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教えることは相手を思いやること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:垣尾成利(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は仕事の傍らで週末は合気道の先生をしている。
道場には小学生から80代の方まで、幅広い年代の方が稽古に来てくださっている。
 
稽古の前半は小学生中心の稽古だ。
子どもたちに毎回2つほどの技を教えて、繰り返し稽古をする。
物覚えの良い子もいれば、なかなか覚えられなくて上達の遅い子もいる。
出来ないからと言って怒ってやらせることはしないのだけれど、昇級審査があるため、覚えないことには上に上がれないから、普段はのんびりしている子でも、審査前は皆一生懸命に覚えようと頑張ってくれる。
 
審査を受験する時は、同じ級を受ける者同士で繰り返し技を稽古するのだが、物覚えの悪い子は何回やっても翌週になると見事に忘れていて、合格ラインに届くまで長い時間を要することもある。
 
本来審査の合否は、ひとりひとりの頑張りの結果だから、審査内容がちゃんとできていれば合格、できていなければ不合格と、結果はシビアで構わないのだ。
 
しかしながら、道場ではそのようにはしていない。
 
結果は結果だけれど、私は結果以上にその前の努力の積み重ねと皆で一緒に頑張ることを大事に考えている。
受験する者皆が一緒に合格できるように、お互いに励まし合いながら、協力して審査稽古をすることを大切に考えるようにしているのだ。
 
普段はわからないことは指導者や有段者の大人から丁寧に教えてもらえる環境にある子どもたち。
しかし審査稽古の時は、敢えて大人が教えることをしないようにしている。
 
「わからないことがあったら質問に来なさい」とだけ言って放っておくのだ。
 
そして、子どもたちがどのように稽古をするか、離れた所からその様子を見ておくのだ。
 
ダラダラと喋ってばかりの子もいれば、黙々と稽古する子もいる。
 
当然、黙々と稽古をする子はすぐに覚えるし、喋ってばかりの子はいつまで経っても覚えないままだ。
 
一生懸命に稽古をしている子には酷な話かもしれないけれど、「自分だけできたらいい、ということじゃないよ。全員合格出来るように、覚えた子は教えてあげてください。みんなが出来るようにならないと審査はしません」と言うのだ。
 
一生懸命に頑張っている子は「えー、そんなのおかしいよ」と納得いかない顔をする。
「僕は頑張っているのに、ちゃんとやらない人のせいで受けられないなんておかしいよ」
そんなふうに感じるようだ。
 
武道はチームプレーの競技じゃないから、人のことを気にしなくても困ることは無い。
自分のために頑張って、自分の実力を高めれば結果が出てしまう世界だ。
それはそれで良いのだけれど、子どもたちの将来を思えば、仲間同士で協力し合ったり、助け合ったりしながら壁を乗り越えていく経験をさせてやりたいと思う。
 
そのために、皆で一緒に頑張ることを求めるのだ。
 
号令を掛け合ったり、グループでお互いの良くできているところや間違っているところを見つけ合ったりしながら、協力して覚えることを求めるようにしている。
 
子どもたちに足りないものは何か? というと、人に伝える力、教える力だと常々感じている。
教わったことをやってみることは誰にだってできることだ。
しかしながら、覚えたことを説明したりやって見せたりして、人に教える能力は全体的に低く、苦手意識があるようだ。
 
先日もこんなことがあった。
 
初めて体験に来た子に、あなたたちが教えてあげてね、と指示を出したのだが、言葉で説明することもせず、一度やって見せたかと思ったらさっさとそこから離れていってしまったのだ。結局教えることができないまま、その子は逃げるようにその場から離れ、別の子と稽古を始めてしまった。
 
こういうことが度々起こるのを見ていて、子どもたちは教わることは経験しているけれど、教えることの経験がほとんど無いから、どうしてよいのかがわからず、逃げてしまうのだなと感じるようになった。
 
教えることを経験すれば、自分がどれくらい覚えているかも理解できるし、どんな言葉を選べば上手く伝えられるかを考える機会になるはずだ。
 
初めての人に教えるのは恥ずかしくても、いつも一緒に稽古している仲間にならできるのではないかと思い、教える経験を積むために、審査稽古は子ども同士で頑張ることを求めるようにしたのだ。
 
期待したような結果はなかなか出ないけれど、それでも考えながら取り組む姿を見ていると、きっとこの経験はいつか役に立つだろうと思えるようになってきた。
 
最初は文句を言っていた子もいたが、物覚えの悪かった子が人一倍大きな声を出すようになったり、黙々と自分の稽古をしていた子が進んで見本を見せるようになったりと、子どもたちの中で自ずと役割ができてきたようだ。
「こうして、こうやって、それで次はこう」といった、言葉での説明にならないことも多いけれど、それはそれで良いのだ。
 
相手がわかるように、様々な手段を自分で考えて伝えようとすることが大事なのだ。
 
自分のために頑張ることは誰だってできる。
けれど、誰かのために頑張ることは難しい。
 
相手を思いやる気持ちを育てるためにも、幼い時期に人に教えるという経験を積むことには大きな価値があると実感している。
 
教える時に一番大事なことは何か?
私は、「相手を思いやる気持ち」だと考えている。
 
相手を思えば、どうにかして伝えたいと思う気持ちは自然と生まれてくる。
伝えたいと思えたら、相手のために一生懸命になれるのだ。
 
子どもたちの未来のために、教える経験を通じて相手を思いやる気持ちを大きく育ててあげたいと思う。
 
 
 
 
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