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「脱・空の巣症候群」~子育てからの卒業は、新たな人生の幕開け~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:今村真緒 (ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
ついに、この時が来てしまった。
いつかは来ると分かっていたけれど、実際にその時に直面すると何とも言えない気持ちに襲われた。
羽田空港の保安検査場の前で、何度も何度も娘の肩をさする。もう飛行機の搭乗時刻が迫っているのに、去りがたい想いに苛まれた。
 
もう行かなければ、飛行機に間に合わない。
意を決して娘から腕を外した私は、どうにか涙をこらえ、娘から離れた。
保安検査場のゲートを抜け、窓越しの向こうに見える娘に向かって、無理やり貼りつけた笑顔で大きく手を振りながら、搭乗口へと向かった。
娘が視界から消えた瞬間、私の胸の中にポッカリと大きな穴が開いた気がした。
明日からは、すき間風が吹くこの穴を、どうやって埋めればいいのだろう。
 
4月から、我が家の娘は大学生になった。
うちの娘は一人娘だ。だから周りの人たちも、できるだけ手元に置いた方がいいよと忠告してくれていた。
本音を言えば、私も娘とはできるだけ離れたくなかった。いつまでもそばに居てほしいと思っていた。
受験する大学を決めるときも、心ひそかに近くの大学を選んでくれないかと期待した。
けれど娘の手前、行きたい大学に進んでいいと前から言っていたこともあって、口にできなかった。それに、親が反対したから行けなかったと、娘がのちに後悔するのは避けたかった。
 
娘が候補に挙げた大学は、遠方の大学だった。東京や関西の大学だ。うちは福岡だから、そうそう会いに行ける距離ではない。
ああ、やっぱり手元から飛びたって行くんだな。
このとき、私は少しずつ覚悟しないといけないと思ったことを覚えている。
内心の寂しさを隠し、応援するから精一杯頑張りなさいと娘に言った。
 
受験が終わり、3月に卒業式を迎えた。
娘の進学先は、東京に決まった。そして、いよいよ娘から離れるカウントダウンが始まってしまった。
入学にあたり、入学式のスーツやその他必要な物がたくさんあった。合格発表が終わってからは、ほぼ毎日、新生活の準備を娘と共にすることとなった。
娘との買い物は楽しい。受験の年は娘が忙しく、ほぼ一緒に買い物ができなかったこともあって、私はウキウキしていた。
けれど、こんな時間もあと僅かだと思うと、とたんに鉛を飲み込んだような気持ちになった。
顔で笑って、心で泣くというのを地で行っていた。娘の前では泣いてはならない。4月が迫ってきた3月末には、何故かベッドに入ると涙が出てきた。そして幼い頃の娘の姿が、走馬灯のように私の頭をグルグルとめぐるのだ。
 
いよいよ、娘が旅立つ日になった。今回は、1泊2日で私も新生活準備のために東京へ同行することにした。
2日間は、あっという間だった。準備のための買い物や、新居へのセッティング、福岡から送った荷物の整理など、時間は瞬く間に過ぎた。
 
そして訪れた、別れの時。
見送らなくていいよと言ったのに、娘は空港まで来ると言い張った。
私が保安検査場に進むとき、娘は一通の手紙を差し出した。
だめだ。これは泣いてしまうパターンだ。
「泣かないと決めていたのに、こんなことして」
冗談めかして言う私の声には、早くも涙がにじんでしまった。
「家に帰って、お父さんと一緒に読むね」
作り笑いで答えた私の目に、娘の涙が見えた。
 
福岡に戻ると、夫と一緒に娘の手紙を読んだ。
「私のことは、心配しないで。一人娘の私が家を出て、2人がいつまでも寂しがらないか、とても心配です。2人が楽しく、健康でいてくれることが一番うれしいです」
そんなことが、綴られていた。
娘は、しっかり自分の役回りを分かっていた。
その上で、きっと気落ちするであろう、私たちの心配をしていたのだ。
 
これは、おちおち沈んでばかりはいられない。
娘が、自力で新しい世界へ立ち向かおうとしているのだ。いつまでもこちらがメソメソして、娘の後ろ髪を引くわけにはいかない。
 
私のように、子育てが一段落して空虚な気持ちになることを、「空の巣症候群」というらしい。
ひな鳥が成長して、親の庇護から飛び立っていく。空っぽになった巣を見て、愛情を注いでいた対象がいなくなることに、言いようのない寂しさが募るのだ。
子供の成長は嬉しい反面、ある意味残酷でもある。
 
一体、世の中の親たちはどうやって、この寂しさを紛らわしているのだろう。
そう思いネットで検索してみると、「空の巣症候群」について書かれた記事を見つけた。そこには、3つの対処法が書かれていた。
一つは、新しい趣味や習い事を始めること。二つ目は、友人との交流、そして最後は、意外なことに子どもの思い出を振り返るというものだった。
 
趣味や習い事という点では、私は昨年の5月から、この天狼院書店のライティングゼミで学び始めた。ライティングは、自分の心の整理にも効能を発揮するから、きっと、こんな状態の私にとって必要な学びだと感じる。これはクリアだ。
 
2つめの対処法は、先日、大学時代の友人に連絡した。娘が巣立って寂しいと言ったら、娘を幼いときから可愛がってくれた友人たちは、すぐに集まってくれることになった。これもOKだ。
 
最後のものは、今からやってみようと思う。
娘の思い出を振り返ることは、きっと、また涙したり、寂しくなったりするだろう。
けれど、しっかりと娘との軌跡をたどることも、成長したことを喜べることに繋がるのかも知れない。
 
春は、出会いと別れの季節。
一つの役割と別れを告げたのなら、新しい何かと出会うチャンスなのだ。
娘が願うように、私も楽しく元気に生きていこう。
娘に依存せず、寂しさに押し潰されずにワクワクの種を探していこう。
これまで娘で満たされていたスペースに、代わりに別のものを招き入れることにしよう。
新たな人生の幕開けは、これから始まるのだ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 


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2021-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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