サウスポー」歌詞にも登場した。
その打法から打ち返されるボールは、これまた美しい放物線を描いて客席へと運ばれる。
多い年にはシーズン55本。単純計算だと2.5試合に1本は出たことになる。
そして22年の選手生活で通算868本。現在のプロ野球記録では、歴代2位の故・野村克也さんの657本を200以上も上回る絶対的な数字を誇る。
王貞治を語る上で、この記録こそが彼の最大の魅力とされるだろう。
 
しかし、それが私の王貞治愛の止まらない根源ではない。
 
それも魅力の一つであることに間違いはないが、もう一つ大きなことがある。
それを知ったのは、小学生最後の春休みの出来事がきっかけだった。
少年野球チームで隣町の市民球場を訪れた「中日×巨人」のオープン戦。
当時、巨人の主砲は王さんと、今ではすっかり「喝おじさん」と呼ばれる張本勲さんだった。私たちに与えられたのは、市民球場の外野席のチケット。小さな球場とは言え、そこからでは打席に立つ王さんの姿を間近で見ることはできないだろうと諦めていた。
すると、試合前、王さんと張本さんがウォーミングアップに2人でキャッチボールを始めた。最初はベンチの近くで。そのうちキャッチボールをしながら客席のフェンス沿いに移動し始めた。しかも、ゆっくりと。そのまま僕たちの目の前までやってきて、グランドを1周。おかげで私や仲間は、王さんの姿をしっかり目に焼き付けることができたのだ。
 
「王さんたちはね、ファンのために、ああして1周してくれたんだね」
 
球場まで引率してくれた少年野球チームのコーチがそう教えてくれた。
小さな地方の市民球場で、ともすれば面倒くさがる選手もいただろうに、球界の主砲はささやかがらもファンサービスをしてくれたのだ。
この日は、私たち以外の少年野球チームも観戦に訪れていた。どのチームも割高な内野席に座ることができなかっただけに、そんな王さんらの姿に、野球少年たちが沸いたのは言うまでもない。
 
「なんとも律儀」。
 
子供ながらに、この言葉が頭に浮かんだことを記憶している。
以来、一層、ファンとなり、いろいろと調べてみた。
すると、次々と出て来るのだ。似たようなエピソードが。
例えば、どれだけ体調が悪くても試合には極力出場したそうだ。
自分のプレーを見に球場に足を運んでくれたファンをがっかりさせないためにと。
また、王さんはホームランを放った後、ガッツポーズなど喜びを滅多に露わにしない。
これは高校生の時、お兄さんに「打たれた相手のことを考えろ」と叱られ、プロになっても続けていたと言う。
常にファンのことを考え、対戦相手を慮り、子供たちに理想の姿を、そのパフォーマンスと立ち居振る舞いで示してくれたのだ。そうしたことを思い返すと、どうにもこうにも私の中の王貞治愛が収まらず「彼こそが真のスーパースターだ」と心を震わせるのだ。
 
そして、同時にこんな風にも考える。
 
仕事や付き合いで、ちゃんと相手の立場を考えられているだろうか。
家庭では、ちゃんと子供たちのよい手本となっているのだろうか。
道で困っている人を見て見ぬふりをせず、手を差し伸べられているだろうかと……。
 
王さんの現役時代を、つい、自分の日々の言動に照らし合わせているのだ。いつからだろうか、王さんの姿を、私にとっての人としての理想像に近付くための「道しるべ」としていた。特に昨今、「自分だけが良ければいい」そんな風潮を感じる。
私もその考えに流されている一人だ。
そんな時、ふとあの清々しい律儀なスラッガーの姿が頭をよぎるのだ……。
「君は本当にそれでいいのかい?」
「他にもっとできることがあるんじゃないのか?」
そう爽やかにダメな自分を諭そうとしてくれている。
 
だからだろうか、歳を重ねるごとに止まらないのだ。王貞治愛が。
知らず知らずのうちに進むべき道を訪ねている。
 
「世界のホームラン王は、私の人生の道しるべです」
そう言ったって、大半の人からは
「その歳で野球を始めるのですか、ケガのをしないようにご注意を」
などと言われるのが関の山だが、できれば多くの人に知って欲しい。
 
昭和にはプレーで我々を歓喜させ、
その立ち居振る舞いで人生のお手本を見せてくれたホームラン王がいたと言うことを……。***
 
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2021-01-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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