数学から求められた「読みやすさ」が僕を救ってくれた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:村人F(リーディング倶楽部)
「もっと読みやすい文章を書け」
2年前まで毎日のように、そう怒られていた。
議事録や設計書などの技術文章を書く仕事をしているが、書いても書いてもやり直しの嵐。そんな日々がずっと続いていた。
そのせいで精神が病んでしまい、1ヶ月ほど仕事を休んでしまった。
この経験があったからだろうか。仕事から復帰した僕は文章術の本を読み漁っていた。どうすればわかりやすい文章を書けるのか。その答えを探していた。
その中で最も心の中に残った本。それが「数学文章作法」だった。
本書は、数学で書く文章を読みやすくするための作法が書かれた本だ。
あの微分積分やら、意味不明な公式がいっぱい出てくる、わかりづらいの代表格とも言える分野。
そんな世界でわかりやすい文章を書く方法が記されているのである。
本の内容は、1文で表される。
「読者のことを考える」
ただこれだけだった。
本書ではこの言葉の因数分解が、1冊を通して行われている。
数式を書く前に、それ以外の日本語がわかりやすくなければいけない。
文章を書く時は、相手が決めた形式を守る必要がある。
具体例を考える時は、読者がどの程度の知識を有しているか意識すること。
このように、「読者のことを考える」というキーワードを通じて、読みやすい文章を書くための方法が展開されていた。
最初に読んだ時は、この言葉が腑に落ちていなかった。
しかし、天狼院書店でやっているライティング・ゼミなど、文章力を上げるためにした色々な過程の中で、意味がわかってきた。
それと同時に、僕の文章がわかりにくいと言われ続けていた訳も理解できた。
2年前の僕は、文章を書く時に自分のことしか考えていなかった。
「これだけ書いたんだから、意味を読み取ってくれ」
「もう疲れているんだから、これ以上書けるわけがない」
そんなことを考えながら書いていた。
今思うと、それで相手に納得してもらえるはずがなかった。
「読者のことを考える」
これが全然できていなかったからだ。
あの時、上司はなぜこの文章に怒っているのか考えていなかった。
どうして僕の言いたいことが伝わらなかったのか、分析していなかった。
ただ僕の基準でわかりやすい文章を書いていただけだった。
完全に独りよがりの作業をしていた。
そんなことをしていたら、向こうが怒るのも当然だった。
そのことに気付いた僕は、文章で怒られることが少なくなった。
継続しているライティング・ゼミでも、「読みやすい」と褒められるようになった。
この効果の源泉にあるのは、「数学作文作法」が示す「読者のことを考える」という言葉だ。これによって、僕は救われた。
それと同時に、数学に対する印象も変わっていった。
なぜ数学がわかりにくいと言われているか。その理由も「読者のことを考える」ことができていなかったからではないか。そういう思いが生まれたのである。
これは大学時代に塾でアルバイトをしていた経験から生まれたのかもしれない。
その塾では、数学の苦手な生徒がいた。
彼らが口を揃えて言うことは、授業に全くついていけないということだった。
先生からしてみれば、「勉強をサボっているからだ」という思いもあるだろう。
しかし、実際に塾で生徒を見てみると、決してサボっているわけではなかった。
ある生徒は毎日10時間くらい勉強していたのに、数学が全然できなかった。そして、前の塾の先生に「お前は数学の才能がない」とまで言われたそうだ。
こういう話を聞くと、数学についていけない生徒が多いのは、先生に「読者のことを考える」という意識が足りていないからではないかと思える。
読者、つまり生徒のことをちゃんと見てあげれば、どこで悩んでいるかがわかるはずだ。
実際に僕もしっかり見て教えてあげることで、苦手意識を払拭させることができた。
こういう姿勢が、先生に必要なんだと思った。
しかし、ここまで本書が示す「読者のことを考える」という言葉が腑に落ちたのは、数学の世界で読みやすさを考え抜いたからなのだろう。
数学は、厳密な論理をひたすらに求める学問だ。
そのため再現性が求められるし、ささいな矛盾も許されない。
この世界にいる著者が、「読みやすい文章」という抽象的な問題に取り組んだからこそ、数学界だけでなく全てに適用できる作法を確立できたのだろう。
これこそが、数学の面白いところなのだと思った。
本書の技術は、数学をよく使う理系の文章だけでなく、あらゆる分野で応用できるものになっている。
僕と同じように、「読みやすさ」に悩んでいる人は、本書をぜひ読んで欲しい。
読者のことを考え抜いて書かれた作文作法は、あなたのことも一生懸命考えている。だから、あなたの悩みに対する答えも、やさしく教えてくれることだろう。
本記事で紹介した作品
タイトル:数学文章作法 基礎編
著者:結城 浩
出版社:筑摩書房
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325
■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984