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簡単そうに見えた卵焼きを作って失敗した話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大附 祐貴(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「上手くできるだろうか、ドキドキ…」
私は台所で一人苦戦していた。
 
緊急事態宣言がまた発令された。前回のように商業施設がすべて閉鎖されるようなことだけは免れたが、飲食店が20時までの営業に追い込まれてしまった。残念だが、仕方ない。
そんななか、自宅で食事をする機会が増えた。
最初のうちはスーパーマーケットのお惣菜をおかずとしてご飯を食べていたり、近所の牛丼店やお弁当屋さんのテイクアウトでしのいでいたりしたが、それも飽きてしまった。
 
外出も自粛が要請される日々、なにか自宅で楽しめることはないか……
 
「この際もっと自炊してみよう!」
ある休日の夕方、ふと思い立ったのである。
ただ料理作りの基礎を何にも知らなかった。そこで、まずは簡単なものから挑戦してみようと考えた。
 
インターネットで「自炊、簡単」と調べてみる……
 
最初に出てきたのが「卵焼き」だった。
おふくろの味の代表のようなものだ。
 
レシピを見てみたら、卵、マヨネーズ、お醤油……とどれも自宅に揃っているものばかりで、そんなに買い足したりしないで済みそう。
 
というわけで、卵焼きから挑戦してみることにした。
思い立ったが吉日、さっそく台所に立ってレシピをじっと凝視してみる。
 
「卵を割って、ボウルの中でとく」
……ほうほう、簡単じゃないか。
 
「卵焼き機に油を薄く敷いて、強火で温める」
……これもそんなに苦じゃない。
 
「卵液の3分の1を卵焼き機に流し込んで、半熟にする」
……半熟ってどれくらいだ?
とりあえず卵液が温まっていく様子をじっと眺めてみた。
待てども卵液は半熟になりそうもない。
「火が弱いのかな?」と少しだけ火力を強めてみた。すると……
あっという間に卵液はカチカチに固まってしまった。
一部は焦げかけているよう。残念ながら失敗である。
 
「うーん、ちょっと火が強すぎてしまったのかな……」
失敗した卵焼きを食べながら、ひとり反省会を実施していた。
 
翌日、再び台所には昨日と同じような食材と調味料がずらりと並んでいる。
 
「今日は火加減をうまく調整しよう」
昨日の失敗を繰り返すまいと意気込んでいた。
 
昨日の手順と同じように作ってみる。
卵焼き機を温めるまでは良かった。昨日の反省を生かしつつ調理に入る。
 
「カンカン! パカッ!」
卵を割ってボウルに入れる。昨日と違って迷いもなく順調な滑り出しだった。
 
卵液を入れてみよう……と同時にすぐに固まってしまった。
どうやら卵焼き機そのものを温めすぎてしまったようだ。
またもや失敗である。
 
「うまくいかないなぁ、ちょっと時間をかけすぎて温めちゃったかな……」
昨日に引き続き、失敗作の卵をつつきながらひとり反省会を実行した。
 
同時に、学生時代に母が作ってくれたお弁当のことを思い出した。
 
母は、来る日も来る日も毎日お弁当を作ってくれた。
白いご飯、唐揚げ、ブロッコリー、そして片隅には、卵焼きが何気なく入っていた。
当時の私は、それを何とも思わずに毎日食べていた。
 
「卵焼きは練習したらちゃんと作れるわよ」
母はそう言いながら、毎朝手際よく、しかも美味しい卵焼きを作ってくれた。
毎日お弁当を作ってくれたことは感謝しているつもりだったが、
こんな大変なことを毎朝してくれていたんだと思うと、それが尊敬に変わった。
 
これは、文章を書くことにも通じるものがあるのかとも思う。
文章力を向上させようと、「天狼院ライティング・ゼミ」を受講している私には、課題として毎週2000字の記事を書くことが求められている。
 
「2000字は一般のブログの記事の分量です」
ゼミの講師の三浦さんは、そう教えてくれた。
 
私も2000字の記事は、何百本と読んできた。
エッセイだったり論説だったり。それを当たり前のように消費してきた。
 
でも今はそれを書く立場に変わった。
2000字の記事を書くとなると、とても難しい。
記事の読みやすさには配慮しないといけないし、
なにしろ読者に興味を持ってもらえる記事でなければならない。
 
これまで、何十回と卵焼きを食べてきた。
何百回といろんなブログ記事を読んできた。
それは、すべて当たり前だと思っていた。
 
「食べたいな」と箸をつけてもらえる卵焼きを作るかのように、「読みたいな」と思って記事をクリックしてもらえるような文章を作るというのは、とても難しい。
どれも、挑戦してみて初めてわかることだった。
他人の作品を消費するのはたやすいことだ。でも、それを作り出すのは何十時間、いや何百時間に及ぶトレーニングがあったから作品が生まれるわけで、私は恥ずかしながらそれに気が付いていなかったようだ。
 
今は、WEB天狼院に掲載しようと取り組んでいる身。いま大事なものはなにかと尋ねられたら、すぐに答えられる自信がある。
 
「これからもっと挑戦しないといけないなぁ」
今日も台所で卵焼き作りに試行錯誤しているのであった。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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