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サラダが教えてくれた、これが私の生きる道


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「去年とあまり変わってないですね」
 
私の会社では、年初に今年一年間の目標を立てることが恒例になっている。
私の目標を見た上司、その反応は薄かった。
まあ、仕方ないですかね、あなたの場合、
そんな諦めとも、皮肉ともとれるような声が聞こえてきそうだ。
じゃあ、それで進めてください、冷静な上司とは対照的に、私の心は怒りで煮えたぎっていた。
 
なんだよ、あの言い方。私だって、私なりにやってるし、仕事だってもっと明確に指示してくれば、目標だってしっかり立てるし、結果だってちゃんと出せる。
 
もう、むかつくなぁ、怒りが収まらない私は、次の仕事に取り掛かる気もおきず、去年の末からほったらかしの机の引き出しの整理をすることにした。
 
ふざけんな、ふざけんな、ぶつぶつと言いながら、引き出しの奥に見つけた昔の手帳を開いたとき、ドキリとさせられた。
「志低ければ、怠惰に流れる」 7年前、私がこの会社に転職して間もないころ、尊敬する上司、ゴリさんからもらった言葉だ。
 
当時を思い出した。あの頃の私はとにかく必死だった。何とか成果を出してやる、まわりに認められる存在になってやると、とにかくがむしゃらに仕事していた。ただ思うような結果が出せず、周囲からちょっと浮いていたのも事実。
あの人、空気、読めないよね。一人だけ必死にやられても迷惑なんだけど。
陰口を言われているのはわかっていた。周りにあわせて、そこそこにやっていくのが一番無難なのか、それとも、このままもう少し頑張れば成果が見えてくるのか、悩んでいた私を見かねたのか、ある日、ゴリさんが声をかけてくれた。
 
お前が一生懸命努力しているのはわかっている。今はまだ結果が出ないかもしれないけれど、自分を信じて、いつも全力投球のその姿勢を忘れないでほしい。くじけそうになったら、この言葉を思い出して、そういって教えてくれたのが、
「志低ければ、怠惰に流れる」 パナソニックの創業者、松下幸之助が残した言葉の一つだ。
当時の思い出で胸がいっぱいになった。苦しいときはいつもあの言葉に支えられていた。今の私があるのは、ゴリさんのおかげだ、今は別の部署にいっちゃったけど、いつかゴリさんに感謝の言葉を伝えないといけないな、そう思った時、チクリと胸の痛みを感じた。
 
果たして今の私は、ゴリさんに顔向けできるのか。
「私、いまでもあの言葉、忘れてないですよ。志高く、ですよね。いまでも毎日全力投球です」 胸をはって、そんなことが言えるのだろうか……
 
お昼、行かない? その声にハッとして、手帳から目を上げると、同僚が、怪訝そうな顔をしている。なんでもない、なんでもない、私はとっさに笑顔を繕って社員食堂に向かう列に加わった。
 
今日のランチの目玉は、グループ会社が作っている野菜を使ったサラダ。新鮮なレタスやトマトはとてもみずみずしくて、味もしっかりしている。ほとんど味付けなしで、そのまま食べるのだが、それが最高においしい。ただ、私の気持ちはそんな野菜たちとは正反対。さっきから、どんより同じことばかり考えている。振り返るとここ何年間の私は、とても全力投球とは言えない。批判はするけど、行動はしない。慣れてきたといえば聞こえはいいけど、手の抜き方を覚えただけ。志高くなんて言葉、最後に考えたのはいつだろう。もう思い出せない。
 
いやいや、違う、違う。決してすべてが悪かったというわけじゃないはずだ。私なりに達成感だって感じてきたし、自信もつけてきた。周りの評価はいろいろとあるかもしれないけれど、私は私なりにやってきた、自負はある。目の前のサラダをぼんやりと見つめがら考える。どんな時、どんな風にして私は成長してきたんだろう。
 
それにしても、いつもおいしそうなサラダ、きっと一生懸命、丁寧に育てた野菜に違いない。やっぱり食材はとれたてが一番だ。どんな料理法だって素材の味そのままには勝てやしない。そういえば、ゴリさんも、ここのサラダ、大好きだったな、そう思った時、私の中で何かがクリックした。
 
「いつも目の前の仕事に全力投球、仕事を楽しむ最高の方法だよね」
昔、がむしゃらに仕事に取り組む私を見たゴリさんはそんなことを言っていた。
なに気楽なこと言ってるんだよ、こっちは必死だよ、
「私、ほかのやり方知りませんから」、意味がよくわからなった私は、ちょっとイラっとしながら答えた。
 
「でもさ、それが自然にできるって才能だよ」ゴリさんは続けた。「目の前の仕事が最高の教科書って言うだろ。それって、料理に例えたら、とれたて新鮮な素材を、その場でそのまま食べてるってこと。最高じゃん」 どんな料理法だって、新鮮な素材、そのままの味には勝てないよ。
 
そうだ…… 我に返った。私が成長できたと感じたとき、それは、目の前の仕事に全力投球した時だ。ごちゃごちゃと考えずに、その時、私が必要と考えたことに真正面からぶつかってきた。
 
わからないときはWEBで調べたり、本を読み漁ったり。直接、仕事とは関係のない人にまで電話をかけて、教えてもらったり。意見が対立することもよくあった。私が間違っていた時も、同じくらいよくあった。その時は、本気で頭を下げた。でも、本音でぶつかった結果、前よりずっと分かり合えた。今では、困ったときにはいつでも助け合えるパートナー、そんな関係をたくさんと人たちと作ってこられた。
 
そう、私はいつも真正面からの直球勝負でやってきた。いつもたくさんの人から与えられ、そして、少しずつだけど、私も与えられる側になって、自信がつき、成長を感じてきた。目の前の仕事に全力投球、これが私のスタイル。私の進む道だ。
 
目の前のサラダにを移す。やっと思い出した? ゴリさんに、そう語りかけられているような気がした。
 
そう、私はもうずっと前から知っているんだ。どうしたら自分を活かすことができるか。
何に喜びを感じるのか。どうしたら成長を感じられるか。急に自信を取り戻した私は、レタスとトマトを口に放り込んだ。かんだ瞬間、酸味がしみた。でも私は知っている。
このあとやってくるのはふわっとした甘さ。そう現実はいつも最初ちょっと酸っぱいのだ。そして、それを乗り越えると、優しくて甘くて。
「よしっ、午後も志高く、気合入れていくぞ!」
 
えっ、それで、今年の目標はどうなったかって? もちろん、上司にお願いして、もう一度、超特急、全速力で書き直しましたよ。なんだか今年は素敵な一年になりそうです。
いや、素敵な一年にしてみせます!
 
 
 
 
***

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2021-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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