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積ん読本のゆくえ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:沖ノかもめ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
昨年、初めて天狼院書店に足を運びました。ライティングゼミについて話を聞くためです。ウェブ上でもゼミの説明は読めますが、まずは実店舗がどんな雰囲気なのか、見てみたいというのもありました。
 
大型書店に行きつけていた私は、小さな本屋というものは大型店の縮小版だろうと想像していました。大型書店では、何よりもまず本の多さに圧倒されるものです。
 
ところが、天狼院書店は違いました。
 
本の数よりも、書棚に置かれた一冊一冊が、直に私に迫ってくるような圧倒感にとらわれたのです。
まるで自分がドッジボールの的にされているかのような気分です。
それならば、ボールに当てられて不本意に場外へ出されるよりも、投げつけられたボールは受けとめておきたいと思いました。
 
私はしばらく店内をうろうろしてから、一冊の文庫本を手に取りました。
ミヒャエル・エンデの『モモ』です。人間に時間を取り戻してくれた女の子の物語です。
 
私は、本の裏に書かれているあらすじを読んで、自分を救ってくれる本かもしれないと思いました。
時間に追われるように働いてきた自分の職場に対する、復讐のような気持ちがあったのかもしれません。もしくは、時間がないことを理由に、やりたいことを放置してきた過去への思いをなんとかしたかったのかもしれません。いずれにせよ、向かってきたドッジボールをしっかり受け止めた感覚がありました。
 
天狼院書店から帰ってきたその日以降、私は毎日少しずつ『モモ』を読んでいきました。
そして、読了した時に、この本の置き場所がないことに気がついたのです。
 
うちには百冊近い本があります。でもそのほとんどが読み終わらないまま、床の上に積み上げられたり、押し入れにしまい込んだりされています。つまり、積ん読状態なのです。
 
本の内容が悪いとか、そういうことではありません。時間がないからと言い訳をし、遅々として読書が進まないうちに、自分の興味が他の本へと移ってしまった結果です。それで、めずらしく最後まで読み終えた『モモ』を置く場所がないのです。
 
もちろん、『モモ』が素晴らしい作品だから最後まで読んだことに間違いはないのですが、うちで積ん読になっている他の本もよい本であると思っています。
私は、『モモ』を買おうと決めた時に感じていた、職場に対するいじわるな気持ちと、自分に対するなぐさめの気持ちが和らいだように思い、この本のために積ん読本たちとは違う置き場所を確保しました。
 
さて、そうして次に何を読もうかと思った時に、私がうちの積ん読本に手をつけたかといえば、そうはなりませんでした。なんとなく、また天狼院書店に行って本を探してみたくなったのです。
 
再びの天狼院書店。店内の心地の良い雰囲気とはうらはらに、こちらに迫り寄ってくるかのごとき本の数々。私は、本たちの無言の自己主張に圧倒されながらも、気持ちのやりとりができた2冊を買うことにしました。
 
そして、無事に読み終えられた本たちは、『モモ』と同じく読了した本の置き場へと移動していきました。
 
その後、今までにない変化が私に起こりました。
長らく積み上げたままになっている我が家の積ん読本に興味がわいたのです。
 
天狼院書店で買って読んで面白かった本に似たようなものがあるかなと、
背表紙をぼんやり見ていた時でした。
 
私は、床の上に積み上げられた読みかけの本のうち、2冊ほどを読み直すことに決めました。そして押し入れにも本があることを思い出し、そこからも2冊取り出しました。これら4冊を読了したことは言うまでもありません。
時間がないから読破できなかった、というのは過去の話になっていきました。
 
なぜ、長年の積ん読症が改善しつつあるのでしょうか?
 
自分の旬の気持ちに寄り添った本を選んだからでしょうか? でもそれなら過去に積ん読と化した本たちも同じです。
 
コロナの自粛生活で時間ができたからでしょうか? 外出を控えるようになったとはいえ、やるべきことに時間を追われている毎日に変わりありません。
 
一つ思い当たることといえば、最後まで読めた本は、天狼院書店で買った本である、ということです。
 
ゼミの説明を聞きに行ったあの日、初めて店のドアを開けて入り口をくぐったあと、居心地の良い雰囲気に包まれながら、丁寧にセレクトされたであろう本を眺めていると、一冊の本と一対一で向き合いたいという思いが、自然とわいてきたのを思い出しました。
 
そこへもって、動かないはずの本が書棚から迫ってくる圧倒感。それを受け止めたいという自分の気持ち。ドッジボールのルールが成立した瞬間だったと思います。本に込められている思いと自分とが、じっくり対話できるようになる魔法が天狼院書店にはあるのだと思いました。
 
試しに後日、大型書店にも行ってみました。
本の数で圧倒はされつつも、一対一で本と向き合う気持ちは、そのまま私の中にあるのがわかりました。
天狼院書店がきっかけでかみ合った歯車は、そのままなめらかに回りだしています。
 
こちらに向かってきたドッジボールの球を、今度は私が積ん読の本に向けて投げる、そんなやりとりが始まりました。
うちにある積ん読本たちも、まだまだ数では多いといえますが、それもこれから読了の棚の方へ置かれていくことでしょう。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2021-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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