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2025年/NYを席巻しているのは「コカ・コーラ」ではなく「伊良コーラ」?!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:國井江美子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
東京駅の構内。
総武快速線のホームへと降りるエスカレーターの手前に「それ」は鎮座していた。
ただ一種類だけの飲み物で埋め尽くさせた「自動販売機」。
【伊良コーラ】の文字が目に飛び込んでくる。
わたしの足は自然と止まっていた。
 
よく見ると自販機の看板に【IYOSHI COLA】とある。
なるほど「いら」じゃなくて「いよし」コーラって読むのか。
 
そういえば半年ほど前だったかYouTubeで見たなぁ……と思い出す。
確か「イチからコーラを作る」という内容の動画だった。
いろいろな香辛料や砂糖と一緒に、輪切りにされたレモンや何やかんやが煮込まれて茶色い液体となっていた。
その「コーラの原液」を「炭酸水」で割って飲むのだ。
作り手は『おいしーい!』を連呼して自画自賛していた。
その『おいしーい!』は、腹の底から出た「本物のおいしい」であることは直ぐにわかった。
 
《……っていうかコーラって自分で作れるんだ》
 
それはわたしにとって新たな発見だった。
「ジンジャーエール」や「レモネード」が作れるのなら、理屈としては作れないわけがない。
だが、あの「コーラ」だぞ、となぜか別格のように思ったのだ。
純粋に「イチから作る」という発想自体がなかったから驚いた、というのもある。
 
ともかく1本(240㎖)500円のコーラを、買って帰ったのだ。
 
「コーラを飲むなら風呂あがり」と決めていた。
伊良コーラは薄い琥珀色をしてる。
よく見慣れたコカ・コーラの濃いブラウンが思い浮かぶ。
ビジュアルからして「コーラらしからぬ感」が漂っているのがまた、好奇心をソソる。
瓶の底には「おいしさの企業秘密」であろう沈殿物が溜まっていた。
その「澱」を融かすようにゆっくりと振って撹拌する。
相手は繊細な「炭酸飲料」であることを忘れてはならない。
 
ひとくち、飲んでみた。
《????……!!!!》
明らかに市販のコーラとは一線を画す。
《おぉーー! 初めての味に“いい意味で”「味蕾」が戸惑っている……》
けれども「風味」は「コーラ」の輪郭をなぞらえている。
いやいや、しかし、コレは……。
 
《飲み物としてコカ・コーラを超えている》
ということは、はっきりと断言できた。
 
1本飲み終わったあとに、衝撃がやってきた。
 
「複雑に絡み合ったスパイスの集団」が猛烈なスピードで「後追い」してきたのだ。
 
《なんじゃ、こりゃ!!》
 
口のなかに、薬膳のようなパンチのある余韻が広がっていく。
飲んだあとに、全速力で押し寄せてきた「スパイスの波」はしばらく引くことはなかった。
思わぬ「幸せの余波」にうっとりしながら考えを巡らせる。
 
一周回って辿り着いた思考の着地点。
それが『伊良コーラこそが「本物のコーラ」なのではないか……?』という確信にも似た仮説だった。
 
立てた仮説は検証してみたくなるのが人間である。
わたしは伊良コーラの成り立ち、つまり「プロジェクトX」に無性に興味が湧き、調べてみたのだ。
 
2018年7月18日。
伊良コーラは「世界初・クラフトコーラ専門店」としてスタートを切った。
クラフトコーラ生みの親は「コーラ小林」こと小林隆英さん。
世界中のコーラを飲んで研究する、言わば「コーラマニア」だったという。
コーラを自作するキッカケとなったのは「100年以上前のコーラのレシピ」をネットで見たことだった。
「再現してみたい」と思ったらしい。
納得のいく完成までには、2年半かかったという。
 
小林さんは広告代理店に勤務するかたわら、週末に移動販売車でコーラを売るという「二足のわらじ生活」を始めた。
この頃から伊良コーラには長蛇の列ができ、すでに人気を博していたようだ。
 
というのも、すべて天然素材の材料を用い「コーラの実」や柑橘類、じつに15種類以上ものスパイスをブレンドして作られた「こだわりの」クラフトコーラなのだ。
「コーラの実」とは「コラの実」「コーラナッツ」とも呼ばれ、西アフリカ原産の「カカオによく似た実」のことである。
「コーラの実」はカフェイン成分を含むものの、投入することによって味に大きな影響はないという。
しかし伊良コーラの“アイデンティティー”として「こだわって」使用しているとのことだ。
ちなみに市販のコーラには「コーラの実」は入っていないそうである。
 
そして間もなく、小林さんは脱サラ。
2020年2月28日、新宿区の神田川沿いに工房兼店舗【伊良コーラ総本店下落合】を構えた。
今ではネット、百貨店、自販機と販路を大幅に拡大しつつある。
 
【伊良コーラ】の屋号は、小林さんの祖父「伊東良太郎」さんに由来する。
新宿区下落合の工房兼店舗は“和漢方職人”として祖父・良太郎さんが昭和29年に開業した「伊良葯工」(いよしやっこう)を改装した跡地にある。
伊良コーラが完成する半年前に逝去されたという良太郎さん。
遺品整理の際、亡き祖父の和漢方の道具や研究資料などからインスピレーションを受けた小林さんは、コーラ作りに欠かせないスパイスの加工や調合に活かした。
特に和漢方を煎じるときの火の入れ方をスパイスに応用したところ、香りが格段に際立ち、味わいにも今までになかったインパクトが生まれたという。
 
伊良コーラの誕生には、祖父から孫へと「職人魂のバトン」が確かな感触をもって受け継がれていた。
“和漢方職人”と“クラフトコーラ職人”の世代を超えた奇跡の融合。
祖父・伊東良太郎の魂をのせて、伊良コーラは走り出したのだ。
 
もともとコーラとは、アメリカの薬剤師が「健康を願って作った飲み物」だと言われている。
健康のために様々な生薬を配合して作られる漢方薬とコーラのルーツには「健康を意識して」という共通点があったのだ。
 
やはり「100年以上前のレシピの再現」から始まった伊良コーラこそ、「本物のコーラ」だと言えないだろうか。
わたしの仮説は決して間違いではなかった、と思う。
 
1989年生まれの若きパイオニア、コーラ小林さんには「野望」がある。
 
『目標はコカ・コーラとペプシに並ぶこと。
そして【コーラ・ペプシ・イヨシ】と呼ばれるように、ステップアップすること。
2025年までに、NEW YORKに進出したい』
 
伊良コーラが【頑張っている人を優しく応援するような飲み物でありたい】という信念を貫き通すならば、叶わない理由がないだろう。
 
先日わたしも、ネットのレシピを参考に「クラフトコーラ」作りに挑戦してみた。
結果「これは、底なし沼だな」と感じた。
とにかく工夫する余地がありすぎる。
即ち奥が深すぎる。
初めて自作したクラフトコーラの味は、悪くなかった。
多分「伊良コーラ」の味を知らなければ普通に「美味しい」と感じただろう。
 
だが、もうダメだ。
わたしの舌は「全力疾走のスパイスの後追い」が忘れられない。
もはや「スパイスの余韻がないコーラなど、コーラではない」とまで言いたい始末だ。
 
伊良コーラの功罪は、コーラの概念を覆したことだけではない。
わたしのコーラに求めるハードルを、著しく上げてしまったのである。
 
伊良コーラの「ファンという名の被害者」は今後も増加し続けるだろう。
 
2025年のNEW YORKが楽しみだ。
 
 
 
 

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2021-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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