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家族関係は強さの源


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記事:T.S(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私の家族は、実にオープンな関係だ。
隠し事はもちろん、言わないことは何よりの罪! の考え方で、両親は、今でも本当によくしゃべっている。いいことも悪いことも全部話す、共有するからだ。(もちろん時々喧嘩もしている)
 
私が入院した時も、両親は心配し、惜しまずになんでも協力してくれた。社会人になっていたが、私もその協力に甘んじ、使えるものは親でも使えと言わんばかりに、「次に来るときはあれ持って来て、ついでにこれ買ってきて」 と堂々と頼んでいた。
父に癌が見つかった時も、母は速攻本人に伝えていた。進行の遅い癌で命に別状はないとの見解であったこともあるが、みんなで協力し合い、さっさと治してしまおう! の考え方である。
 
つらさも家族で共有する。本気で病気で戦うのなら、治そうと本人も強く思い、努力しなければならないではないか、と母は言っていた。弱音を吐くことで楽になれるならいくらでも弱音を吐けばいい。ただし、相手は選び、相手には感謝しなければならないと言われた。
親戚、特に母方の親族も似たような考え方で、癌が見つかった時も、みんなでお世話、みんなで応援、みんなで戦っている。そして幸運にも全員治している。再発してもまた治すのだ。
もちろん、これからはわからないが、老衰の多い長寿家系の要因は、基本「治る」と信じて戦う前向きな気持ちの効果もあるのではないかと私は思っている。私はそんな強い親族と両親を誇りに思っている。
 
高校時代からの、私の一番の親友は、私とは真逆の性格だ。趣味嗜好もまるで共通のものがない。
語学堪能な超文系である彼女は、英文学だけにとどまらず、仏文学、美術芸術を好み、友人も芸術を学んでいる人が多かった。大学では陶芸のサークルと、英語で観光案内をするボランティアをしていた。
私はというと、数学が一番得意科目で、英語が劇的に苦手だった。大学時代は、体育会のマネージャーをしていたので、必然的に体育会系の男女の友人が多かった。
 
学生時代を共に過ごしていたものの、ほぼ、全く共通の友人もおらず、一緒に趣味や活動もない。それでも、ずっと彼女は一番の私の相談相手であり、共感者であり理解者であった。
おそらく、彼女と私は物事の捉え方や感じ方が似ていたのだと思う。だから、別々のことをしていても、別の時を過ごしていても、感じたことを報告すると、共感しあえた関係だった。
 
彼女の家族関係が、また、私の家族と180度違った。
ご両親やお姉さんととても仲が良く、常に相手を尊重し、思いやる家族関係で、優しさ故に言わないことがとても多い家族であった。
彼女がメニエール病の入院治療をすることになった時も、両親に心配をかけるから、と言う理由で、お姉さんにしか言わなかった。退院後もおそらく言っていないだろう。
後から、報告してくれなかったご両親が頼ってくれなかったことを寂しく感じるのではないか? とか何かあったらどうするのよ、言わなきゃ伝わらないじゃない、と何度も言った。私には、もどかしさを感じることだらけだった。歳を重ねてからの方が、特にそう言う場面が多かった気がする。
ただ、親友の家族は、言葉が足りないところは、ハガキやメールで補われていたようだった。親子で交わした文面を見せてもらったことがあるが、とても美しい言葉で、励まし、包み込むような愛情の溢れている内容だった。
 
彼女の家族を見ていると、私はとても切ない気持ちになる。
 
なぜ、もっと話して、楽にならないのか。未来に向かわないのか。言わなくても伝わるなんて、エゴではないか。感謝の気持ちも相手を想う気持ちも、心配している気持ちも、きちんと言葉で伝えなければ、伝わらないではないかと。
 
数年前、彼女のお父様が命に関わる病気を診断された。最期まで、本人には病名を言わなかったが、薄々父は気づいていたのではないかと思うと言っていた。
ただ、気づいたとしても、言わないと判断した家族の優しさをくみ取り、問いただしたりはしないようなお父様であったと私は思う。
亡くなられた後、お父さんにもっと感謝の気持ちを伝えておけばよかったと彼女は何度も悔やんでいたが、彼女のお父さんは言葉で伝えてもらうより、ずっと深い愛情を、告知しないことで感じていたのではないかと思えてならなかった。
 
最近は病名も余命も、告知が主流になりつつあると聞く。医学の進歩で治癒率が上がったこともあるだろう。治すためには、もちろん告知をしたほうがいいと私は思う。私も、教えて欲しいと思っている。
 
ただ、相手を思いやって話さない優しさと、その優しさに気づいても、気づいていないふりをして過ごす懐の深さ。それはきっと、私の家族とはまた違う、別の強さにも見える。絆の強さだろうか。
前を、上を、向く私の家族の強さと、彼女の家族のような深い強さ。
 
これからの人生、何が起こるかわからない。
これからも彼女と親友であり続けることで、彼女の家族のような深い強さも持つことができるようになりたいと、私はいつも思っている。
 
 
 
 

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2021-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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