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日常に献血を添えてみませんか


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記事:雁屋優(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
これは、献血に行けなくなった、血を見るのが大好きな献血マニア(いや、献血狂い?)が送る、献血をすすめる文章である。200ml献血が可能になった16歳の頃から服薬の関係で献血ができなくなるまで数年、私は献血ルームに通いつめた。
 
血を抜かれて何が楽しいのかとお思いの方もいるだろう。私は怪我をして自分の血を見るのは嫌だが、血液検査や献血などで血を抜かれて、自分の血を見るのは大好きなのだ。この時点で、もう意味がわからないだろうが、最初の献血の動機の大半を「自分の血が抜かれていくところを見たい」が占めていた。
 
最初の献血の動機の残るわずかな部分は、中学生の頃に献血についての文章を書いたことによる、献血への興味だった。それから、献血に行くと、いろいろなものがもらえるという、父からの情報もあって、楽しみにしていた。
 
私は、一瞬で、献血が大好きになった。今は新型コロナウイルス感染拡大防止のために漫画を撤去しているところもあるようだが、あの頃は、漫画も読み放題、ドリンクもお菓子もいただけた。街を歩いていて、「ちょっと休憩したいけど、カフェに入るのはお金がかかるしなあ」と思ったときには、迷わず献血に行っていた。ゆったりと漫画を読みながら、ドリンクやお菓子とともに休憩ができて、お金も払わなくてよい。おまけに手土産にちょっとしたものをいただける。
 
その上、血を眺めることもできるし後日血液検査の結果が送られてきて健康管理の一環にもなる、と私にとってはメリットしかなかった。今の技術をもってしても、作ることのできない血液を自分が作り、それを人に分け与えて、結果をして誰かを救っている。命がめぐるようで、そのことを想像するのも、楽しかった。
 
そんなわけで高校生の頃から、献血大好きだったわけだが、大学生になって、献血に新たな価値を見出した。それは、ボランティアとしての献血である。最初から献血はボランティアなのだけど、大学生になって献血をボランティアの側面で捉えることができるようになった。
 
大学の就職ガイダンスやキャリアセンターは、「ボランティアをしなさい」「海外留学をしなさい」などと、就職活動において「使える」活動をすることを勧めてきた。そこで示されるボランティアは、「子どもに勉強を教える」だとか、「子どもとキャンプに行きましょう」だとか、「東日本大震災の被災地にボランティアに行きましょう」といったものばかりだった。正直に言えば、私は辟易していた。
 
そういったボランティアそのものが悪いのではない。それぞれに意義があることだ。だけど、就職活動に有利になる材料として示されるボランティアが、どれも高いコミュニケーション能力や体力を必要とされるものであることに、ひどく傷ついた。高いコミュニケーション能力も、体力も私にはない。
 
被災地にボランティアに行ったところで、私はきっと役に立たなかっただろう。子どもに勉強を教えるのも、きっと向いていない。就職活動において求められているのは、そういったボランティアなのだと思うと、苦しくなった。人は、高いコミュニケーション能力や体力を持っていなければならないのか。
 
そんなときに、ふと気づいた。献血も、ボランティアであるということに。献血は、いつも私に優しかった。血を抜かれることへの恐怖を軽減すべく気遣ってくれて、血を抜かれている最中もその後もリラックスできるように工夫してくれた。涙が出そうになった。
 
「就活でうけるようなボランティアは絶対にできない自分」の将来に絶望していたけれど、献血カードを取り出しては、元気をもらった。献血だって、ボランティアなのだ。その行為はめぐりめぐって、誰かを救っている。そのことは、揺るがしようのない事実だ。
 
敢えて今まで、「人の役に立つから献血をしよう」とは言わずにきたのだが、それは、高尚な目的をもたずとも、献血は気軽にしていいものだとイメージしてほしかったからである。学生時代の私の献血の動機は、どう頑張っても「人の役に立ちたい」がメインだとは言えない。でも、いいのだ。
 
どんな動機で献血されようと輸血される人には関係ない。血を見たくて献血した私の血も、献血を通して誰かを救いたいと思って献血した人の血も、血液としての働きは変わらない。だから、カフェの代わりに献血ルームに行ってもいいし、図書館の代わりにしてもいい。
 
人の役に立つために献血をしたことなどほぼない私だが、献血が人の役に立つことは知っていた。当時、私は社会に対して何の生産性も生み出せておらず、アルバイトがうまくいかない学生だったので、「自分がカフェ代わりに献血することで、救われる命がある」事実は、私に自信をくれた。
 
献血は、ボランティアをする側のかけるコストが小さいのも、魅力の一つだと思う。私にとって血を抜かれることはコストではないのもあるだろうが、野山を走り回るようなボランティアよりは疲れないことには同意が得られるだろう。くたくたになって、疲弊しなくても、誰かの役に立てるのだ。
 
献血の要件を満たしている人は今こそ献血に行ってみてほしい。献血でもらえるものは、本当にたくさんある。知的好奇心を満たせるという私のような人もいるだろうし、健康管理のための人もいるだろう。人の役に立ちたいけど、できることがわからない人にも、献血はいい。献血は、きっとあなたに何かをくれる。
 
いつか元気になったら、私も自分の血液が遠心分離されているところを眺めに、成分献血をしに行く。
 
 
 
 
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2021-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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