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思春期の私を支えてくれた本 ~「スロウハイツの神様」を読んで~


*この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Saki Manago(リーディング・ライティング講座)
 
 
「人生の中で1番辛かった時期は?」
そう質問されたら私は迷わずこう答える。
「高校時代」
 
高校時代とにかく私は辛かった。
毎日同じ時間に起きて学校に行き、授業を受け部活に行き帰宅する。
全て親と先生の管理下の元に生活し、常に人の顔色を窺っていた。
 
私の自己を測る指標は“親”と“先生”そして“友達”からの自分への評価だった。
そして、私は誰からの評価も落第点だった。
 
「つらい」「くるしい」「誰か助けて」
そう心の中で叫んでいても、誰も私のことを助けてくれない。
 
どう足掻いても自分のことは嫌いなままだし、人生は辛いまま。
自分を変えたい、幸せになりたいけど方法が分からない。
 
そんな時偶然この“スロウハイツの神様”という本に出会った。
 
人生ではごくたまに、自分の人生を変えてくれるような本に出会う。
“スロウハイツの神様”は私にとってそうだ。
 
この本を読み進めていくにつれて、この登場人物達が現実に存在していて、
西武線沿いの椎名町にある“スロウハイツ”というアパートはきっと本当あるのだろうなと思った。
それくらいこの登場人物のことをとても好きになっていて、この人達が現実に存在していて欲しいと思った。
 
「何でこんなに私の気持ちが分かるのだろう」
 
架空の人物なのに、文章を読んでいるだけなのに、この中に出てくる登場人物が私の心にとても寄り添ってくれた。
 
「大人になるのを支える文学―チヨダ・コーキ」
 
この本は売れっ子小説家であるチヨダ・コーキを中心として話が展開する。
 
そして、赤羽環、狩野壮太、森永すみれ、長野正義も一緒にこのスロウハイツというアパートに住んでいる。
 
みんなそれぞれ夢を持ったクリエイターの卵で、夢を追いながら懸命に生きている。
将来に悩み、友情関係に悩み、恋愛関係に悩み、また過去に受けた傷を抱えながら生きている。
時には住人同士でぶつかりあったり、登場人物一人一人に試練が襲ってきたり、予想もしなかったような展開になったりする。
 
ただの小説なのに、とても現実味がある。本当に人生なのだ。
だから私はこんなに感情移入ができて、大きな影響を受けたのだと思う。
 
登場人物と、赤羽環やチヨダコーキ達と、時には共感し、時には一緒に泣いて一緒に喜んだ。
私がこの時求めていたことは励ましでも慰めの言葉でもなく、
私と同じ傷や辛いことを分かち合える仲間だったんだと思う。
 
「自分だけが苦しんでいるのではない」
 
それをこの本読むことで何度も実感することができた。
 
みんな苦しいんだ。必死なんだ
でも、この人達は、「自分はきっと価値がある」
「自分には絶対にできることがある」そう思って、そう願って生きている。
 
少し長いけど、私がとても心に残った台詞があるので引用したい。
赤羽環が、自分を偽って生きている加々美莉々亜という人物に言った言葉だ。
 
「あなたにとっては、些細なことに映るでしょう。くだらないと、そう思うかもしれない。
だけど、私の友達はみんな必死だわ。自分にとって何が武器になるのか。
それを考えて、小説を書いて、漫画を描いて、必死に世界に関わろうとしてる」
 
「それが叶う場合も、叶わない場合もある。けれどそれにより挫折し、諦め、折り合いをつけることは、嘘をついて手に入れた幸せや楽しみよりもきっと価値がある」
 
この赤羽環の言葉は、私の心にとても残った。
今必死に生きている自分にとても救いになる言葉だった。
 
「今の自分のままでいい」
 
そう思うことができた。
 
今は自分が嫌いでも、どうしようもなくても、私も自分を必死に生きて
一生懸命もがいて世界と関わろうとしていれば、この辛い経験がもしかしたら人に良い影響を与えられることがあるかもしれない。今はどうすればいいか分からなくても。
 
登場人物達は、私と同じく思春期に傷を受け、そして私と同じく文学に支えられて生きていた。そして大人になってその自分が経験した傷を文学や芸術として反映させていく。
 
その辛い思春期の中でみんなが1番好きで、支えられてきたのがチヨダ・コーキの小説である。
チヨダ・コーキはずっと売れっ子の小説家だが、彼もまたある事件のせいで傷を抱えている。
 
この本は、様々なところに伏線が張られていて、それが最後一気に回収される。
そして、伏線の謎が解けた後とても優しくて温かい気持ちになれるのだ。
 
チヨダ・コーキに支えられていた人達、そして、チヨダ・コーキも誰かに支えられていた。
生きているということは、多かれ少なかれ誰かに支えられて生きているということだと思う。
自分の気づかないうちに誰かに支えられて、自分もまた誰かを支えている。
 
それは対面している人だけではない。
人によっては小説かもしれないし、音楽かもしれないし、映画かもしれない。
でもみんな人が人を想って作ったものだ。
 
そう考えると今自分が生きている辛い現実が、少しましに思えた。
今いる自分の場所だけがすべてじゃない。
世界はもっと優しいのかもしれない。
 
だって私は“スロウハイツの神様”という本に出会えたんだから。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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