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メディアグランプリ

母と宝さがし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三澤純子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おとうさんが帰ってこないのだけど、そっちにいる?」
 
父は5年前に他界しています。母はどうやら認知症です。
 
最初は日付がわからなくなりました。一人暮らしだから、会話が少なくなって、そのせいかなと思い、ケアマネージャーに相談しました。足が悪かった母は10年前に股関節手術を受けていたので、その時からケアマネージャーにはお世話になっていました。デイサービスに通おうと申込したのですが、コロナで新規受け入れができなくなり、自宅でがんばっていました。お財布がない、カギがない、あれがない、これがないと電話がしょっちゅうかかってきます。
 
食事はコンビニで調達していました。近くにコンビニがあって本当によかった。コンビニが生命線でした。でもそのうちに、コンビニに行くのもおっくうになってしまったようです。万一のために揃えておいたカップヌードルがどんどんなくなる日々がやってきました。さすがに1ヶ月に30個のカップヌードルがなくなると、次の手を打たねばならぬと思い、再度ケアマネージャーに相談。夏から受け入れ再開したデイサービスに一日おきに通いはじめ、行かない時は宅配弁当を届けてもらう日々が始まりました。
 
デイサービスに通い始めてすぐに、持ち物に問題が生じました。持って行くものは限られていて、マスクやメガネとお風呂のあとの着替えくらいなので、カバンひとつで済むのです。が、母は、カバンを6個も持っていくようになってしまいました。中には旅行のパンフレットや歌のしおりが入っています。5日分の着替えもパンパンに入っています。旅行気分なのかな。日付がわからなくなっているので、今が夏なのか冬なのかもおぼろげです。真夏なのに冬服を入れています。デイサービスと相談して、カバンを二つだけ残して、他を隠すという手段をとりました。今使わない洋服や昔の旅行のパンフレットも隠しました。毎週かえって実家の片づけをする日々です。過ぎたるは及ばざるがごとし、という言葉がしみます。家の中、荷物、多すぎです。
 
秋に認知症の検査をしました。絵を見て答えたり、計算をしたり、漢字を書いたりといったテストは、ばっちり100点満点です。なんの問題もないように思えます。目の前のことができなくなっているのと、計算問題には関連がないようです。看護師さんに私から日常の様子を話しました。「おとうさんを探しているのよね」というと、「そっか、妄想系か」と言われました。
 
デイサービスにはお友達がいたそうで、楽しくおしゃべりしているというのですが、そのお友達も数年前に他界しています。妹がデイサービスで働いていたとも言っています。実家に帰ると、客間にお布団が敷いてあります。おとうさんのお布団だとか、妹が泊まりにきたとか。誰も来てはいません。母と私の二人分の食事を用意すると、「あら、〇〇ちゃんのは?」と聞かれます。誰?それ。留守番電話には「泊まりに来ている方が熱を出されています。どうしましょうか?」と入っています。誰かが見える系の認知症です。昔、我が家は来客が多かったので、そんな気持ちでいるのでしょうか。見えている方はお友達や父や妹なので、楽しい系であろうと思われるのが救いです。
 
そのうち、荷物の準備ができないから、デイサービスをお休みすると言い出しました。本人にとっては荷物の準備が相当にプレッシャーになっているようです。準備の様子を見ていると、洋服をカバンに仕舞い、また取り出して広げて、首を傾げ、またカバンに入れて、を繰り返しています。終わりません。本人、不安でいっぱいです。何度も何度も確認し、そのうち、はぁはぁと息が上がってしまいます。デイサービスの朝は毎回、荷物ができないので休むという母に1時間もかけて、電話越しに準備をさせる日々が続きました。落ち着かないので、ヘルパーさんに朝のお仕度に入ってもらうことにしました。本人もほっとしたと思いますが、私も開放された気分でした。
 
ヘルパーさんが入ることは、大きな課題でした。父の介護は寝たきりになってしまって、ヘルパーさんのお力を借りなければどうにもならない事態だったのですが、母はヘルパーさんが入ることにとても抵抗し、いつも怒っているような状況になってしまったのです。今回、うまくいかなかったらどうしようと不安でした。でも、なんだかすーっと受け入れてくれたので、ほっと一安心。ヘルパーさん、ありがとう。
 
一緒にいられる限られた時間で、母の人生を振り返ってみようと思います。「片付けよう」というと怒るので「宝さがししよう」と言ってみました。どんな宝さがしたいか聞いてみたら「お雛様」と。それはちょうど時期もよい。押入れの奥にしまわれたままの7段飾りのお雛様を一緒に飾りました。40年ぶりのお雛様です。三人官女のお一人が若かりし頃の母によく似ています。もうすぐ母の誕生日。お雛様も喜んでくれています。
 
 
 
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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