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「流行」が苦手な理由


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記事:住田薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
展開が早すぎてついていけないこと。
世の中には、たくさんあると思う。
 
たとえば、マリオカート。
 
私はゲームのカーレースがヘタクソだ。
まっすぐ壁に激突して、進めない。
苦手すぎて、むかし車の免許をとるとき、教習所の先生に相談してしまった。
 
「私、カーブが曲がれないんですよ」
「ああ、なるほどね。大抵そういう場合は、スピード出しすぎなんだよ」
 
笑いながら真面目に答えてくれた先生、ありがとうゴザイマス。
今でも、カーブを曲がるときは、スピード、スピードと念仏のように唱えていますよ。
リアルの運転のほう、ですが。
 
ファッションの流行も、私にとって“展開が早い”と感じるものの一つだ。
どうして毎年毎年、別のトレンドがやってくるのだろう、と影でこっそり溜息をつく。
 
オシャレは好きだ。服を買うのも、クローゼットを眺めるのも好きだ。
 
だけど、ファッション雑誌を開くのは、年に1回あるかないかだ。
“雑誌を片っ端から目を通して、トレンドに合わせて服を買い、コーディネートする”とか、そんなオシャレ女子的行動は、私にとっては少しだけ、苦痛だ。
 
展開が早すぎて「ついていきたい」となかなか思えない。
トレンドが、自分の好みと合わないことがある。
ファッション雑誌を端から端まで見て“勉強”するのも、……わずらわしい。
 
気に入って買った服は、来年も着たいじゃないか。
長く使えるものを、手入れしながら、愛着もって使いたい。
出来ることなら、“一生モノ”を増やしていきたい。
 
だけど。
一人の女子として、流行を全く気にしないというのも、すこし気が引ける。
 
そんな矛盾を抱える人が、じつは他にもたくさんいるのではないかと、そうだったら嬉しいのにな、と考えてしまう。
 
私は建築の仕事をしているが、建築の世界はもっと緩やかな流れの中にあると思う。
 
建築の業界にも、“流行”はある。
たとえば作家的な建築家が、構造用合板(通常は表面仕上げの下に隠れてしまう下地材)を表に見える仕上げ材として使用した“作品”を発表した。それを「いいな」と思った人たちがマネをして、今や多くの人が“構造用合板仕上げ”を使っている。
扉の引手加工や、照明器具、素材の組み合わせ方など、いろんな流行りがある。
古い町家をオシャレに改修することなんかも、流行の一種かもしれない。
 
建築は、「この方法でやろう」と決めても、建物が建つまでに少なくとも半年くらいはかかってしまうし、それがメディアに載るまでにはもっと時間がかかる。
SNSが発達している今だって、建物自体は動かないから、「見に行こう」とその場所まで足を運ぶ人がいなかったら伝わらない。
だから必然的に、毎年新作が発表される工業製品などにくらべると、流行のスピードが緩やかなのだと思う。
 
私はこのスピードが、なんだか馴染みやすい速さでいいな、と思う。
 
ファッションの業界では、「流行色」は“設定するもの”らしい。
国際流行色委員会というところが、2年後に流行らせたい色を選定するのだそうだ。
そこで選ばれた色を軸にして、各種メーカーは商品をじっくり企画・開発する。
 
つくる側からすると、先を見通して動けるということは確かに合理的だ。
常に新しい「流行」をつくることは、新製品を次々と生み出し、人の物欲を掻き立て、経済を回していくことに大きく貢献していると思う。
 
買う側としても、絶えず生みだされる「流行」は、魅惑的な存在だ。
目新しいものや刺激を求める気持ちは、きっと誰もが、心のどこかに持っている。
「流行」が更新されることで、新しいなにかに出会える可能性は、大きく広がるはずだ。
 
つくり出された「流行」は、世の中のあちらこちらで上手く機能している。
だから「流行は自然と生まれるものであって、つくり出すものではない」などと言うつもりはない。演出される“旬”も、おおいに楽しみたい。
 
だけど、世の中が利益を求めれば求めるほど、「流行」が生み出されるスピードは加速してしまう。
結果、「なんだか着いていけないや」と私が感じているような苦手意識が芽生えるのではないだろうか。
 
車は、自分のスキルに合わないスピードで走ると(実際の車道には制限速度というものがあるけれど)、その速い展開に思考も身体もついていけず、壁にぶつかってしまう。
そんなときは、教習所の先生の助言のように、うまく減速してやればいい。
 
“流行”も、自分の感覚にあったスピードで乗っかれれば、きっと楽しい。
トップスピードで駆けたい人はがんがんアクセルを踏んで、のんびり進みたい人はゆっくりと走ればいい。
 
トレンドの源であるファッションショーも、今はコロナの影響で縮小傾向にあるのだそうだ。
もしかしたら今後、“流行”という流れがもう少し緩やかな時代が来るのかもしれない。
もっと自分のペースで走りやすい時代が来るのかもしれない。
 
わたしは、気楽なペースで走りたいと思う。
 
マリオカートでのんびり走っていたら、負けちゃうけどね。
 
 
 
 
***

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2021-01-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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