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プロ野球を俺らの次元で語る小説 ~「ボス、俺を使ってくれないか?」を読んで~


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記事:村人F(リーディング倶楽部)
 
 
プロ野球で1番最高だった試合は何か?
そう聞かれたら迷わず小学生の時に見たあの巨人戦を答える。
 
8回までヤクルトにパーフェクトに抑えられ5点ビハインド。
そこから今やヘッドコーチになった元木の一発、清原の9回同点2ラン、トドメは伏兵福井のサヨナラ3ラン。
それを東京ドームで見たんだからもうたまんねぇ。
次の日に給食で自慢しまくったことまで鮮明に覚えている。
 
あの頃は純粋にプロ野球を楽しんでいた。
しかし、いつからだろう。
同じように巨人戦を見ていても、「もう若くねぇんだから頑張ってくれよ」みたいな気持ちになったのは。
いつの間にかプロ野球はキラキラした夢の世界じゃなく、俺が働いているような職場になっちまった。
キッカケの1つは間違いなく、小説「ボス、俺を使ってくれないか」だろう。
 
本書は名門球団、東京エレファンツで戦う者達を記した小説だ。
章ごとに主人公が変わる形式で、色んな立場の人間からプロ野球を描いている。
この小説のヤバいところは、出てくる奴ら全員が俺らと同じ次元の悩みを抱えていることだ。
3億円プレイヤーに2軍でくすぶっている中堅選手、果てはビール売り子のねーちゃんまでが現状に悩み、人間関係に苦しんでいる。
そこにはテレビで見せる輝かしい姿はない。
あるのはひたすら生々しい、プロ野球で働く人間のリアルだった。
 
ある男は「雑草魂」と世間で言われているのに、実際は超ボンボンかつ未だに親からお年玉貰っているギャップに苦しんでいる。
またある男は現役時代からスター選手で、引退後も名監督と順風満帆な野球人生を歩んでいるのに、管理職の仕事に嫌気が差している。
そして出てくる野郎全員、いやらしいお店が大好き。
ここまで俺らレベルに選手を描ける作者は、本当どうかしていると思う。
 
この作品を見ていると、俺らと同じように画面の向こうの選手達も足掻いているんだなって、嫌でもわかっちまう。
オープン戦でボコボコにされた1軍ギリギリの投手は、帰宅後ヤケクソでダンベル挙げるんだろうか。
FAで元球団ファンからボロクソ言われながら移籍してきた選手は、環境にうまく馴染めるんだろうか。
そんなことばっかり頭に浮かぶようになっちまう。
もうこうなったらプロ野球で夢なんか見られない。
あの球場にいる人達はみんな、俺と同じように必死に働いている。
そういう現実的な目線になっちまう。
 
そのうえ、彼らを通して俺自身のことまで考えるハメになるんだからたまらねぇ。
30歳、彼女なし。仕事終わりはワイン片手にアニメ「のんのんびより」を見ながら、「この小5女子を演じている声優は俺と同い年だったな」と考える。
こういう自分が嫌になり、酒を追加する。
そんな現実が襲いかかってくる。
 
それなのに、この本を読んで心が揺さぶられるのはなぜだろう。
それは、俺が忘れかけていた闘志を思い出させてくれるからだ。
 
プロ野球で働く選手達は、9人しか立てない枠を争っている。
そんなところに安定はない。ずっと激しい椅子取りゲームを強いられる生活だ。
だからこそ皆、それぞれの立場で戦っている。
メジャーリーグで夢破れて日本に来ようが、チームからクビにされて営業マンになってもだ。
常に勝負に晒されているから、マジモンの闘志が満ち溢れている。
 
そして俺も思い出す。
今働いている会社も勝負の場なんだって。
最近は働き方改革のおかげで仲よく和気あいあいみたいな風潮になってきているけど、出世レースはバリバリ存在している。
それどころか終身雇用が崩れて、稼げなければ即クビにされそうな雰囲気まで出ている。
安定した立場で働いているようにみえても、実際は選手達と同じように戦い続けなければならない。
そういうことを俺に気付かせてくれるわけだ。
 
だからこそ俺も熱くならなければいけないんだって思える。
戦える武器を磨かなければと危機感を持つ。
こうやってプロ野球が教えてくれたことが、今の土台になっている。
もはや俺にとって最高の自己啓発ツールだ。
 
今シーズンも、もうすぐ開幕だ。
巨人はV2を達成できるだろうか。高卒新人の秋広は一軍デビューできるのか。
同い年の大田泰示は、日ハムで田中マーくんから打てるのか。
そういうことを考えながら、スマホでプロ野球速報を更新しまくる日々がまた始まる。
 
きっとこれからも俺はプロ野球を見続けるだろう。
グラウンドに立つ選手達の姿は、俺にとって最高のバイブルだ。
現実と戦いながら、必死に白球を追いかける。
そんな彼らのように、俺も生き続けてやる。
 
 
本記事で紹介した作品
タイトル:ボス、俺を使ってくれないか?
著者: 中溝 康隆
出版社:白泉社
 
 
 
 
***
 
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2021-03-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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