メディアグランプリ

やさしい魔物たちが教えてくれた思いやりの大切さ


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記事:村人F(リーディング倶楽部)
 
 
やさしい魔物たちが出てくる作品が流行っている。
最近そういうことに気がついた。
 
魔物たちがお姫様を閉じ込めているんだけど、そのお姫様に対してすごくやさしい。
そういうジャンルである。
「魔王城でおやすみ(作:熊之股鍵次)」と「姫様“拷問”の時間です(作:ひらけい、春原ロビンソン)」という2作品を見たおかげで、こういったジャンルが確立したことに気付いた。
 
「魔王城でおやすみ」の姫様は、とにかく眠るのが大好き。
だから牢屋のベッドが硬くてたいそうご不満のご様子。
その状況を解決するため部屋を脱走し、理想の寝具を求めて魔王城を歩き回る。
そんなストーリーである。
 
この作品に出ている魔物たちはすごくやさしい。
まず部屋から脱走しているのに、ちょっと説教するくらいのお咎めしかしない。
決して鍵を絶対に突破されないような環境にしないのだ。
 
そのうえ、姫様の境遇について心配してくれている。
人間界から1人だけ連れ去られるなんてかわいそう、と連れ去った魔物たちみんなが思っているのである。
そういった傾向がこのジャンルの特徴だ。
 
「姫様“拷問”の時間です」もそんな内容だ。
最初の頃はできたてのおでんとか美味しい焼肉とかを目の前で作って、秘密を喋らないと食べさせてあげないよといった、飯テロに近い拷問をしていた。
 
でもだんだん拷問者の態度が変わっていて、目的が秘密を聞き出すことじゃなくて姫様と遊ぶことになってたりする。
しかも姫も姫でその心を汲み取り、ノリノリで秘密を喋ったりする。
そういう意味で、こっちの魔物もメチャクチャやさしい。
 
こういった2作品が今流行っているのである。
「魔王城でおやすみ」はアニメ化されたし、「姫様“拷問”の時間です」もジャンプ+という漫画アプリでトップクラスの人気を誇っているわけだ。
これはもう、このジャンルが市民権を得たと言って問題ないだろう。
 
その一方で、僕の中で次のような思いも生まれた。
魔物のやさしい作品が流行るということは、今の現代人には人間より魔物のほうがやさしいのではという考えがあるのではないかと。
 
というのも、上記2作品に出ている人間サイドの人たちが残念だからである。
 
「魔王城でおやすみ」の勇者アカツキは、お姫様を救う立場の人間なのにアホだし、しかも姫様から嫌われている。
「姫様“拷問”の時間です」も同じような感じで、勇者はもんのすごくブサイクで人気がない。
 
こういう描写があることから、やさしい魔物たちが出てくる作品が流行る背景には、人間に対する不信があるんじゃないかという思いが生まれてきたわけである。
 
確かに現代は昔より人間に対する不信感が生まれやすい環境にあると思う。
SNSなんかでは悪口が溢れかえっているし、そうでなくても出世レースやら政治のニュースやら、人間同士の醜いやり取りといったものが大量に目に入る時代である。
 
そんな状況だから、同じ人間よりそういったイザコザがない魔物の方がやさしいんじゃないか。
そういった思いがこのジャンルの流行った理由にあるのではないかと思ったのである。
 
しかし、こういった思いに対して、上記の作品は1つの解決策を示している。
それは、相手を思いやる気持ちである。
 
「魔王城でおやすみ」で姫様に対して魔物がやさしいのは、囚われのお姫様に対する思いやりがあるからだ。
人間界からさらわれてかわいそうとか、1人だと寂しいだろうから少しでも不安を和らげてあげようとか、そういう気持ちを魔物たちが持っているからやさしくしているのである。
 
「姫様“拷問”の時間です」も同じだ。
もはやこの作品における姫様と魔物の関係は友達だ。
なんのために人間と魔物が争っているのかもよくわからない感じである。
しまいには姫様を救い出す勇者と魔王が同じ漫画の話で意気投合しだすレベルだ。
こういう種族間を超えて友情が生まれるということを知っているから、囚われの姫に対してやさしくできるのだ。
 
となると、この思いやりの心は当然同じ人間同士でも適用できるはずだ。
だからSNS等で人が信じられなくなった今こそ、思いやりの心を思い出して世の中を見てみてはいかがですかと、この2作品は言っているのである。
そして、そのメッセージが共感を生んだからこそ、両作品とも大人気になっているんだと思う。
 
この作品たちが教えてくれるのは、思いやる心があれば魔物と囚われのお姫様だって友達になれるんだっていうこと。
このやさしい魔物たちが教えてくれたことを胸に、僕も人を思いやっていきたい。
 
 
 
 
本記事で紹介した作品
1. 魔王城でおやすみ
作者:熊之股鍵次
出版社:小学館
 
2. 姫様“拷問”の時間です
作者:ひらけい、春原ロビンソン
出版社:集英社
***
 
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2021-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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