メディアグランプリ

願いが叶うなら、たとえ血を流しても文章を編もう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:内藤睦(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
2021年冬。私は悩んでいた。
文章上達のために受講した4か月間のゼミ中盤で、思うように文章が書けなくなっていたのだ。
 
天狼院のライティング・ゼミでは、課題として毎週2000字程度の文章を書く。
知人に話すと「毎週そんなにたくさんの量を書くの? すごいね~」と言われた。
2000字は、なんやかんや書いていたら毎回割と簡単に超えることができた。
「私、書く力あるのかも」と、少し嬉しくなった。
 
問題は質である。
課題として提出した文章は、添削を受けてオッケーが出たら天狼院のホームページにアップされる。
しかし、私の文章はなかなかオッケーが出ない。つまり、不合格。
掲載されるように質を上げなければならない。
でも、どうやって?
 
ゼミの講義や演習はとても有益だ。ABCユニットや感動曲線。なるほどと思うテクニックや視点をわかりやすく教えていただける。
でも、これらを自分の文章の中に埋め込もうとすると、なんとも難しいのだ。
 
「諸先輩方の文章を読んで勉強しよう」と思い、メディアグランプリのページを見る。私はこういう時、一番情報が収集できる気がして、一番古いページから読む。
わ、スタッフの皆さん超上手い。なんというか、すごい。
ナチュラルに思ったことを勢いでそのまま書いているみたいな印象の文章なのに、上手く構成されていて、盛り上げるところは盛り上げて、まとめるところはまとめられている。
字数が多くてもスピード感があるから、スルスルッと読めてしまう。
そして、目からウロコの喩えや、タイトルから予想していたのと違うオチなど、唸ってしまうくらい計算された作り。
私にこんなのが書けるだろうか?
 
上手く書こうと、考えながら書いてみる。浮かんだネタを、工夫していろいろいじくってみる。
でも文章が断片的なネタの集まりになってしまう。どうしたらまとまるのだろう。どのように組み立てると、緩急ついた一つの読み物となるのだろうか。
 
この頃、ネタ探しをしていて出会った本田宗一郎の言葉が身に染みた。
「飛行機は飛び立つ時より着地が難しい。人生も同じだよ」
ああ、文章も同じだよ。
 
数週間、ドツボにハマった。
書いていて「これは質が十分じゃないな」と思う感覚は身に着いた。その予感は当たった。
添削でいただくコメントは、どれも的確だった。足りない部分があることが身に染みてわかる。
でも、どうしたら自分の文章が合格をもらえる質になるのかが、わからない。
なんだか、自分が他人に伝えたいことがないような気がしてきた。
私なんかダメなのだ。ダメダメなのだ。
どうやったら上手くなるんだろう。
 
そんな時、子どもに読んであげた「白鳥の王子」という童話が心に刺さった。
「人魚姫」「みにくいアヒルの子」などの作品よりはマイナーだが、アンデルセンの作品である。
 
主人公は、11人の王子様と妹の美しいお姫様。
母親であるお妃が亡くなり、王様が新しく迎えたお妃は魔女、というありがちな展開だ。
魔女は12人の子ども達が疎ましく、王子全員を白鳥の姿に変えてしまい、お姫様も一緒にお城から追い出されてしまう。
何年も白鳥の姿のままのお兄さん達が元の姿に戻りますように、と祈るお姫様の夢の中に、ある時、妖精が出てくる。
「イラクサでシャツを11枚編みなさい。それを白鳥に着せたら、人間の姿に戻ります。ただし、シャツを編み終わるまで、ひと言も口を聞いてはいけません」と。
イラクサは、その嫌な感じの名前から予想されるように、トゲがたくさんあって刺さると痛いらしい。さらに毒成分もあるようで、触るだけで肌がただれるそうだ。
絵本の挿絵でも、お姫様の手足は傷だらけで真っ赤になっていた。
それでも「お兄さん達が人間に戻るなら」と、お姫様は森で黙々とイラクサを集め、血だらけになっても声も上げず、粛々とシャツを編む。通りかかって一目ぼれした王様にアプローチされても黙々とシャツを編み続ける。
「一言もしゃべらず不気味だ」と陰口を叩かれても黙々。勝手に魔女と決めつけられて処刑されることになり、牢屋に入れられても編み続ける。
ついに、火あぶりにされる直前に11枚のシャツが完成し、白鳥達に向かって投げつけると、皆王子様の姿に戻ってハッピーエンド。というお話だ。
 
これを読んで「私にも妖精がいたらいいのに! 」と思った。
私だって、文章の質が上がるなら、いくら血だらけになってもいいから黙ってイラクサでシャツを編むよ。でもそんなことをしても文章の質は上がらない。
じゃあ何をすればいいんだろう? 文章がうまくなるために必要な努力は何でもするから、何を編めばいいのか、どっちに向かって頑張ればいいのか、誰か教えてほしい!
方向性が見えないことに私は苦しんでいた。
まるで出口が見えない真っ暗闇の迷路の中で、すっかり途方に暮れているようだった。
 
しかしそうやって試行錯誤した数週間後、作った文章に、かすかに手ごたえを感じた。
偶然かもしれないが、その文章は合格になった。次の文章も合格になった。
間違いかもしれないが、暗闇の迷路に、突然どこからか、わずかに光が差し込んできた気がした。
 
そして気づいた。
「目指す方向性がわからないから」うまく文章が編めないのではない。
目指す方向を考えることも含めて、全てが「編むこと」なのだ、と。
 
そもそも何を、どんな材料で、どのように編むかは人によって違うのだ。
どこを目指すのか、何を完成させるのか、目的を作るのも自分。
 
断片的な文章の寄せ集めになっていた頃、私の文章には目的がなかった。
目的がなかったからこそ、着地点がなかったからこそ、断片的な文章の寄せ集めになっていたのだ。
目的も、着地点も、自分で決めるのだ。
たとえ血が出るような苦労はあったとしても、自分の作品を編むこと。
そうやって、自分で自分の思うままに作るからこそ、ライティングが楽しいのではないか。
そう思った時、何か吹っ切れた気がした。
 
イラクサのシャツのお陰で、白鳥から人間の姿に戻った王子様達。
白鳥に変えられてから数年が経ち、王子様達は少年から立派な青年に成長していた。
 
私も文章を編み続けることで、どのように成長するだろうか。
あと4回、まだまだ苦しむこともあるかもしれないけれど、さらに成長できる機会を楽しみながら、頑張りたい。
 
 
 
 

****

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2021-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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