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転機はいつやってくるかわからない。社長から背負い投げをされた私の転機


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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山本 愛子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
24歳の春、営業から帰ってきた社長に背負い投げをされた。
私は、一瞬何が起こったかわからなかった。もう一人一緒にいたデザイナーの子も何が起こったのかわかってなかった。私は、社長に軽く背負い投げをされて床に倒れると、自分の被っていた帽子が取れて放心をしていた。
 
22歳から働いている会社で、そのコトは起こった。
 
その会社に入る前に、私は、円形脱毛症を通り越して多発性脱毛症という、円形脱毛症が何個もできる多発している状態だった。最初は、頭の後ろに500円玉ぐらいの大きさが非常にツルツルしているのに気づいて、ガラケーで友達に写メを撮ってもらった。ハゲていた。当たり前だが、髪は、抜けても痛くも痒くもないのだ。自分の知らないところで、脱毛していた。
 
脱毛は、初めてだった。すぐに、住んでいたところから近くの皮膚科に行った。大したことはないらしいのだが、自分が見つけた500円玉の大きさの脱毛以外にも違う場所にも小さい脱毛がいくつか見つかり、大学病院を紹介してもらうことになった。血液検査をして、アレルギーの有無や無理なダイエットがなかったかなど聞かれた。結局、なぜ脱毛症になるのかは、はっきりとはわからないということだった。ただ、治療方法はあり、治る可能性はあるということに安心した。そこから、週に1回から2回大学病院に通院することが決まった。
 
当時の私はカフェで働いていた。カフェでの仕事はシフト制で、病院に合わせて休みを取ることが難しい状況だった。そんな私の状況を見かねた知り合いが、通院をしながら、帽子を被っても仕事ができるその人の知り合いの事務職を紹介してくれて入社した。
 
その会社は、病院からも近く、通院しやすい場所にあった。社長を入れて4人。社長が一人で営業をやっていて、その他の2人は、事務職だった。そこでの仕事は、企業からアンケートを請け負って入力をして納品をする仕事や、株主優待事務局を外注で受けて、電話の対応をしたりしていた。社長は、同じフロアにもう一つ会社を経営していて、そこは、社長を入れて7人だった。人材系の会社で、一人だけ事務職で、それ以外は、みんな営業職だった。
ワンフロアーに、年齢が22歳から32歳までのメンバーが働いていた。
 
私は、接客業でしか働いたことがなく、「会社」という場所で何をしたらいいか知らなかった。
「取説持ってきて」「午後イチでそれやろう」「プラグ持ってきて」「リスケで」何を言っているのかさっぱりわからなかった。その頃の私は、糸井重里の『オトナ語の謎』を辞書として持ち歩いて、わからない言葉を必死で調べてポストイットを貼って覚えた。
パソコンが使えなくて、アンケートの入力だけで、腕が筋肉痛になったり、電話対応では、社長への電話の取り次ぎに、「外国の方からお電話が入ってます」と伝え、社長の日本人の知人だった。毎日がそんな調子だったので仕事がとにかく終わらなかった。終わるのはだいたい24時ぐらいで、同じ時間まで仕事をしている年が近いメンバーと飲んで帰ることが日課になっていた。当時、離婚をしたばかりの社長とも、みんなでよく飲むことが多かった。
 
1年が経ち、髪の毛は弱々しいものの生えていた。美容院にも1年以上行くことができず、不揃いの髪の毛は、帽子でごまかしていた。
 
仕事では、任せてもらえることも増えて、一人でできることがうれしかった。
接客業をしていたからか、株主優待の電話の対応が評価をされて、取引先の担当者と直接やり取りも任せてもらい、取引先の人たちと一緒に出張まで行くようになっていた。もちろん、その時も取引先の人には事情を伝えて、帽子をかぶって出張に行った。
 
入社してから2年が経つ頃。
自分と同じ歳のデザイナーの子とコンビニに行って帰ってきたところに、社長も営業から帰ってきていた。社長と何か世間話をしていたはずなのに、急に背負い投げをされたのである。
空中を舞う帽子。倒れる私。痛いとかそういうのはなかったが、何が起こったのかわからなかった。社長を見たら、私の頭を見て「愛子、もう大丈夫やん。もう一つの会社で営業しよ!」の一言。
デザイナーの子もなんと言っていいかわかない顔をしている。そらそうだ。私も状況をわかってはいない。
 
でも、笑ってしまった。何が大丈夫やねんと思った。社長は笑いながらどっか行った。
 
私は、その週の週末には、美容院に行って不揃いの髪の毛を整えて、帽子を取ることにした。数年ぶりに、頭皮で風を感じた。スーツも買って、次の週からは、営業職をスタートしていた。そこから、数年後にはマネージャー職に就き、部下を持つまでになっていた。
 
私の社会人生活の初めての転機は、社長の背負い投げから始まった。いや、円形脱毛症がすでに転機だったのかもしれない。何が転機になるかわからない。でも、何が転機になるかわからないから面白い。この経験から、自分がどんな状況でもある程度、楽しめるようになった。こんな状況でも転機かも?
 
 
 
 
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2021-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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