レストランではキャプテンとしての振る舞いを!
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記事:青山二郎(ライティング・ゼミ日曜コース)
「キャプテン! どうしますか? スクラム? ペナルティキック?」
「キャプテン! 両チームとも、こちらに来て!
お互いにエキサイトしすぎ! このままだと試合にならないよ。時間を与えるからメンバーに注意して」
ラグビーというスポーツにおいて、キャプテンは、非常に尊重される。
レフェリー(審判)は、試合中、何か起きればとにかくキャプテンに問いかける。キャプテンにプレーの選択肢を示して判断を仰ぎ、試合中にケンカが起きれば、両チームのキャプテンを呼んで、ケンカした当事者ではなくキャプテンに注意をする。
もちろん、どんなチームスポーツでもキャプテンは重要なのだが、ラグビーでは、とくにキャプテンの判断やリーダーシップが尊重され、監督の存在は薄くなる。
監督は、一度、選手たちをピッチ上に放ったら、キャプテンに全てを任せ、自分はハーフタイムが来るまで観客席で戦況を見守る。
だから、キャプテンの手腕は非常に重要だ。
私は幼少の頃から、このスポーツに慣れ親しんできたからか、この「キャプテンの重要性」をいろんな場面で意識するようになった気がする。
いろんな場面には、職場、家族、友人たちとのグループ、子どもの学校の保護者会やご近所同士でおこなう地域の清掃活動など、あらゆる場面が含まれる。人が複数集まってグループを形成すれば、必ず、そのグループをまとめるキャプテンが必要になり、そのキャプテンの能力やキャラクターは、なんらかそのグループのパフォーマンスに影響する。
そのいろんな場面のなかでも、私が自分自身の「キャプテン癖」をついつい発揮してしまう代表的な場面が、レストランなどのいわゆる外食の機会だ。
自分ひとりで外食するときは、そんな癖はあらわれないのだが、誰かと一緒にいるとき、つまりグループ(チーム)で食事をするときは、必ずそのキャプテン癖が顕著にあらわれる。
ウエイターさんが、最初にテーブルに来て、「いらっしゃいませ、当〇〇レストランへようこそ!」と挨拶するのがキックオフとなる。
「キックオフ」とはいうものの、これは、客と店が点を争う試合ではない。客と店がチームとして機能し、お互いの役割を存分に発揮して幸せな気分になることがゴールだ。
つまり、客と店(ウエイターさん)は同じチームのメンバーであって敵ではないと認識すること。客と店、どっちがどれだけ得するか? 損するか? ではなく、客が店に入って食事を楽しみ、最後のお会計を済まして店を出るまで、同じチームの一員として、与えられた役割をいかに全うできるか? がカギである。
複数の仲間(や家族)と飲食店に入店すると、なぜか、私にはこの「キャプテン・スイッチ」が入る。
最初に注文を取りに来たウエイターさんに、まずは笑顔で挨拶を返し、このグループのキャプテンは私です、と暗に示す。(もちろん、上司や先輩と一緒のときは例外)
「こんにちは! 今日は家族で、どうしても焼肉が食べたいってことになったので来ましたー」とか言う。
ウエイターさんが、見るからに若い学生アルバイトのような場合は、とくに親しげに話しかけてリラックスさせる。新人選手を扱うように。
「みんなの注文をまとめるのに時間がかかると思うので、ちょっと相談しますね。決まったら、また、声かけます!」
「あ、でも先に、僕と奥さんの生ビールだけいいですか? ガソリン入れないとエンジンかかんないから(笑)」とか言う。
そして、注文したものがテーブルに着いたときには、必ず」「ありがとうー」とか「はいはーい」とかリアクションをする。これはもちろん、子どもたちにも徹底させる。
家族と一緒のときにもう一つ大事なのは、どんなに忙しくても、子どもにウエイターさんを呼ばせたり、ましてや注文などをさせないこと。どんなに若いアルバイトさんでも、親に食べさせてもらっている子どもとは違い、その仕事をして給与を得ている時点で彼らは勤め人なのだ。子どもにはそんな人たちを偉そうに呼びつけたり、注文したりする資格はない。子どもたちにも常にそう言い聞かせている。
少しコミュニケーションが進んだら「〇〇さん(名札が明示されている場合)、悪いんだけど(中盤頃には、タメ口も可)、とりわけ用の小皿、3ついただける?」や、「お水、人数分いい?」とお願いして、持ってきてもらったら、「すみませーん」とか「ありがとうー」と言って笑顔でお礼する。
そしてもちろん「いや、さっきの豚トロ、めちゃくちゃ旨かった。脂も甘いね」などと、料理そのものをほめる。とにかく、お店の人のモチベーションを高く保ち、「このテーブルに食事を提供すると楽しい(うれしい)気持ちになる」と思ってもらえるようにすることで、互いに居心地が良くなることを目指す。
当然のことだが、たまに、ウエイターさんが不愛想だったり、「あまり話しかけないで」オーラを発してくる場合もある。そういう場合は、少しずつ、遠慮気味にコミュニケーションをはかる。大事なのは、ウエイターさん(選手)一人一人の個性を理解して、同じチームのメンバーとして、能力を最大限引き上げてあげる努力だ。まさにチームをまとめるキャプテンの力量が問われる。
美味しい食事と気持ちの良いサービス、笑顔あふれる会話を楽しみ、適正な料金を支払ってお店を出ると、満たされているのは食欲だけではないことに気が付く。
「今日もキャプテンとして、いい試合ができた」という満足感。
コロナの影響で、以前のような外食機会はなかなか作れなくなってしまったが、サービスする側とサービスを受ける側が、ともに尊重し合って、お互いがハッピーになれる関係をつくる機会は飲食以外にも無数にある。
「今日もいいキャプテンを目指すぞ」の精神で素敵なチームワークをいろんな場面で作り出していきたい。
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