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叶えられなかった夢の叶え方


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記事:宍倉惠(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
叶えられなかった夢は、いつまでも手が付けられない夏休みの宿題のようだ。
夏休みにはいずれ終わりが来るけど私が手元に残した宿題に、提出期限はない。だからこそ、いつまでもそこに置いたまま、たまに遠くから眺めてはちくちくと心が痛む。
 
私が大学生の頃に強烈にあこがれたのは、「武装解除」の仕事だった。聞いたことがあるだろうか。恐らく、ほとんどの人になじみのない言葉なのではないだろうか。
 
武装解除とは、紛争に従事していた兵士から武器を回収し、部隊を解体し、社会復帰させることを指す。とある授業で紹介された新聞記事にあった、紛争後に社会復帰をした兵士の言葉で、私は初めて武装解除という言葉を知った。
 
「支援を経て、今まで自分がしてきたことは間違っていたことに気づいた。子どもたちのためにも、生き直したい」
 
兵士から武器を取り上げるというのは、日本で言えば、武士に対する刀狩りのようなものだ。単純に武器を回収するだけでなく、その人が正しいと信じ生きてきたとても大事なものを奪い取るような行為だと思う。それでも、他者を手にかけてきたことを悔いて生き直したいと思えるほど、当事者を変えることのできる武装解除というプロセスはなんてすごいものなのだと感銘を受けた。兵士であった時に行ったであろう非道は許されることではないが、それでも人はいくらだって生き直せるんだと思った。しかも、人を変えるのは人なのだ。それって、すごくないか。
 
そこから私は、武装解除の勉強を始めた。この界隈では数少ない日本人の先駆者数人の著書を読んだ。武装解除の仕事はどんなに厳しいものか、いやというほど書いてあった。紛争で悲惨な状況を目の当たりにする中でPTSDという強いストレスによる心の病気になっても、自分の罪を償うために社会の平和構築に努める人の姿や、「日本で住民主体の社会変革ができる人でなければ、海外でできるわけがない」というようなことも書いてあった。それでもあきらめきれず、その世界を知りたい気持ちが高まり、大学2年生の時に武装解除を専門とする方が理事長をやっていたNPO団体でインターンをすることにした。
 
何度も何度も読んだ本を書いた人がいる憧れの現場の一員になれて舞い上がった。これで一歩近づけたと、そう思った。
 
しかしすぐに過酷さを知る。英語が堪能でなければ務まらないことはもちろん、いつ起きるかわからない紛争地で働くということ、途上国で働いた経験がなければ雇ってもらえないこと、一人の担当範囲は膨大で皆神経をすり減らしながらそれでも途上国の人を想う気持ちを原動力に働いていること……想像以上の過酷さを目の当たりにした。そして、そこで働く優秀な人たちが輝いていて、自分とのあまりのギャップに、その世界で生きていくという選択をする勇気が出なかったのだ。
 
それから7年の時を経たが、あの時頑張れなかった事実がことあるごとに私を苦しめてきた。ふとした時に思い出しては、ちくちくと胸が痛むのだ。たぶん、やり切ってそれでも叶わなかった夢ではなく、やる前に諦めてしまったからことに、今でもひどく後悔をしているのだと思う。本当に、一生付き合っていかなくてはならないやり残した宿題のようだ。
 
このあまり見たくもない苦い思い出に今、もう一度向き合おうとしている。というか、この歳になったからこそ、向き合う手段を見つけることができた。
 
きっかけは、コロナがきっかけで初めてやってみたクラウドファンディングだった。大好きなクラフトビールのお店や醸造所がなくなってほしくないという思いと、返礼品としてビールが飲める! というごく純粋な自分の欲求に従い、初めてクラウドファンディングで寄付をしてみた。すると、届くメッセージや返礼品を通して、その人たちがどれだけ頑張っているかが伝わってきて、ただの買い物でない繋がりのようなものを感じることができた。
 
これはいいなと思い、今度は返礼品目当てではなく、友だちが営むゲストハウスや、仕事でお世話になっている方へクラウドファンディングで寄付をしてみた。思えば、自分の意志で、自分のお金でまとまった金額を寄付したのは初めての経験だった。
 
こんな関わり方ってあるんだ! と、自分の中では大きな発見だった。お金ってあまり美しいものではないと思っていたけど、お金の力ってやっぱりすごいのだと捉えなおした。遠くにいても、会えなくても、お金を届けることはできて、それがその人の力になることもある。
 
寄付を通して、自分にできないことを得意な人にやってもらう。これもひとつの夢の叶え方なのではないか? クラウドファンディングの経験から思い至ったのが、「尊敬する活動に寄付をする」という手段だった。これは、自分で稼いだ自由に使えるお金がある今だからこそできることだ。
 
この4月から、インターンをしていた団体の会員になろうと考えている。大した額ではないが、少しでも力になりたい。いや、そうではなくて、これは自分のためなのだ。私の叶えられなかった夢を、代わりに叶えてもらうために私は寄付をする。
 
山積みになった宿題はまだ心の中に残っているけれど、もしかしたら少しずつ手を付けられるのかもしれない。もうあの頃を思い出しても、胸が痛まない日が来るのかもしれない。こうしてあの時頑張れなかった自分を許し、今自分がすべきことを果たしていくことに、誇りをもてるようになるのだろうか。
そうなると良い。
 
誰かにとっての叶わなかった夢に、もう一度関わってみるきっかけになることを願って。
 
 
 
 
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2021-03-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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