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メディアグランプリ

日曜劇場のような、ほんとの話

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記事:田中真美子(リーディング俱楽部)
 
 
「これ、冬休みの宿題だから読んどいて」
 
仕事納めまであと1週間、そんなときに当時の上司に渡された一冊の本。
それが「V字回復の経営」と言う本だった。
 
本書は数々の赤字企業の経営再建に関わってきたコンサルタントであり、経営者の三枝匡氏の著作だ。
実際に氏が関わったいくつかの企業の組織改革を題材に、架空の企業、太陽産業のアスター事業部という傾きかけた事業部の再建というストーリーの中で企業再建のカギを説いている。
 
私はビジネス書が得意では無い。いや、はっきり言って苦手だ。
きっと仕事に役立つ、ありがたいことが書かれているんだろうけど、そこに書かれている文字はページの右から左にみっしり並んでいるだけで、ちっとも頭に入ってこない。
 
頑張ってなんとか読んでも、内容に共感することはあれど、どうやって実践するの、これ…? と疑問に思いそこでページをめくる指が止まってしまう。
 
ビジネス書アレルギーの私は、尊敬し、信頼する上司からの指示にもかかわらず、その本をそっと押し入れにしまって冬休みをエンジョイしてしまう。
 
年明け、幸い上司に「読んだか? 」と聞かれることはなく、日々の仕事に忙殺されていく。
3月になり、来年度の体制が発表され、上司が昇進して事業部長になることが知らされる。
 
そして4月、組織の改革のための活動が始まった。
 
新たにスタートした組織改革の取り組みの中で、私は組織の一体感醸成を検討するチームに所属し、毎週1回ペースでの活動を開始した。
 
ところが、チームメンバーは10人以上いるはずなのに、いつも集まるのは私ともう1人、あとは熱意を持って参加してきた新入社員が2人、の合わせて4人。
 
おいおい、みんな活動に参加したくて手をあげたんじゃなかったの…?
 
呆れつつも僅かに集まったメンバーで議論を続けたがどうにも検討が進まない。
早くも行き詰まったわたしたちは社外からコンサルとして参画していたUさんに相談しに行くことにした。
 
「みんな何らかの課題認識があってこの取り組みに参加しようと思ったはずだから、まずはそこをヒアリングするところからはじめなさい」
 
そうUさんに言われて、普段参加していないメンバーにもお願いし、なんとか会議に集まってもらった。
 
大きな模造紙を会議室のテーブルに広げて、そこに付箋に書いた現状の問題点をどんどん張り出していく。
 
日頃の不満を吐き出せるのだからその回は大いに盛り上がった。
あ、この課題はさっきYさんが挙げてくれた課題と似ているね、そっちの課題とも関連してそうだね、そう議論しながら、たくさん貼り付けられた付箋をまとめたり、関連づけしたりしていく。
 
この営みで挙がったたくさんの組織の課題をいくつかのグループにまとめ、それぞれについて解決策を検討する活動にコマを進める道筋が見えてきた。
 
ここに至るまでに何ヶ月もかかり、季節は春から夏に変わっていた。
 
その年の夏休み期間、瀬戸内海の離島を周遊することに決めた私は、旅行の前日、夫と共に荷造りをしていた。
 
旅行は格好の読書タイミング、前から読みたかったミステリーを数冊カバンに詰め込んでいるときに、ふと上司に渡された本のことを思い出した。
 
宿題と言われていたのに放置していたなぁ、今更だけど移動中に読んでみるか。
 
休暇を控えて心にゆとりがあったからか、いつものビジネス書アレルギーを発動させることなくその本を手に取り、他の本と一緒にカバンに詰め込んだ。
 
島から島へと移動するフェリーの中で「V字回復の経営」をようやく手に取り読み始めた。
本作はビジネス書だけどストーリー仕立てなので、まるで半沢直樹のように、企業ものの小説を読むようにスラスラ読める。
 
読み進めて私は大いに驚いた。
 
そこに描かれている企業の問題は、まさに私たちが抱える問題と同じだったからだ。
そして不振事業の症状として書かれていた症例のいくつかは、今の私たちに当てはまることがいくつもあった。
組織内に危機感がない、社員が「そと者」を区別している、会議の出席者がやたら多い…。
あげていくとキリが無い。
 
作中で組織改革のタスクフォースのメンバーが合宿で問題点をカードにどんどん書き出し壁に貼り、改革の切り口を整理していくシーンがあった。
 
あっ! これは私たちが今まさにやっていることじゃないか!
 
その後本作の物語の中では組織改革が進み、見事に傾いていた事業が回復していく。
ウソでしょ? ほんとにそんな上手くいくの? と疑問に思うところだが実際の出来事をベースに書かれているのだから信頼できる。
 
私たちの活動も、あきらめずに信念を持ってやり遂げれば上手くいくのではないか。
人がついて来ず下がっていたモチベーションが回復し、早く次のミーティングを開きたいと思った。
 
そこでようやく私は上司の意図したことに思いを馳せる。
この本を読むように指示したのは、これから自分たちが挑戦する改革にあきらめず取り組むための心構えを身につけるための事前準備だったのではないだろうか。
 
冬休みに読まなかったことを私は後悔した。
だけど、半年以上遅れでどうにか気づくことができた。
 
その後も社内の組織改革の活動は続き、本のように劇的な改革を成し遂げるまでは至らなかったものの、なんとか年度内にチームの提言をまとめるところまでこぎつけた。
 
組織で働くサラリーマンであれば、本作に出てくる症例や登場人物像に思い当たることは少なく無いだろう。
最初に刊行されてから時間が経っている本ではあるが、現代でも当てはまる内容は多く、役立つことが書かれていると思う。
 
日曜劇場のドラマのようなほんとの話が、熱意を持って取り組めば自分の仕事でも起こりうるのだ。
アツい心を取り戻したいサラリーマンの皆さんに読んでほしい、おすすめの一冊である。
 
 
 
 
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2021-03-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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