「トイレ掃除は検証の時間だ」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:珠弥(ライティング・ゼミ日曜コース)
ある日のことだった。
友人のM子と電話をしていたら、突拍子もない不思議な話をされて、面食らったことがある。
「ウスサマミョウオウって言うらしい。あ、トイレにいる神様の名前ね」
一体何の話だと、詳細を聞いてみる。M子は“とある実験”をしているとのことだった。
有名な歌もあるくらいだ。本当にトイレに神様はいるのか、お金やご縁という類のものは引き寄せられてくるものなのか、知りたかったそうだ。
「結果は分かった?」
「話半分に聞いてもらって構わないけど、神様はいると思うようになった」
M子が実践したという内容は、小学生が学校で行うような、ごくごく普通のことであった。風水の本を読んで、掃除や空気の入れ替え、人にちゃんと挨拶すること等を意識的に取り組んだようだ。
「本当は、掃除や家事とか、嫌いじゃないけど時間がもったいなく感じて優先度を下げちゃうの。代行サービスを検討しちゃうくらい」
掃除が苦手という意外な一面に驚きもしたが、検証をして、科学的根拠も何もないことを確かめておきたかったらしい。苦笑いを浮かべていそうな声色で、心置きなく怠惰に生活するつもりだったと、こちらに白状してくるのが、とても新鮮で可笑しかった。
代行を検討していた矢先に、周囲の人から自分でやるように説得をされたり、少し怪しげでもあるが運気の話をされることもあったりしたらしい。何はともあれ、M子は代行ではなく自身で続けることにしたと言う。
ひと月も経たないうちに、似た話を別の友人であるKからも報告を受けた。お茶をしている時のことだった。二人とも、お互いの面識はない。あまりにタイムリーな話題であったため思わず深堀してみたところ、Kもちょっと面白そうに、体験談を教えてくれた。
“断捨離やトイレ掃除をすると、何故だかイイコトが起きる”
そう主張をする両者とも、掃除をしてからご縁や運の類が引き寄せられた実感があると楽しそうに言うのだ。一体なんだ。
M子は、欲しかった珍しい種類の猫を、里親として迎え入れることができたらしい。数年かけて見つけるつもりでいた矢先に、すんなりと見つかったことでご縁を感じたのだろう。聞いていた私も思わず鳥肌が立った。
Kは、好きなアーティストのライブチケットの座席運が上がったらしい。舞台に近い席が当選するようになって、自分ではコントロールできない部分を運が引き寄せてくれたと感じていると言う。話をしてくれた時のKは、きっとライブのことを思い出したのだろう。満足げなとびきりの笑顔を見ることができて、とても心が温まった。それと同時に、ちょっと面白そうだなと関心を持ち始めていた。
そんな私の心を見透かしたように、Kは口を開いた。
「騙されたと思って、気長にやってみてほしい」
Kの声に背中を押されて、私も実験を始めることにした。
実は、私は整理整頓が苦手だ。
職場や学校では綺麗にすることを心掛けていたが、実家の自分の部屋は床が見えない状態が通常運転だった。食べ物がないから許されてほしい、という言い訳を続けて、服や本や雑貨達が所定の位置からずれたところにどんどん積み重ねてしまう始末だった。
前職を休職する直前は人生で一番汚かった。文字通り、足の踏み場がない部屋を改めて認識してはげんなりしていた。休職中に一番最初にしたことは、汚部屋の掃除だった。無心で服や本や雑貨達を所定の位置に戻したり捨てたり。床が見えて来る頃にはすっかり気分もよくなって、1ヶ月足らずで現職とご縁があり内定をいただいた。
もしかしたら、あの時の整理整頓も、友人たちが言う“イイコト”として、内定を引き寄せたのではないか、なんてぼんやりと思いながら、私は新居の自室を片付けていくことにした。改めて見返すと、繁忙期を言い訳に服が散乱していた。実家と同じ状況になるところだったな、と少し冷や汗をかいてしまう。
床の服をしまう為には、クローゼットに余裕を持たせる必要が出てくる。クローゼットを開けるためには、服を減らす必要がある。毎日少しずつ服を減らした私は、今度は机の上が気になり始めた……と思いきや、数日後にはトイレや水回りの汚れに目が行くようになった。
私は一旦毎日どこか一か所を掃除することを決意し、便座やシンクを拭き続けた。
そうやって徐々に習慣化していった結果、見る視点が少しずつ変わってきたのだと思う。部屋の気になる場所は今まで目が向かなかったところに行くようになり、物事の思考にも何だか影響している気がした。何より掃除をして空気の入替を行えば、すっきりする。部屋の床が見えている状態は、単純に気分がいいものだった。
“身の回りが整っていると、自然と気持ちも穏やかになって、気分が向上する”
私の検証結果は、当たり前のことを導き出した程度になった。当初の心の隅にあったかもしれない、あわよくば、といった邪な気持ちは消えていた。このご時世、毎日穏やかに過ごせるだけでも充分“イイコト”なのではないかと思えてきたのだ。
実験は一旦終え、私もちゃんと掃除は継続しようと気持ちを改めて数日した時のことだ。見計らったかのように嬉しいことが二つ起きた。
一つ目は、愛用しているクレジットカード会社から、毎月行っているキャッシュバックキャンペーンの当選通知が来たこと。私はお年玉を貰うことができた。
二つ目は、なんとなく疎遠になってしまっていた知人から連絡が来たこと。先方の性格からして、音信不通になりがちであったのだが、私に連絡を取りたくなったと言ってくれたのもなんだか嬉しかった。
この二つが、トイレの神様によって引き寄せられた“イイコト”であるのかはわからない。
少なくとも断捨離やトイレ掃除は、日々にゆとりの気持ちを生み出してくれると実感できた。私の見解としては、ゆとりが出たことによって、感性が強化され、見逃していた小さなご縁や出来事に向くようになれるのではないだろうかと思っている。
小さな出来事に目を向けて、自然と感謝の気持ちや充足感を得られることは、巡り巡って周囲の人のご縁や繋がりを大切にすることに繋がっていく。そんな良い循環サイクルを生み出してくれたウスサマミョウオウ様にも、心の片隅でお礼を伝えようと思う。
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