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  後悔させるために行動する


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせ

記事:長島啓太(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

 迷った。予定していた地元での飲み会と今月の予定を比べて、飲み会に参加できない旨を伝えた。安心した。私の他にも参加できない人がいたようだ。「では、来月で」普通の流れだ。物事には優先順位がある。そうでなくても半年前には一度会っているのだ。東京から埼玉だ。いつでも会える。

その約二週間後、手帳を見ながら地元に帰るタイミングを考える。「連絡は明日でいいか……」明日も用事がある。私はスマートフォンを閉じて明日に備えて、眠りにつく。翌日、連絡がきた。飲み会に参加する予定だったうちの一人が亡くなったという知らせだった。

 私の出身は埼玉県。高校を卒業してからは、都内の大学に通うために東京で一人暮らしをしていた。一人暮らしのアパートから実家に帰るまでは片道2時間程度。帰る気になればいつでも帰れる。

亡くなった高校の友人は、高校を卒業してからさほど会う機会はない。正直な所、大親友という関係でもない。それでもたまに地元に帰り、飲む機会があるとその時間は楽しく感じる。高校卒業してからの苦労話、近況報告など、埼玉から離れた自分としては、いろいろと情報がアップデートされるのは有り難い。だから、後ろ倒しにするにしても、翌月に設定した。

 「え? 来月の飲み会は?」心の中の言葉だとしても適さないのはわかっている。ただ、あまりにも急すぎて、事態が呑み込めていない。意味が分からない。連絡をくれた友人も気が動転しているのか言っていることがすぐに変わる。

最初は「忙しいと思うがお通夜に来てほしい」だったのが、「よく考えたら友人の家族のこともあるから、今はそっとしてあげた方が良いかもしれない」とのこと。確かにこの時の正解はわからない。「でも、なぜ急に……」私の心の中はこの言葉でいっぱいだった。

確かに友人の家族の事を考えるとそっとしておいた方が良いのかもしれない。ただし、こちらとしても最後のお別れの場に顔を出せないのはさみしい。「大丈夫だよ。行くよ」私は連絡をくれた友人にそう返信した。その友人も悩んだようだが、東京から来るのは大変だろうし、今はそっとしておいてあげたいと返信が来た。しっくりこない。確かにそこまで仲良くなかったかもしれないが、お通夜は出席したい。そんな気持ちが収まらなかった私だが、その後のやり取りでその気持ちがすっとひいていくのがわかった。友人は自殺したのだ。

 悩んだ。予定通り飲み会を決行していれば防げたのではないか。自分に相談してくれれば自殺を止められたのに。そんなありきたりな正義感のようなものがわいてくる。友人に何があったかは知らない。それでも、結果的に一か月飲み会を遅らせるという判断をしたことを後悔した。それまでは自分と歳が近い知り合いが亡くなるという経験がなかった。しかも自殺だ。

すごく仲良くはなかったかもしれない。それでも友人との記憶はしっかりと脳に残る。友人は良い奴だった。どちらかという弄られキャラだ。同じ名前で同じ学年にすごくイケメンな奴がいた。友人はイケメンというわけではなかった。そのことを自虐ネタとしてはなし、周囲を笑わせてくれた。目立つタイプではない。だが、嫌われるタイプではない。だから、私も高校卒業後は高校の同級生とあまり関わる機会がなかったが、その友人とは飲みに行く機会があった。

それからいろいろ考えた。予定は可能な限り先延ばしにしないこと。普通に見えている人でも何かしらの悩みを抱えていること。そして、人は亡くなってしまったらもう話すことはできないこと。考えた事はいろいろあるが、一番頭の中に残ったことは、明日どうなっているかはわからないという事だ。それは自分自身もそう。家族もそう。友人もそう。会社もそう。すべてにおいて、明日どうなっているかはわからないのだ。そう考えるようになってからは後悔しない行動をとるようにしたいと思うようになった。海外に行きたいと思ったから行った。スポーツを見に行きたいと思ったら遠方でも見に行った。そんな話をすると、「充実しているね」「行動力がすごいね」などと言われる。その自覚はある。友人が亡くなってから少し経ってからは、とにかく行動することを意識するようになったからだ。行動することで得られたことはすごく多いと感じるし、行動の大事さを身に染みて感じた。

ただ、友人がそのことを教えてくれたなんて書く気はない。そんな感動話ではない。むしろ友人に対して怒っているのだ。なぜ、連絡してくれなかったのかと。ただ、自分がそう考えているうちは、友人が自分に相談してくれることはないだろうとも感じる。また、もし相談をしてくれたとしても当たり障りない励ましの言葉をかけていたかもしれない。もしかすると、友人は誰かに相談することで、その相談した友人を後で悩ませてしまうと考えたのではないだろうか。だとすれば、やはり当時の私の行動力では、友人を救うことはできなかったのだろう。

友人の本音は誰にもわからない。友人がなくなったことは、当然ニュースでも流れない。それでも私の心の中にはいつまでも残り続ける。ただし、後ろ向きにはならない。もっといろいろな事に取り組む。もっと充実した人生を送る。私はあれから行動力が身についたのだ。そして、友人に必ず後悔させてやるという気持ちがある。「そんな良い人生送ってるんなら、俺もそうすればよかった」そう思わせたい。

私が友人の所に行くまではまだまだ時間があるはずだし、そうであってほしい。別の世界で友人に会う事が出来たら、まずは飲み会だ。だが、日程調整はしない。会ったらすぐに始めよう。次は先延ばしにしない。

 
 
 
 

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2021-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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