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ベトナムの恐怖スポットがやみつき。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:芽野あゆみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「死ぬかと思った」。皆さんにはそんな体験があるだろうか?
私は、ある。
少し大げさかもしれないけど、少なくとも「死ぬとしたら今だ」と覚悟したことは、何回かある。
そしてその経験の全ては、ここ、ベトナムで起きている。
今回はそのうちの1つについてお話ししたい。
 
私は現在、夫の仕事でベトナムに住んでおり、駐在歴4年目に突入した。
先に断っておくが、ベトナム、中でも私が住んでいるホーチミン市は、かなり住みやすい街だ。
日本食は簡単に食べられるし、ユニクロも無印もダイソーもあるし、Grabという配車タクシーアプリを使えばいつでもどこへでも行ける。
正直、私の地元みたいな日本の田舎よりも遥かに発展しているので、生活にはほとんど不便が無い。
ただ、その発展スピードにモノが付いて行っていない部分があるのも確かだ。
私の恐怖体験も、そんな取り残された“アナログ”によるものだったのだと思う。
 
事が起きたのは、今から約2年半前。
その日私は、夫とホーチミンのテーマパーク『スイティエン公園』に来ていた。
バラエティ番組『クレイジージャーニー』などにも出演した写真家、佐藤健寿さんの写真集『奇界遺産』の表紙になったことでも有名な公園だ。
スイティエン公園の特徴は、園内の“カオス”にある。
同写真集の表紙に掲載されているのは、プールを見守る謎の巨大な顔。
顔の裏側は実はウォータースライダーになっているのだが、なぜ壁面をあの巨大な顔にしたのかは不明だ。
明らかにディ〇ニーやハリーポッ〇ー、さらにはドラえも〇などをパクッ…オマージュしたようなアトラクションがあるかと思いきや、仏教を全面に押し出したオブジェもあったりして、まさにカオス。無秩序なのである。
 
そんなスイティエンで遊んでいた私達は、とあるアトラクションを見つけてしまった。
ジェットコースターだ。
規模としてはそんなに大きくなくて、浅草花やしきのジェットコースターくらい。
花やしきのジェットコースターは日本最古らしいが、スイティエンのジェットコースターもなかなか年季が入っていそうだった。
 
その日は園内がガラガラで、ジェットコースターに乗っている人はおらず、恐怖度は距離の長さや降下の角度から推測するしかなかった。
距離はそんなに長いわけじゃないし、降下の角度もそんなに急じゃない。
年季が若干心配だったものの、物は試しということで夫と乗ることにした。
 
ジェットコースターの座席には、夫と隣同士に座った。
普通の自動車に付いているようなシートベルトと、上から被る安全バーがある。
「まあなんだかんだで大丈夫でしょー」と思っていた。
…安全バーを被るまでは。
 
シードベルトを締めて、安全バーを被った、その時。気付いてしまった。
 
安全バーが、ロックされないのだ。
 
ジェットコースターに乗ったことがある方なら分かると思うが、安全バーは上から被った時点でガチャッとロックされる。
この安全バーのロックのおかげで、ジェットコースターが猛スピードで駆け抜けても、自分の体が飛んで行かないという安心感を我々は得られるのだ。
今調べたけど、さすがに花やしきのジェットコースターも、腰回りをガッチリとした安全バーで固定している。
 
その安全バーが、完全にフリーなのだ。
よいしょと持ち上げれば、持ち上がるのである。
 
待て待て待て待て。
持ち上がるな。
 
私は夫に「ねぇねぇ」と声をかけた。
そしてヒョイと安全バーを持ち上げて見せた。
夫は、青ざめた。
 
そんな私達に構うことなく、ジェットコースターは動き始めた。
私と夫の命は、この細いシートベルト1本に委ねられてしまったのである。
 
「怖い怖い怖い怖い」という私の安全バーを、夫は「俺が押さえてるから!」と自分の腕で無理やり押さえていた。
そのせいで夫の安全バーは浮いていたと思う。
 
ジェットコースターは緩やかに坂を上って行ったかと思うと、一気に下り始めた。
外から見る分には大したことなさそうだったけど、乗ってみるとやっぱり速い。
私達の体は揺れに揺れた。
年季が入っているレールからゴリゴリした音を鳴り響かせながら、急カーブを右に左に曲がる。
その度に私達の体は左右に振られ、頭はクッションの無い背もたれにガッツンガッツン叩きつけられた。
だけどそんな痛みより何より、私は飛んで行かないように必死だった。
安全バーを強く強く握った。というかもはや腕で抱え込んだと言っていい。
「キャー!!」という私の悲鳴は、楽しんでいるというより、「まだ死にたくない!!」という恐怖と気合の表れだった。
 
結局、私も夫も飛ばされることなく無事に乗り終えることができた。
シートベルトも外れることはなかった。
きっと、今でも営業をしているところを見ると、今まで外れたことはない(もしくは人がケガをしたことはない)のだろう。
もしかしたら最初は安全バーは付いていなくて、色々お客さんに言われるようになったから見せかけで後付けしたのかもしれない。
何にせよ、シートベルト1本に身を委ねてジェットコースターに乗るという経験は、私と夫にとってかなり斬新な恐怖体験となった。
 
そもそも、なぜ人はジェットコースターに乗るのだろうか。
安全バーがあったとしても、あんなに怖い乗り物に。
それは、ジェットコースターに乗ると、脳内にドーパミンという快楽物質が放出されるからだそうだ。
あのドキドキを、人は気持ち良いと感じてしまうのである。それが“スリル”となって、もう一度味わいたいと思ってしまう。
 
実際、私と夫はその後、友人夫婦と再び同じジェットコースターに乗ることになった。
 
そう。恐怖は、麻薬なのだ。
 
もしまたスイティエンに行くことになったら、私はまたあのジェットコースターに乗ってしまうと思う。
ガッチリと安全バーを握りしめて。
 
怖いもの好きのあなたも、いつかベトナムに来ることがあったら、ぜひスイティエンのジェットコースターに乗ってみてほしい。
その時は、シートベルトの確認と安全バーの握りしめをお忘れなく。
 
 
 
 
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2021-03-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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