旅行で学ぶ本質
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記事:吉田みのり(ライティング・ゼミ集中コース)
私が海外に初めて行ったのは、大学3年生の夏休み。
友人と3人でロサンゼルスに行った。
アルバイト先の先輩から、「アメリカの壮大さを目の当たりにしたら、人生観変わるよ!」と言われ、今まで生きてきた中でのいちばんのイベントだ! とわくわくしていた。
大学1年の時から仲がよかった友人たちと海外旅行を計画し、行き先をロサンゼルスに決めた。
学生向けの、飛行機とホテルがセットの格安旅行パックを探して申し込んだ。
5泊7日のパックで、セットになっている航空会社が数年前に事故があった会社で不安になったが、旅行会社の人に「そういう不安をよく言われるのですが、サービスもいいですし問題ないと思いますよ」と言われたので、3人で決めた。
しかし申し込んでから、1人の友人が、「飛行機落ちないかなぁ、大丈夫かなぁ」と旅行の相談をする度に言っていた。
いやいや、そんなこと言われたら私たちも不安になるよ、大丈夫だよ、などその都度2人でなだめていた。
2人は海外に行ったことがあったが、私は初めてだったため、とにかく楽しみだった。
その当時はまだインターネットも今ほど普及していなかったので、3人で別々のガイドブックを買って、熱心に計画を立てた。
友人たちと頻繁に打ち合わせをすることで、どんどん気持ちが高まった。
ただ飛行機だけが不安で、それは友人の言う「落ちないかなぁ」ではなく、それまでに1回しか飛行機に乗ったことがなく、そのとき耳が痛くなって困った思い出があったため、耳が痛くならない耳栓というのを購入して備えておいた。
いよいよ、旅行当日。いよいよ出発!!
飛行機に乗り込む前にも友人は「落ちないかなぁ」と言った。
さすがに私ももう1人の友人も苛々し、飛行機の中ではあまり話さなかった。
無事ロサンゼルスに到着した。
“落ちないかなぁ”の友人は安心したようだった。
3人とも長旅で疲れており、私も耳が痛くならない耳栓はちっとも効果がなく、エコノミーの狭さにぐったりしていた。
私は身長が150cmなのだが、もっと大きい人がエコノミーに乗るなんて修行だな、とぼんやり考えていた。
ホテルと航空券のみのパックだったが、現地では空港からホテルまでのバスが付いており、添乗員さんもいた。
バスに結構揺られ、着いたのは人通りがあまりない、寂れた印象のホテルだった。
バスを降りると添乗員さんが、ホテルの入り口と反対側の道路を指差しながら、
「あの通りより向こうには行かないでくださいね、危険な地域ですから」
とさらっと言った。
少し衝撃は受けたが、安いパック旅行だし、ガイドブックなどにも危険な地域とか、身の安全のために注意することがたくさん書いてあったため、そりゃ、危ない地域もあるよな、だってアメリカだもん、と思った。
部屋は外観よりはきれいで、それなりに快適そうだった。
私ともう1人の友人はすぐに荷物の片付けを始めたが、“落ちないかなぁ”の友人は窓の外を見ている。
そして急に、「これ、ピストルの弾の跡!!」と言い出した。
窓に確かに何かが当たったような、弾が当たったと言われればそんな感じの傷があった。
いやいや、ピストルの弾だったら突き抜けるでしょう、と2人で言ったが、まるで聞いていない。
そして、「あっちの通りは危ないんでしょ! じゃあ、すぐそこの安全て言われた方の通りだって危ない可能性があるじゃない! 怖くて外に出られない! 私もうホテルから出ない! ずっとホテルにいる!」と言い出した。
私ともう1人の友人はあっけにとられて、まくし立てているのを聞いていた。
しかし慌てて2人で、いやいや、せっかく来たのに、気を付ければ大丈夫だよ、明日から計画通り観光しようよ、などとなだめ、そうだよねとその場は収まったが、私は内心苛々が止まらなかった。
アメリカなんて来ないで、安全な日本にいればよかったじゃない! どんだけ小心者なんだよ! と思わずにはいられなかった。
次の日から、計画していた観光地を回った。
“落ちないかなぁ”の友人も一緒に観光した。
ユニバーサルスタジオ、ディズニーランド、ドジャースタジアム(ちょうど野茂が活躍してた頃!)……、いろんな場所へ行った。
スケールの大きさに感動し、見るものすべてが新鮮で楽しかった。
食べものはどれも多すぎるし、やはり日本の方が断然おいしい、日本てすばらしい! と再認識した。
“落ちないかなぁ”の友人もびくびくしていることもあったが、楽しんでいた。
旅行中、「一緒にダンスしようよ!」と謎の黒人男性2人に追いかけられたことがあったが、「これからホテルへ戻る」と言ったら追いかけて来なくなり、怖い思いはそれくらいで済んで、無事に何事もなく帰る日になった。
帰りの飛行機、友人はもう「落ちないかなぁ」とは言わなかった。
今でも、「初めての海外旅行」「ロサンゼルス」のキーワードとセットになってまず思い出すのは、「落ちないかなぁ」とホテル銃弾事件(?)と友人が「ホテルから出ない!」と言い出したエピソードだ。
その後で、ユニバーサルスタジオとか、観光をした思い出が出てくる。
旅行で、普段一緒に過ごしていても見えないその人の本質が見えることはよくあることだと思うが、ここまで強烈にその人の内面に触れた経験は後にも先にもない。
アメリカに行って変わったのは、人生観ではなく、友人への認識だった。
でもそれは、あの旅行でその友人が嫌いになったということではなく、そのときは確かに苛々したけれど、今まで知らなかった内面を発見して内心ニヤニヤし(と言うと怒られそうだが)、人として弱いところを知ってさらに好きになった、ということだ。
その後も大学卒業まで仲がよく、卒業旅行のイタリアへも3人で一緒に行ったし、卒業後も交流は続いている。
友人たちも、旅行で私の今まで見えていなかった本質が見えたりしたのだろうか。
いつか、3人で洗いざらい話してみたら面白いのかもしれないが、喧嘩になる可能性も大いに否めない。
***
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