ハゲを治した話
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記事：でしょうか（ライティング・ゼミ日曜コース）
ある日、妻がもじもじしながら言いました。
「あなた、ちょっと言いづらい事があるの」
私の妻はいつも、物事をハッキリいうタイプです。妻がもじもじしながら話す時は大概良くない時です。今度はどんな事を言い出すんだろう。そんなビクビクしている私に、妻が言った事
「言いづらいけど、ハゲてきたよね」
今年51歳になりますが、自分でいうのもなんですが40歳に見られる若作りです。髪の毛もふさふさで白髪もなく、1か月でぼうぼうになる。それが私の自慢でしたし自信の根幹でした。そんな私に永遠にこないと思っていたハゲがある日突然やってまいりました。
私だけは禿ない。大変失礼な話ですが、電車の中で薄毛の人を見るたびにあれは他人事だと思っていました。（全国で薄毛で悩んでいる方、すみません。今は大変反省しています）
そして妻が言った事。
「私ハゲはいやだから、今は良い薬とかあるらしいから病院いってね」
え、ハゲでも愛してくれるのではないのですか。愛が薄毛脱毛ごときで失われるのですか。
50歳にして髪の毛だけでなく妻も失う訳にはいかない。自分自身の見た目、若作りからくる自信を失う訳にはいかない。そんな私がハゲ克服のために立てた作戦は２つです。
周りに揶揄されない様に先に禿てきたと伝えまくる。
専門の病院に行って薬で治すか、治療法を探す。
とにかく私が一番恐れたのは、陰であの人、髪の毛薄くなってきたよね。って言われる事でした。それだけは自分のプライドが許さなかったのです。（すみません。人間が小さくて）
とにかく次の日から会社の同僚、部下、友人に薄毛になった事を伝えまくりました。
みんな優しいので、「禿てないよ」とか、「気にしすぎ」とか言ってくれますが、みんな私の頭をじっとみています。これが私の不安を加速させます。
そして、最も大事な治療です。薄毛、脱毛はある程度治療方法が確立されています。AGA専門病院なんていうおしゃれな名前がついた病院があります。AGAは男性型脱毛症を指し、医学的見地から治療を行ってもらえます。
AGA専門病院の予約がとれ、勇気を振り絞って病院を訪問しました。おしゃれで清潔感溢れる待合室では、多くの患者さんが座っています。もっと人目に触れないような待合かと思いましたが、思いのほか目があって気まずいです。気になる方はご注意ください。
ついに私の番がきて、診察室に呼ばれます。先生は若いイケメンでふさふさ。丁寧に髪の毛が生えなくなる仕組みを説明してくれます。薄毛、脱毛はAGAでは病気とされており、治療が可能。進行の程度や種類に併せて9分類されており男性型脱毛症の程度が評価されるそうです。 細いスコープカメラで頭皮の状況がテレビにうつしだされ、私の地肌がクローズアップされます。これだけでなんだか興奮します。結果、私は軽度なAGAだそうです。つまりはハゲと認定された訳です。
診察が終わり薬を処方されます。治療薬で有名なのはミノキシジルや、フィナステリドというもので、この薬が保険適用外の為、べらぼうに高いです。毎月数万円かかる算段です。そして副作用があるケースもあり、この副作用を聞くと治療をやめる方も多いとの事です。でも治る可能性があると聞いて、薬を処方してもらう事にしました。目の前には自分のふさふさの未来の姿しか映し出されていません。
今までにないほど、毎日真面目にAGA治療薬を飲みました。薬を飲み始めて1週間後、事件が起こります。
毛が生えてきた！
であれば良かったんですが、そんな急に生えてきません。
夜中に生まれて初めての動悸、心臓のどきどき音にびっくりして目を覚ましたのです。AGA治療薬の副作用に稀に動悸と書いてあり、治療院に電話して飲み続けていいのか確認しました。 そうするとあのイケメンふさふさ先生が、
「その薬ではめったにその症状は出ないので、他に原因があるのではないですか」
とおっしゃいました。
かかりつけ医に行ってみました。結論から申しますと、私とてつもない高血圧でやばい状況だったそうです。それも不眠からくる高血圧だったのです。当時仕事がハードで神経が高ぶっており、夜中に5回くらい目が覚めており極度の睡眠不足。かかりつけ医の先生からはこのままだと高血圧で大変な事になるか、精神疾患でおかしくなるといわれました。改善の為、よく寝る事、歩く事、クヨクヨしない事を治療の根幹とされました。AGA治療薬も飲むのをやめ、高血圧の治療に専念しました。
結果、高血圧が収まり、抜け毛が止まり、髪の毛にも張が戻り、新しい毛も生えてきて薄毛部分にも毛が生えてきました。数万円の薬代も支払わずにすみました。薄毛や脱毛の原因はもちろん色々ですが、私の場合は不眠による高血圧だったのだと思います。また、あとで知りましたが「血余」といって血行を良くして毛細血管を若返らせるのが、抜け毛予防に最適だそうで、良く寝て歩く事は最も効果的なんだそうです。
ハゲは悪夢でしたが、今思い起こすと、ハゲは神様が与えてくれた啓示のようなものだと思えるようになりました。
たかが毛が抜けたくらいで自信を失う自分の弱さが見えたり、根本の健康に大きな問題がある事に気が付く事ができたりと、髪の毛を失っていなければ気づけない事が沢山ありました。これって神様が危険信号を送ってくれている様なもので、治療を通して自分の「心と体の本当の問題」に気が付き、見直す事ができたように思えます。まさに神の気（かみのけ）です。
もし、今、薄毛などに悩んでいらっしゃる方がいて、この文章を読んでくださっているならば、是非薄毛治療をする事だけでなく、御自身の心と体のケアを優先していただければと思います。そして、その結果として薄毛や脱毛が改善する事を心から願っています。
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