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心のガス欠に陥らないために


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記事:垣尾成利(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
強く決心した。
「もう二度と、メンタル不調に陥らない」
 
そのために、継続していることがある。
それは、毎日たくさん歩くことだ。
仕事の行きと帰りに2時間近く歩いている。
 
2年前の11月から3ヶ月、休職を経験した。
「適応障害」と診断された。
 
適応障害は心の病気のひとつで、車に例えたら、片方のタイヤがぬかるみにハマってしまって、アクセルを踏んでもタイヤが空回りして抜け出せず、更に必死にアクセルを踏み続けているうちにオーバーヒートしたうえにガス欠になったような状態だ。
 
ヤバい! どうしよう、なんとかしないと、と慌てて焦って更にアクセルを強く踏んでも、そう簡単には抜け出せない。
それでも自力で抜け出せる、と思ってアクセルを踏み続けているうちに、エンジンが悲鳴をあげてオーバーヒート、挙げ句の果てにガス欠……
 
こうなってしまうと、走りたくても走れない。
路肩に寄せて止まることもできず、その場で立ち往生だ。
 
一度車から降りて、空回りしている理由は何だろう? どうすればまた走り出せるのだろう? を考えて対策を施し、ガソリンを補給しないことにはぬかるみから脱出することも、改めてエンジンをかけることも不可能だ。
 
2年前、ぬかるみに片方のタイヤを取られたことに気付いたのは、仕事で精神的に負荷がかかった状態がしばらく続き、緊張性の頭痛や集中力の低下、といった予兆を感じた時だった。
体は元気だったが、心が空回りしているのがわかった。
「あれ? なんかおかしいかも…… でもまだまだ頑張れる。いや、頑張らなきゃダメだ、これくらいで潰れるわけにはいかないんだ」と、自分に鞭を打ち、体調の違和感に気付かない振りをしていた。
 
この程度のぬかるみからなら、自力でなんとか抜け出せる。そう思っていたけれど抜け出せず、不調は日に日に増してきて、あっという間に動けなくなってしまった。
 
心のガス欠だった。
抜け出そうと必死にアクセルを踏んでいるうちに、頑張る力が底をついてしまったのだった。
 
幸い、エンジンは悲鳴を上げていたけれど、壊れはしなかった。
まだ動けると思っていたから、もしガソリンがもう少し残っていたら、もうしばらく無理をしてエンジン自体を壊してしまっていたかもしれない。
 
そうなる前にガス欠になったのは、不幸中の幸いだった。
私は、幸いにもエンジンが壊れる前にガス欠になったので、エンジンを冷やし、ガソリンを入れれば、なんとか走り出すことができる状態で済んだのだった。
 
心療内科という修理工場に行ったら、「ゆっくりとエンジンを冷やして、ガソリンを入れるのはそのあとです。とりあえず1ヶ月は動かしてはいけません」と言われ、適応障害の診断書が出されたのだ。
 
しかし、また走り出すには1ヶ月ではどうにもならず、自分がどうなっているのかを考えられるようになるまで1ヶ月近くかかり、ゆっくり走り出せる程度のガソリンを入れるのに3ヶ月かかったのだった。
 
メンタル不調が起こる原因はいろいろあるが、自分自身の内側のこととしては、心と体のバランスが狂ってしまうことに大きな原因があったように思う。
片方のタイヤが空回りしている状態は良くないのだ。
 
心が疲弊してくると、心と体の両輪を動かすだけの、頑張る力が足りなくなってくるので、
とにかく休みたい、動きたくない、と感じるようになり、笑うこと、人に会うこと、話すこと、体を動かすことなど、何かをすることがしんどく感じるようになってきて、とにかく体を休めることばかりを求めるようになる。
 
それでも止まることは許されないと感じて、残された片方のタイヤだけで頑張ろうとしてしまうのだが、人間は心と体の両輪がバランスよく回っていないと、前に進むことができないのだ。
 
心がガス欠になり動けなくなった時、体は元気なのに何もできなかった。
考えることも、笑うことも、自分の気持ちを話すこともできなくて、一日中ソファに転がったまま動かないこともあったし、起きているのか寝ているのかわからないようなときも
あった。
 
一ヶ月を過ぎたころ、心に、少しだけ力が戻ってきているような気がして、ようやく外に出ようと思えるようになってきた。
 
近所の公園にラジオ体操をしに行ったり、一人で外出したり、少しずつ動けるようになってくると、いろいろなことを考えたり、楽しいこと、笑えること、人に会うことなど、できなかったことをやろうと思えるようになっていった。
 
この時、心と体の疲れ具合のバランスを合わせた方が楽なんじゃないか? と感じ、それ以来歩く時間を増やすようになったのだ。
 
これは実際に良いことで、自分でそう感じて行動したことは医者にも褒められた。
体を動かすことが気分転換にもなるし元気を取り戻すことにも繋がり、日に日に枯れ果てた心に力が染み込んでくるような実感があった。
 
復職してからも、精神的に疲れを感じることは多いが、心が疲れた分だけ歩いて体も疲れさせてバランスを取ることを意識するようにしていて、日々落ち着いて安定した精神状態を保つことができている。
 
心と体は繋がっているからこそ、一方だけが疲れてしまうとバランスが崩れてしまう。
実体験を通じて、心の疲れを癒すためには体も同じだけ疲れさせてあげた方がいいんだ、と思えるようになり、日々たくさん歩いている。
 
メンタル不調は心のガス欠だ。心と体の両輪でうまくバランスを取って走っていれば、ガス欠にはなりにくい。
 
ガス欠に陥らないためにも、心が疲れたときほど歩いてみてほしい。
何も考えず、ただ歩く。それだけでいい。
 
歩くことで、心と体の両輪がうまく回り、バランスを取ってくれるから。
 
 
 
 
***

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2021-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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