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人生で一番愛した人とは結婚できない


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記事:こまる(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
先日、結婚を決めた。
 
人生で一番愛した人とは結婚できない、という言葉がある。
 
皆さんは聞いたことがあるだろうか。
 
本当に好きな人を人生のパートナーに選ぶと、期待や執着、嫉妬が大きくなりすぎてしまうとか、好きすぎて相手を優先しすぎてしまうとか。逆に、好きだからこそ譲れなくて、いつの間にかすれ違って。けど、すれ違っていることを認めたくなくて目を逸らして、見えないところで溝が大きく、深くなっていく……、みたいなことが世間では言われているのだ。
 
私はそんな中、人生で一番愛した人と、結婚を決めた。
 
自慢じゃないけど、こんなに幸せなことってあるんだなあ、と心から思った。
 
けれど同時に、一番愛した人とは結婚できない友人の話を思い出した。
 
その友人には、ずっと恋焦がれている人がいた。
 
その恋は、消えない小さな炎だった。
 
5年前に灯がともってから、その炎は一度も消えたことはなかった。
 
けれども、その友人が好きな人には、3年程前から恋人がいた。残酷にもその恋人は、同じコミュニティで仲良くしていた女性だった。友人と、友人の好きな人と、友人の好きな人の恋人と、私。4人で遊びに行くことも少なくなかった。残酷にもそのカップルは、誰が見てもお似合いの二人で、無印の洋服の似合う、さわやかな2人だった。
 
そのうち私の友人は自分の心に燃え盛るその炎に、自分から水をかけようとしていた。でも、何度自分で水をかけても消えなかった。
 
「仕方ないよ。本当に好きだから、良い友達でいられるだけでいいんだ。彼に迷惑はかけたくないし。それに、きっと僕が女だったとしても、彼は僕のことなんか好きにならないよ。性別なんか問題じゃないんだ」
 
私の友人は男性のことが好きな男性だった。
 
私には、「恋愛対象が異性ではない」友人が何人もいる。
 
身体は男性に生まれ、女性になりたいし、男性が好きな人。
 
身体も心も男性で、男性が好きな人。
 
女性に生まれて、女性のことも、男性のことも好きな人。
 
それから、誰のことも好きにならない人。
 
みなさんのまわりにもいるだろうか。いわゆる、LGBTQといわれる多様な性のかたち。
 
私の周りにたくさんいるだけかもしれないし、みなさんの周りにもいるけど、言っていないだけ、気づいていないだけかもしれない。
 
彼は私に言った。
 
「僕、結婚したいんだよね。世間体的に、得なことが多いから。好きな人とは結婚しなくていいから利害の一致する人と形だけの結婚がしたい」
 
「あんなに好きなのに?」
 
心から出かかった言葉を私は飲み込んだ。
 
彼は、もし好きな人と両思いになったとしても、現状では制度的に結婚することができない。好きな人とお互いが家族になりたいと思っていても、家族になることができない。たとえ一緒にいることを周囲が認めたとしても、最愛の人が命の危険にさらされているとき一番近くにいられないかもしれない。
 
どう頑張ったって一番好きな人と結婚することはできないから、相手の幸せを一番に願って、自分の恋心をどうにか消火しようとする。もし、相手が自分に振り向いてくれたとしても、自分は相手のことを幸せにはできない。それが分かっているから。
 
ただ、「結婚しない」という選択が世間的に認められはじめたとはいえ、親や親戚からの「結婚しないの?」攻撃はやまないし、ずっと独り身で生きることへの恐怖もある。だったら愛のない相手でも結婚した方が良いと思っているそうだ。
 
はやく、いろんな人が、一番愛した人と結婚できる世の中になってほしいと思った。
 
私はたまたまある人を好きになって、たまたまその人にも好きになってもらえて、結婚したいと思ってもらえた。そういう奇跡が起こって、結婚を決めた。心の炎を分かち合って、聖火リレーみたいに繋いだ。これからは一緒に燃やしていく。二人で愛を育んでいく。
 
けど、たまたま同性のことを好きになっただけで、一番愛した人と家族になれないだなんて。
 
せっかくお互いがお互いのことを「好き」と思える奇跡が起こっていたとしても、日本では、そこに制度というものが水をかけてくる。水というか、もう消防車が来て根こそぎ消火されちゃう感じ。だったら、ばれないように小さな火を育み続ける方がマシ。それか、自分で消しちゃう方が、マシ。
 
どうかこんな苦しい思いをして、あきらめて、こっそり泣いている人たちが、一人でも減ってほしい。ねえ、彼ら、何も悪いことしてないよ。好きな人と一緒にいたいだけだよ。家族になりたいだけだよ。もちろん、結婚することだけが幸せではないし、ゴールでもないけれど、結婚したいのにできないなんて、なんだかおかしいよね。
 
「この人と結婚したい」って思える人に出会ったときに、結婚するということを誰もが選べる世の中に、私はしていきたいと思う。
 
彼は私の結婚報告を聞いて、笑って祝福してくれた。
 
はやく、私も、おめでとうって言いたいよ。
 
どうか、彼が好きな人と結ばれ、自由な選択が出来ますように。
 
みなさんと、みなさんの大切な人が、好きな人と結ばれますように。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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